5. 教えてよ、三谷 (三谷視点)
石川先輩に励ましてもらって、
少し勇気が出てきた。
もうちょっと先に進みたい。
まずは連絡先。
長濱の連絡先を知りたい。
直近の目標はこれだ!!
朝の通勤電車の中で固く決心した。
今日も一番乗りで出勤。
支店を一通り綺麗にして、一息。
ふと気づいた。
支店の隅にある日めくりカレンダー。
めんどくさがって、誰もめくらないこのカレンダー。
今日は20日なのに、カレンダーは5日のまま。
日めくりカレンダーって大体こうなるよなー
いつの月の5日なんだろ・・・
このカレンダーには
毎日格言が書かれている。
せっかくだし、20日にめくっておくか。
20日の格言
「明日の自分は
今日の自分が決める」
心に突き刺さる。。。
今日こそは!
そう思った俺の横を
長濱が通り過ぎた。
「お・・・」
・・・あーーー
言えなかった・・・・
おはよう すらタイミングを逃すと言えない。
自分の意気地の無さを
朝から突きつけられた。
立ち尽くしていると、
女性社員に囲まれた。
長濱以外には
気軽に挨拶はもちろん笑顔を絶やさず話ができるし、
カッコいい俺の姿を維持していられる。
でも今日は。
明日の自分のために!
今日こそは!!
ーーーーーー
今日は大口の契約が取れるかどうかの大事な日。
恋愛だけでなく、仕事も。
というより、仕事は、
俺の良さをアピールするチャンスでもある。
忙しさMAXの繁忙期。
いつもよりもチームで連携をとる必要が多く発生するが、
長濱に迷惑と負担はかけたくない。
むしろ、事務のサポートがなくとも
ある程度こなせる営業である俺を認めてほしい。
デスクの書類をまとめて、
カバンに詰め込み、席を立つ。
最近、自分の中でここ一番の商談の日は、
会社を出る前に決まって
向かいの席の長濱の方を見る。
長濱がこちらを向いていない時限定だけど・・・(涙)
今日も長濱は仕事に集中していて、
パソコンに夢中。
可愛い・・・
真剣な表情。
ずっと見ていられる・・・
そう思いながら、商談へ向かった。
・・・ところが、
やばい!!
やばすぎる!!!
なんたる失敗( ゜д゜)
今年のデータは出来上がっているけど、
昨年のデータは用意してなかった(汗)
なくてもいけるか?!
いや、確実に今日の商談を成功されるには欠かせない。
で、でも長濱に依頼するのは・・・(悩)
俺に幻滅するだろうか・・・
いや、悩んでいてもしょうがない、
あと30分しかない、
仕事とプライベートは分けないと・・・
本末転倒!
えーーと・・・
ラフな文章にして・・・っと・・・
焦ってやることでもないんだけど的な文章・・・
かつ、断りやすい文章にして
最大限の配慮・・・。
《長濱さん
忙しいところごめん、
A商事に去年提案したときの書類をデータで
12:30までに俺に送ってくれないかな?
30分しかないけど、できそう??》
どうだ?これでどうだ???汗
返事来るかな、返事来ないかな・・・
来ないなら来ないで、
気にしないでメール、絶対送る!
長濱気にしそうだし;
あーーーーー
反応気になるーーーーー
あっ!返事きた!!!!!!!!
《三谷さん
承知しました。
長濱》
長濱ーーーーーぁ。
( ; ; )
ありがとう・・・
そして、、、
返事が来た・・・
感動・・・・
仕事だから当たり前だけど、
そこまで気が回らない三谷。
その後少しして、
また連絡が来た。
《三谷さん
データお送りします。
念のため、過去3年分も。
ご確認ください。
長濱》
長濱ーーーーーぁ。
( ; ; )
ありがとう・・・
そして、早い!!
そして、、、めっちゃ助かる!!!!
仕事ができる事務だと
長濱は社内での評判が高い。
納得の仕事の速さと内容。
どこをとっても最高 ♪( ´▽`)
早く顔見たいーーー
よしっ!!
切り替え、切り替え!!!
長濱のアシストをもらったんだ、
必ず成功させる。
意気込んで向かった。
ーーーーーーーーーー
商談成功。
長濱にこのことを伝えたい。
感謝の気持ちも。。。
契約締結の喜びを
もし、一緒に分かち合えたらなら。。。
そう思った時、携帯が鳴った。
「お疲れ様です。石川先輩、どうしました?」
「三谷、今日大事な商談だったから、
どうだったかなーーと思って^^」
「気にかけくださり、ありがとうございます!
成功しました、うまくいきました!
長濱が助けてくれて。
商談ギリギリに。
長濱の業務スピードと的確さはピカイチです^^」
喜びと長濱への気持ちの言葉が
とめどなく溢れる。
「そうか!おめでと!!やったな!!
長濱、噂通りだな。
・・・今日俺のチームもかなりピンチで、
俺も木村もどうしようってなってた状況で、
長濱が助けてくれて、なんとか乗り切ったんだよ。
本当に感謝だよ。
あ、そうだ、今度4人で飯でも行く?
誘っといてよ、長濱を!
じゃ、後で会社で!」
電話が切れた。
お、俺が誘う?!
よし、今日、今日こそは・・・
って決めてたし。
ちょうど、よかった!!うん。
顔を見て話すとうまく誘えるかわかんないから、
メールにしてみよう!
さっきもメールしたし。
うまくいったし。
こういう時って、
どんな文書がベストなのかなぁ・・・
ネットで調べてみよう。
『ありがとう!』
『今後ご飯行こうよ^^』
『またね♡』
・・・などなど
いろんなのがあるなーーー。
とりあえず、全部コピペしてメールに貼り付けて、
これは無いわーってやつを消去法で消していけばいいか!
どーーーれーーーを 消そうかなーーーーーぁ・・・
うぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!
何がどうなったのか、わからなかった。
《長濱さん
ありがとう♡(ハート)
三谷》
これ、
これ送っちゃったよーーー涙
なんだよハートって・・・
こわいわーーーー
どんな顔して会社に戻るんだよ・・・
長濱ーーーーー
返事くれーーー
『(笑)』って感じで返事くれーーーー
・・・
いくら待っても
長濱からのメールは来なかった。
これを世間では、
既読スルー と呼ぶんだろう。。。(T . T)
———
夕方
支店に戻ってきた俺は、
長濱を探す。
席にいる。
長濱の顔をチラッと見てみる
・・・無・・・
↑ この言葉がとてもピッタリな顔。
よし!色々考えたってしょうがない。
気を強く持って、三谷はメイに話しかけた。
「今日、ありがとね。
助かった。。。
…ほんとに。
あの、
あのさー、
もし、よければだけど、
明日の夜、ご飯でも、どうかな?」
「あー…そうですねー…
明日なら、大丈夫ですよ」
とメイからOKをもらった。
やったーーーーー
俺はやったぞーーーーー
長濱の顔が少し赤い。
期待をしてしまってもいいのだろうか。
ハートのメールの後のこの流れに。
知りたい。長濱のこと。
——————
次の日の夜
長濱が遅くなるとのことで、
先に石川先輩と木村さんと一緒に
会社近くの居酒屋へ向かうことになった。
席に着くと
唐突に
木村さん、
いや、いとこの恵としての
思いがけない一言。
「ねぇ、健斗、長濱先輩のこと、
好きでしょ?!」
目を丸くしながらも
どんどん耳が赤くなってきているのが
自分でもわかっていた。
恵からの問いに対する答えを
頭の中でぐるぐる考えていると、
「木村、やめとけやめとけ、野暮なこと聞くなって!
好きに決まってるだろ(笑)」
と石川先輩。
余計に動揺してしまう俺。
恵と石川先輩が顔を合わせてニヤニヤしている様子が
なんだか癪に障る。
・・・でもどこかくすぐったい。
「はいはい、注文しよ!
長濱も先に注文してていいって言ってたし」
話を切り替えた。
注文し終わったころ、
長濱がきた。。。
めっちゃ可愛い…
おれ、頑張ってさそって、
ほんとよかったぁーーー
昨日の俺、グッジョブ!