4.実家の家令によると
ご主人様にお取次ぎはできません。
家令はちらりと側妃の調査に来たという男を見た。
政治力の無い家門に属す男だった。
予想していたことだが、王宮は行方不明となった側妃の行方を本気で探す気はないと見える。
この家の当主も後継ぎである子息も捜索に興味は無いようだった。
側妃が本当にいようがいまいがこの家門が王家に影響力がありさえすればそれでいい。
だから陛下直属、せめて宰相直属の部下が聞き取りに来なければ繋がなくていいと家令は言われていた。
勿論側妃はこの家には帰って来ていない。
どこに行ったのか見当もつかない。
「側妃様から連絡などはありましたでしょうか?」
「当家ではそのようなものは受け取っておりません」
家令は姿勢を正してただの業務の様に言った。
そこに側妃への心配の気持ちはまるで無いように見えた。
実際この家令にとって仕える相手ではない側妃は気にしなくていい存在としてインプットされていた。
「念のための確認ですが側妃様がこちらにお越しになったことは」
「ご成婚以来一度もございません」
「行先や仲のいいご婦人やご令嬢については」
聞く時に男性について聞くのは憚られた。
一応側妃なのだ。
仲のいい男性はいますかというのはあまりにも浮気を疑っている様だった。
「当家に側妃様宛の手紙が来ることは一切ございません。
あの方はご友人が少なかったですから」
家令は言った。
それから侯爵当主と面会したい場合は王家からの正式な書状を用意するようにと調査官に告げた。
「当家としても側妃様の行方は心配しております。
けれど、王宮の記録では側妃様は外には出ていないのでしょ?
それであればまだ王宮内にいるのではないでしょうか」
家令に言われ、調査官は何も言えなかった。
彼には何の権限もない。屋敷内を見せてもらう事も、側妃の結婚前の部屋が残っているのならそこを見ることも、頼んでこの家令と当主が許可をすれば見せてもらえる可能性があるがこの言い方では難しいだろう。
「何か思い出した事などあればご連絡ください。
また、側妃様がこちらへご連絡、ご訪問があった場合、なるべく早くお伝えください」
「ええ、それは勿論。
当家は皆、側妃様のことを心配しておられますから」
家令は言った。
「最後に一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか」
「はい」
「側妃様に輿入れ以降ドレスをお贈りしたことは」
家令が少し考え込む。
部下と思しき若年の男性に何事か耳打ちをする。
「私の記憶にはありませんが、間違いがあってはいけません。
確認させますので少々お待ちください」
若年の男はすぐに戻って来てぼそぼそと何かを報告した。
「当家よりドレスや宝飾品について贈ったという記録はありません。
妃というものはやはり寵愛の証として陛下より賜った装飾を身に着けるのが一番の幸せですから」
ありがとうございましたと調査官は言った。
頭を下げて側妃様のご実家の所有されるタウンハウスを出た。
側妃様はご成婚後陛下からもご実家からもドレスを贈られていなかった。
一体彼女はどこからドレスを手に入れていたのだろう。
調査官は言い知れぬ不安が脳裏をよぎった。