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13.これまでの勝負について1

※王子視点


自分たち兄弟が偽物の兄弟だと言われているみたいで腹が立った。

俺と妹姫の思い出は“本物”なのだ。

だからこそいらだった。


* * *


父上が、妖精たちに「彼女の生活はそんなに幸せとは程遠かったのか?」と聞いた。

妖精たちは顔を見合わせて、それから「直接お見せいたします」と妖精たちは言った。


妖精たちはどこか申し訳なさそうにしていた。


現れたのは大きな鏡だった。

そこに映し出されたのが、先ほどの彼女の幼少期なのだろう。


こうしてみると母上に似ている気がした。

母上がそれを見て泣き出す。


映し出されたものは、侯爵家で暮らしていたとは思えない薄汚れた恰好をした少女が罵倒されている姿だった。

それから納屋の様な場所で一人で書き物をしている姿。


「この頃は、勉強ができるようになればきっと認められるようになると思っていたころだね」


妖精は言った。

使用人同然の暮らしをしながらあの側妃はひたすら勉強をしていた。

妹は小さく震えていた。

当たり前だろう。もしかしたらこの生活は自分の身に降りかかっていたかもしれないのだから。


「これは親に似ていないからという理由での仕打ちなのかね?」

「違うにきまってるでしょ!?

あたいたちは、ちゃんと見目が似ている子を取り換えてるわ」


じゃあ、何故このような仕打ちを。


「待望の跡取りじゃなかったかららしいですよ」


妖精が言った。


「そ、そうだ。私たち王族には水魔法の素質があるものが生まれることがある。

彼女にそれは――」


そういう魔法は貴族の中でも珍重されるはずだ。


「そんなもの誰も確認はしなかったさ。

彼女が水魔法を使うのはほら」


太陽がさんさんと降り注いでいる日の様だった、汗をかきながら煮炊き用であろう薪を運んでいる少女が鏡にうつった。

彼女がばたりと倒れた。


「飲み食いにも困る、有様だったからですね」


どこか他人事のように妖精が言った。

怒ろうとして妖精がそういう生き物なのだと思い出す。


鏡の中では少女が手に水を出してそれをすすっている姿が映し出されている。

母上はいよいよ声を出して泣き始めた。


主要なシーンを切り出しただけのものなのだろう、少女は鏡の中でどんどんと成長していく。

少女が貴族学園に入ることを、とても嫌そうな態度の父親に言われる。

なるべくおとなしく目立たず静かに、邪魔にならないようにするように父親に言われて少女は頭を下げていた。


入学のために受けた学力確認のテストが一位だったらしい。

王家から婚約の打診が来た様子が鏡に映し出されていた。


これで幸せになれるかもしれないという安堵と、ではなぜ今側妃なのかという不安が自分たちの間で共有されたのが分かった。


少女は初めて美しいドレスを着て王宮に登った。

そこには美しい顔をした王子様がいた。


一瞬今までしてきた勉強という努力が報われるかもしれないと少女は思っただろう。

けれどそれは一瞬で砕け散ってしまった。


美しい顔をした少女の婚約者となった王子様は「女が小賢しい学をつけたからと偉そうに。そんなもので私の気を引けるとでも思っているのか」と言った。

王子は嫌悪感をあらわにして少女を見つめていた。

これが幸せな婚約者との生活になるとはとても思えず、幸せな結婚になるとも思えないでだしだった。


念の為、貴族学院は6年制で中高位の年齢で通います

11歳か12歳で婚約、18歳くらいで破棄です

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