12.チェンジリングと妖精の勝負2
妖精の話は要領を得ないので王様が話をまとめた。
二人の妖精は人の子の幸せとは何かについて議論していた。
けれど埒が明かなかった。
貧乏よりも金があった方が幸せになれるだろうと妖精二人は同じ意見だった。
何故ならば妖精たちは過去に何度も富を人間に求められたことがあるから。
ただ、権力がどのくらいあった方がいいのか。そして努力が幸せにつながるのか。それが分からなかった。
一人は権力はあればあった方がいいと言い。もう一人は努力によって得たものの方が幸せになれると言った。
そこで二人は勝負をすることにした。
と言っても金が無いのは不幸の始まりだ。
裕福な比較対象の二人の人間を観察してどちらがより幸せになるかを測ることにした。
折角の実験なので血が繋がっているからの様な要素を取り除こうと思った。
それであれば血が繋がっていないことを知らないと意味は無いのだが、その時妖精たちはそういうことを考えなかった。
選ばれたのは二人のこれから生まれる赤子。
一人は小国の姫君。
もう一人は別の国の侯爵の令嬢になる赤子。
二人が生まれたその日。
妖精たちは二人の赤子を入れ替えた。
その後二人がどのように育ちより幸せになるのか勝負することにした。
* * *
その旨を王様が説明したところで、側妃様は妖精を見た。
妖精は二人とも視線をそらしてうつむいている。
「その妖精の勝負は私についた方が負けたのは分かります。
それで、この後はどうなるのですか?」
側妃様は家族に守られるようにしているお姫様をちらりと見ました。
けれど、その顔に何か期待の様なものは何もない。
けれど、そのことに王子様は全く気付かなかった。
「あの国の側妃の噂は知っているんだぞ!!
婚約者の浮気すらとがめられず、正妃の地位すら男爵令嬢に明け渡した愚か者。
そんなものと我が姫を再び交換するなんてありえないことだ!!」
怒鳴りつけるように言った。
側妃とはいえ、他国の妃だ。
本来そんな態度を取っていいものではない。
それに妖精の話によると実の妹でもある。
実の妹に対する態度でも無かった。
ふう、と側妃様はため息をついた。
何もかも諦めてしまったための癖の様になってしまったため息だった。
「ねえ妖精さん」
側妃様は声をかけた。
「私は努力を望まれた方の赤子だったんでしょう?」
妖精は側妃様を見た。
そして申し訳なさそうにうなずいた。
それから側妃様は言った。
「あの国で私がこの後どれほど努力を積み重ねても幸せにはならないわ。
でもこの国に戻って、果たして幸せになれると思う?」
側妃様は本当の家族のはずの王族たちには何も言わなかった。
妖精だけに視線を合わせ側妃様は聞いた。
妖精たちは押し黙った。
「何を言っている!!
努力をしなかったのはお前の責任だろう!
自分が幸せになれない責任を人に押し付けるな!」
王子様はそう言った。
側妃様は困ったような笑みを浮かべるだけだった。
王様が「これは国同士の問題でもある故、簡単に判断はできぬ。とりあえず彼女には客間を用意させるが故、しばらく滞在されるといい。
かの国には特使も出す」
側妃様はうなずきました。
そして言われた通り客間に案内されました。
けれど、それは全然嬉しそうではなかった。
王は「何故側妃という身分であのような恰好だったんだ。あれはお前たちがやった事か?」と妖精に聞いた。
妖精たちは「違う」と言った。
王様はため息をついた。
「何故、大変なことをしてしまったとここへ来たのだ?」
「あのこがあまりにも不幸になってしまったから」
「それはどういうものだったんだ」
王様が言った。
妖精たちは顔を見合わせて、「じゃあ見せてあげる」と言った。




