表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

14.これまでの勝負について2

センシティブな表現がございますご注意ください。

「小賢しい上に、かわいげもない令嬢だ」

「勉強しかできない」


学園で彼女は孤立していた。

もう、幼いころからの人間関係は出来上がっていて彼女の場所は無かった。

その上、王子は寵愛すべき人を見つけた。


その女性は見た目がかわいらしくそして愛嬌もあった。

王子は彼女を真実の愛として守ることに決めた。


そして、彼女に対して大勢の人の前で婚約破棄を宣言した。


誰も彼女を守ってくれる人はいなかった。

彼女の生家は彼女に対して「婚約者におさまったのに、心ひとつつなぎとめておけないとは何事だ」と憤慨した。

彼女が着飾るためのお金すらこれっぽっちも出さなかったのに。

家の汚点だ、クズだとののしられた。


けれど――


王子が寵愛した人は男爵令嬢だった。

正妃にするのは彼女以外ありえないと思っていたし、彼女はとても美しい。

けれど執務が厳しいだろうと判断された。


それに、男爵令嬢自身が「王子と王子妃となっても普通の温かい家庭を作っていきたいの」と王子に強請った。

自分と伴侶がきちんと子供と向き合う時間を作り、夫婦の時間も大切にしたい。

そう言った男爵令嬢に王子は賛成をした。


けれど、そうなるとやはり執務をする人間は必要だった。

執務だけをする人間。

その成果は全て王子達のものとなり、王子が寵愛するのは別の人間。


そんな都合のいい側近候補や側妃候補は中々いなかった。

頭のいい人間はそれが搾取としか呼べない関係だと気が付いたし、野心があっても能力が無ければ務まらない。


人探しは難航して、けれど、放逐しかけていた彼女をその役にすればいいのだという結論が出た。

彼女の親は喜んで彼女を差し出した。

捨てようとしていたものに少しばかりの価値があった事を喜んだ。


王子は仕方がなく彼女を側妃として受け入れた。

けれど、彼女にはしっかりと釘をさした。


そして彼女は側妃となった。

けれど、王宮の者達は誰も彼女を妃として扱わなかった。


彼女の顔も見るのも嫌だと言った王子と王子妃のために王宮のはずれにある小さな宮に彼女は半ば軟禁状態になった。

彼女はそこで来る日も来る日もひたすら仕事ばかりした。


けれど、誰にも感謝されないし、食事も居室もそれ以外も、まるで貴族と呼べないようなものだった。


時々国の公式行事の時だけは国としてドレスが用意されたがただそれを着ただけではとても彼女は貧相に見えた。


「せめて見た目をどうにかすることさえできないのか。恥ずかしい」


彼女は大臣に、宰相、色々な人々や王子にそう言われた。

そう言われても体を美しく保つための予算も、それを頼む侍女も、商人も彼女にはいない。


彼女はいつも困ったような笑みを浮かべうつむいていることしかできなかった。


そんな日が幾日も幾日も続いて、それから王子は国王となった。


それでも彼女の日々は変わらなかった。

少しずつ仕事は増え続けていたけれど何も変わらなかった。


仕事のための必要な資料として本を取り寄せることだけはできた。

彼女と世界の繋がりはそれだけだった。


本から得られる事実と、人気(ひとけ)のない宮の近くでサボっている使用人たちの噂話。

それだけが彼女と世界を繋いでいた。


けれど――


本を読んでサボっている。


誰かがそう言い出したのだと思う。


彼女の求める本が徐々に届かなくなった。

今までの知識で仕事は進めるがそれだけでは難しい。


彼女は別に天才だった訳ではない。

ただひたすら努力をして、努力をして色々なことを覚えたのだ。


ミスをして叱責をされた。


段々毎日何をしているのか。

彼女はよくわからなくなってきてしまって。


それで。


そうして。


他にどうしたらいいのか分からなくなって。


彼女は自分の水の魔法で溺死することにした。


* * *


王族たちが鏡で最後に見たのは水に飲み込まれる側妃様の姿でした。


ひゅっと息を飲む音が聞こえる。


「死んでしまったら。さすがに努力でこの後結果が変わるかもしれない訳がないからね」


申し訳なさそうに妖精が言った。


「だから、近くにいたカエルと側妃様を入れ替えたんだ」

「で、アタイたちはこの後どうするのかを相談しにここに来たんだ」


もっと前に勝負なんてわかっていたんじゃないのか。

そう思いながらも誰もそれを言葉に出せなかった。


勝負の対象だった姫君は泣いていた。


「ちょっと待て、なんで最後の状況を先に教えておかなかった!」


王様が言った。


「彼女を一人にしてはまずいだろう」


その場にいた人間は皆はっとした。

彼女は死のうとしていたのだ。

その後彼女の今後が良くなるであろう情報は何ももたらされていない。


また、彼女が同じことを繰り返すかもしれないという事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ