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7. 好きだった婚約者と、三谷


彼の方から

会話をすすめてくれた。


「久しぶり。

 元気にしてた?」


変わらない。

困った顔をしながら 笑う顔。

懐かしくて

なんだか胸が苦しい。


「うん。

 アキラは?」


「まぁまぁ…かな」



そう話すと、

会話は続かず、

じゃぁ…とお互い片手をあげて

それぞれの方へと歩き出した。




少し歩いて、


私は振り向いた。


アキラが振り返って、こっちを見てくれていないか、

と、期待をこめて。



でも、彼は振り向いてはなかった。


少しの間、彼の後ろ姿を見つめてから、

前を向き直し、再び駅の方へ歩き出した。



それでも、我慢できずに、

歩いてはまた振り返った。



…ドラマのようにはいかないかぁ。

そりゃそうだ…


と、思っていた以上に残念に思う自分がいた。



三谷のことといい、

今日は重なるなぁ・・・


重い気持ちを抱えながら

駅に着いた。



——————



あれから数日。


三谷への気持ちを吹っ切ろうとする心の隙間に

アキラがちらつき、

アキラのことを思い出す時間が増えた。



1年前

アキラからのプロポーズを涙ながらに喜んだあの日。

婚約指輪のサイズが少し大きくて、二人で笑った。


アキラが私の実家に挨拶にきてくれたときは、

お父さんもお母さんも大喜び。

こんな素敵な息子ができるのかと

嬉しそうにいつもよりお酒を飲むお父さんの姿が忘れられない。


アキラのご両親に挨拶に行く時は

手土産をどこのお店のにするか

加藤先輩と相談して決めたんだっけ…


それから、結婚式場を決めて、

会社の人や友達に招待状を送って…


そのあと、、、


アキラの浮気が発覚して。


アキラはもちろん謝ってくれたし、

アキラのご両親もアキラと一緒に

うちの実家にまできて謝罪してくれた。


式まであと一カ月と迫っていたこともあってか、

一度の浮気なら許してしまった方が…と

お父さんやお母さんも言ってたけど、

わたしはどうしても許せなかった。

怒りもあった。



結婚を取りやめてから

いろんなところに謝ってまわって、

わたしだけでなく、

お父さんやお母さんにも迷惑かけて。



あのとき、アキラを許せばよかったのかな・・・と

悔やむこともあった。


いまはもう彼への怒りはない。

むしろ彼を責めたてすぎたことに

申し訳なささえある。


あの時結婚していたら、

今頃、わたしはどんな生活を送っていたのかな・・・。




そんなことを毎日のように考えていた。



ふと携帯を見ると、アキラから連絡がきていた。


《会って話したい》


短い文章。


彼らしい。


《いつにする?》


悩むことなく

すぐに返事をした。



あいたかった。

ずっと。

あれから、ずっと。

あいたいという気持ちの裏に

自分のどんな想いが隠れているのかも知りたかったから。





しかし、、、

物思いにふけったり、

過去を振り返ったり、

それだけで1日は終わらないのが 大人!!

( ;∀;)



メイは切り替えて仕事をこなしていた。



そして仕事中、

席の配置からどうしても三谷が視界に入る。


今日もかっこいい。揺るがない事実。

吹っ切る吹っ切らないとか関係ない!と答えを出した。


そう、気になる気持ち=好き とい結論づけるのが

早すぎたのだ。


つまり、 気になる気持ち というのは、

アイドルやお店、テレビ番組などなど・・・対象は様々。


三谷への気になる気持ちは

イケメンへの敬意のようなもので、決して好きという部類ではなかった。

そうだ!そう思う!


だから私は 「観賞用イケメン」と位置付けることにした。


鑑賞しながら仕事ができる、

なんて最高なんだろ!!!( ´∀`)



そう心で結論づけたものの、

あの居酒屋の一件以来、

三谷とは会話をしていない…。

仕事の話すらメールのみ。



もとにもどるだけ。


でも少し、ほんの少し、

毎日をつまらなく思う。

そして、

ふとした時、

孤独を感じやすくなる。




————


アキラから連絡が来た。

明後日、会うことになった。

いつものカフェで、と。


「いつもの・・・カフェで・・・か」



『いつもの』が気になった。


わたしにとっては『あのときの』が相応しいほどに

過去になっていたが、

アキラにとっては、いまだ『いつもの』なんだ・・・



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