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後日談1:緩慢な衰退と妖精の悪戯

※元男爵令嬢の正妃視点


* * *



この国から人が消えてしまっても、大したことはないと思っていたの。

だって、あの時、努力をしていなくてこれからも能力が無い人という条件を付けていたから。


赤ちゃんたちがいなくなったのには驚いたけれど、すべての赤ちゃんが消えてしまった訳ではない。

ということは、才能がある子たちはちゃんと残ったという事。


事実私たちの子は誰一人いなくなってはいない。


王宮も王都も混乱はしていたけれど、能力の高い人、努力をしている人たちは残っている筈なの。

だから、私も陛下も何も心配はしていなかった。


側妃がいなくなったのもなんとかなる。

仕事というものは必ず代わりがいる、そういってお父様が使用人が風邪をひいた時に休ませていた。

彼女の仕事も彼女しかできないものではない。

そうでなければ誰かが死んでしまったらその国はそこで終わってしまうって事でしょ。


仕事が滞っていると報告してきた文官たちにはそう言った。

文官たちは青い顔をしていたけれど、陛下がしかりつけたらすごすごと下がったわ。


それに悪い事ばかりじゃない。

病院からは病人が大量に消えたり、スラムからも沢山の人が消えていたの。

リハビリをサボって病気を長引かせていた怠惰な人たちが消えたのねと思った。


そういう部分にかける国費が減るし、炊き出しもいらない。

むしろまじめな人は助かると思ったの。


だけど、そうじゃなかった。


なんでそうなったのかは分からない。

けれど、最初に気が付いたのは王都への物流が偏ってしまったこと。

入って来る筈の物品は来ず。来たとしても品質が悪い物ばかり。


王都にいる人間が皆不満に思ったわ。

勿論、私も。


パーティをするにしても素敵なドレスをきてかわいらしいスイーツが食べられないなんて意味がないじゃない。


それ以外にも倉庫にあるべきものが無く、王宮で困ることも増えた。


最初はそれだけだった。


不便でイライラしてしまうことがあったけれど、それだけだった。


けれど、次の徴税の時期になって大きな問題が起きた。

貴族家のいくつかが破綻していた。


爵位は返納されたけれど、取るべき税が取れなかった。


国にとって大きな打撃です。

宰相はそう言ったけれど、そういう時のために普段蓄えておくべきでしょう?


やっていないのであれば蓄えをしていなかった側妃が悪いのよ。


私がそう言うと、最初は苦々しい顔をした後、「その蓄えを使ってしまったら次に何かあった時にはお終いなんですよ」と言った。


「それを何とかするのがあなたの仕事ではなくて?」


私は宰相にそう言った。

宰相は何も答えなかった。


その代わりにご報告がありますと言って、とある事案についてまとめたものを渡された。


そこにかかれていたのは妖精と私たちの価値観の違いについてだった。

今までの事例から、一見話が通じているように見えて、何も通じていない可能性が極めて高いという。


『願いを聞いてあげよう』と妖精に持ち掛けられ願いを言ってもまるで違う事をされたという話は御伽噺の時代からよくある。


結論として、聖女が消えたことを含め、その場で言った言葉が人間で通じる意味として妖精がとらえているかは可能性としては低い。



神殿も協力した報告書にはそう書かれていた。


実際、最近侍女たちがよく仕事をさぼっているのが私も気になっていた。


「何よそれ!!」


私が言った横で「どうするんだ!!」と陛下が怒鳴った。


その報告書が正しいと言っているかのように突然王宮に牛があらわれたり、ドレスがあり得ない緑色のネバネバしたものにひたされていたり。

何の意味があるのかさえ分からないことが沢山おきた。


そして、誰が言い出したのか分からないけれど呪われている王宮、王都と言われるようになってしまっていた。


遷都をと言いたいけれど、税が足りない。


こんなの望んでいた王妃としての生活じゃない!!


夫である陛下との喧嘩も増えた。


楽しみにしていたガーデンパーティもほとんど開けていないし、招待状を出しても皆断られてしまう。


そして宰相が他国に亡命して、神殿が私たちの国からの撤退を宣言した。


こんな事じゃ、没落していく一方じゃない。

神殿が無い国なんて、他の国から馬鹿にされてしまうわ。


勿論私たちは、神殿に国外退去をしないように命令したわ。


けれど、それが逆に各国に点在している他の神殿の怒りを買ってしまった。


国の規模はどんどん小さくなって、新しいもの、素敵な物をみる日が減っていく。

まるで毎日暮らすことで精いっぱいの国に転落していってしまう。


陛下も一気に年を取られたような疲れた顔をしている。


なんで、なんでよ。

こんなはずじゃなかったのに!


周りから呪われてしまった国として指を指されて、惨めに暮らすしかないなんて。

あの側妃が消えてしまったことが始まりだった。


あいつだけは絶対に許さない。

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