11.チェンジリングと妖精の勝負1
聖女が代替わりした日、その国から沢山の人が消えた。
消えた人間は多種多様で法則性は誰にも分からなかった。
大量の赤子がいなくなったことだけは確かだったが、何故そんなにたくさんもの人が消えたのかは分からなかった。
この国の国王と王妃を除いて。
国王も王妃も何も語らなかった。
彼らが語ったのは、聖女が暴言を吐いた上突然消えてしまったことだけだった。
神殿は新たな聖女を指名した以外、沈黙している。
神殿の中の人間が消えてしまったのかについても何も語ってはいない。
だから、誰が何故消えてしまったのか分からなかった。
側妃様が消えたのが最初で徐々に人々が消えているのではないか。という説もあったが、それを証明できるものは何も無かった。
けれど、突然赤子がいなくなった家庭は悲しみに暮れ、ベッドから病人が消えた病院は混乱した。
それ以外にもあちこちから人が突然いなくなってしまったのだ。
皆、困惑し、悲しみ、そして恐れていた。
今度は自分が消えてしまうのではないかと。
* * *
多くの人が消えてしまった国の隣の国。
その王族のプライベートなスペースに、挙動不審な二人の妖精と、真っ青な顔をする隣国のお姫様、そしてオロオロとする王妃様がおりました。
そこにいたのは質素を通り越して侍女のお仕着せに似た服を着た側妃様と、それをにらみつける王子様、それからこの国の国王様が静かに妖精と側妃様を見ております。
「妖精よ、今一度説明をしてくれないか?」
国王は言いました。
妖精たちは経緯を説明してその上で側妃様を呼びだしたのですが、現れたのがみすぼらしい側妃様だったことと、妖精がいった内容があまりにも荒唐無稽で信じがたかったためもう一度説明するように言いました。
勿論側妃様にも彼女がここに来た経緯を説明するためでもありました。
「俺たちは、ちょっと前、言い合いになったんだよ。」
三角の帽子をかぶり木こりの様な格好をした、いわゆる小人の様な姿をした妖精が言いました。
「どっちが幸せになるかという競争だったんだ」
側妃様には何を言っているか分かりませんでした。
その後も妖精はこうなってしまった経緯をひたすら話しました。
「本当の子だからかわいがるのか、それともそうじゃないかを確かめたかった」
「じゃあ、同じ日に生まれた子を交換すれば確認できるはず」
「どちらがより幸せになれるか、それぞれ妖精が見て決めることにしたんだ」
もう一人の羽の生えた妖精が言いました。
「実の子じゃないと気がつけばそこで終了。
どちらの子がより幸せになるか、あたい達は賭けた」
そこまで言うと妖精たちは、二人ともしょんぼりとしてしまいました。
質問を交えた二度目の説明だったため隣国の王族たちは内容をつかめましたが、側妃様は何となくしか理解できませんでした。
側妃様はそのとてもいい頭で一つの予測は立てていましたが、認めたくはありませんでした。




