2.侍女の話
私は知りませんよ。
そもそも側妃様専属としてご実家からつけられた侍女ではないんですよ、私達は。
全員王宮で登用された者たちです。
ですから、側妃様のご事情も噂程度にしか知りません。
勿論公式な行事に参加するための身支度等は手伝いますよ。
高貴な方たちのドレスにはボタン等ありませんから。
体に合わせたドレスは最後、侍女の手で縫い留めて仕上げます。
一人で脱ぎ着さえできないのですから。
それ以外の仕事は一日二度ほど決まった時間に側妃様の宮の執務室に書類を取りに行って宰相府に運ぶことだけです。
人の出入りですか?
さあ。基本的に私達以外にはメイドが食事や身の回りの洗濯を行っていた位ではないでしょうか?
商人? 必要な物はどう購入していたかですか?
さあ。それこそ分かりませんよ。
何故そんなことを知りたいですか?
ああ、そういう事ですか。
商人が連れ去ったのか。それともあの気味悪い部屋を作れる何かを側妃様が購入されていたのか。
商人が出入りしているところは一度も見たことはありません。
購入希望のリストの様なものも受け取ったことは恐らくありません。
もしかしたら宰相府に持っていくための書類に混ざっていたのかもしれませんが、そのようなものを見たことは少なくとも私にはありません。
必要な物は実家から送られてきていたのではないでしょうか?
ただ、その整理整頓は少なくとも私達は承っておりませんでした。
実家への手紙ですか?
さあ。もしかしたらメイドに頼んでいたのではないですか?
王宮から、貴族家への手紙をメイドに預けるはずがない。
それはそうですね。
え? 私達が本来しなければいけない仕事ですか?
だから最初に言ったではありませんか。
私達は側妃様の専属の侍女ではありません。
側妃様に関する仕事はそれだけでしたが、王宮に来客があった際の対応や、その他王妃様関連のお使い事など仕事は沢山ありました。
決して手を抜いていたという訳ではありません。
私達に任された仕事がそれだけだったという事です。
それに本来であれば輿入れの際、実家から何人もの侍女が付き従うのですよ。
王妃様の時の様に。
その侍女たちが本来になうべき仕事を何故私たちが命令もされていないのにすることができますでしょうか?
まずはご実家に連絡をお取りになって、出入りの人物について確認するべきではありませんか?
本当に私たちは何も知りませんし、知るほど側妃様と関わってはいないのです。