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ラジオ大賞6

キーワード③『卒業』

作者: 七宝

 卒業式の朝、改めて段取りの説明をする担任の顔色がどうも優れないように見えた。普段から元気なタイプというわけではないが、今日は一段とクマが目立つのだ。


 という話を隣の席の木村パイナップルくんにしたところ、「楽しみだったんだよ。遠足の前の夜とか眠れないだろ? 多分それと同じだ。それにしてもお前、優しいな。俺が女王だったら惚れてるよ」と返ってきた。


「女だったら」じゃないんだ、と思った。男女だったらほぼ2分の1だが、女王となるとそもそも国単位でいるいないがあるじゃないか。という独り言を大声で絶叫していると、木村くんが「日本にも女王様はいるぞ」と教えてくれたので「どこにいるんだよ、教えてくれよ!」と言うと「卒業してからな」と返ってきた。数時間後までお預けだ。


 その後卒業式は非常に、極めて極めて非常に非常に滞りなく進み、来賓のおじさんをして「ローションを塗ったようなお式でちた」と言わしめた。まさか卒業式が4分で終わるとは。卒業証書授与なんか校長が息継ぎもせずに早口でどんどん呼ぶからみんな走って取りに行ってたもんね。


 ヌルヌル円滑卒業式が終わると、各自教室に戻って卒アル配りタイムになった。


 担任が1人ずつ名前を呼んで渡していく中、僕は卒業証書の筒をスポスポやって遊んでいた。


 6秒後、僕の名前が呼ばれた。苗字青山だからね。出席番号2番だからね。そりゃ早いよ。


 アルバムを受け取り、なぜ12年も座ってこられたのか分からない硬さの6号の椅子に腰を下ろす。


 さてさて、ミナちゃんはちゃ〜んと可愛く写ってるかな〜⋯⋯ってなんだこれ。


 森井くんの顔がマジックで塗りつぶされている。


 こっちのページも、この集合写真も、この写真も、夏休み明けに亡くなったあの森井くんの顔だけが真っ黒になっていた。


「なんだこれ⋯⋯」


 木村くんがそう呟いた。


「もしかして、木村くんも?」


「ってことは、お前のも森井の顔が⋯⋯?」


 どうやら全員のアルバムがそうなっていたらしく、クラスは騒然となった。


「まぁ落ち着きなさい」


 その言葉により、クラス全員の視線が担任に向いた。


「先生、これどういうことですか!」


 クラス委員の朝倉さんが叫んだ。


「どういうことって、お前らのためだよ。こんな晴れの日に死んだやつのことなんか思い出したくないだろ? だから徹夜で塗ったんだ。あー眠みぃ」


 なんだ、そうだったのか。確かに、あんな根暗な子のために雰囲気壊すことないもんね。さすが先生!

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