7.失せもの探し屋1
かつて魔法は人々の生活を支えており、強い魔法使いは攻城兵器よりも役に立ったという。
けれど、それは昔の事。
今では少々の占いやちょっとした呪いの様なものしかできない者がほとんどだ。
ケイもそういうほとんど何もできない魔法使いだった。
「いや、今から探すって、まずは優先順位的に、他国の介入の線重点的に探って後顧の憂いを断つとかからってものじゃないんですか?
それこそ、例えば妊娠していたとかであれば国王陛下のお子様を人質にされてしまう」
宰相の側近が出した命令書にかかれた文字をみてケイはそう言った。
王族を奪われたかもしれない現状に、もう一月近くなるというのに本格的な調査を開始するのでまずは現場と思われる側妃様の部屋を確認して欲しいということが書かれている。
「妊娠している可能性はありません」
ケイは耳をふさぎたくなった。
王宮の事情なんて聞かされたら逃げられなくなるじゃないか。
「あなたは失せもの探しのプロではないですか」
「プロじゃないですよ。本業は別にあります。今日日魔法使いで食ってるものなんてめったにいやしませんよ」
ケイは答えた。
「魔法なんて不確かなものに頼らないとならない位情報が無いんですか?」
王宮内での出来事だ。
政治の云々で広く知らされていないだけで調べ上げられていると思っていたケイは聞いた。
「あの、側妃様ですから。」
あの。とついてしまう。
妊娠していないと即座に応えられてしまう。
ケイは側妃様とまともな接点はないけれど、少しばかり、いや、かなり側妃様という女性が哀れな人だと思った。
誰にも顧みられない女性。
何においても彼女を探し出そうという誰かの一番になることはない存在。
それがとても哀れに思えた。
だから、という訳ではないけれど、失せもの探しの依頼をケイは受けることにした。