団子山壱の朝は、団子グッズに囲まれた部屋で訪れる
団子山壱は無類の団子好きだ。
一に団子、二に団子、三に団子に四に団子。
特にみたらし団子を好んで食べる、自称中学生探偵。
いや、正確に中学生探偵。
彼の部屋には、オーダーメイドの団子グッズがたくさん置いてある。
部屋に入れば、まず団子型のベッドと団子柄の布団が目に入る。
次に団子枕と特大の団子抱き枕。団子クッション。団子椅子。団子柄のTシャツ。団子柄のズボン。団子柄のパジャマ。団子柄のクローゼット。団子型の机。
苗字だけに、そこら中が団子の山だ。
壱は家も団子型にしたいと両親に言ったが、すげなく却下された。
朝ご飯も壱は団子を食べる。
栄養を気にするようになったら、団子愛好家の名が泣く。
団子シールが貼られているドアが開く。
そっと隙間から覗くのは、壱の可愛い妹。
五歳になったばかりの幼い妹だ。
ボンボンゴムをつけてツーサイドアップにしている。
歯磨き粉のついた団子歯ブラシと水の入った団子コップを持って、登場。
「にーにー。あさですよー」
舌足らずな声で壱に話しかける。
うーんと唸るだけで、夢見心地の壱は起きない。
壱の妹、二子は団子ベッドで寝ている壱を起こしに、助走をつけてダイブした。
ドスッという音。
埃が舞い、壱がびっくりして目を覚ます。
壱は上体を起こした。
「二子……。おはよー、早いなあ、相変わらず……って、あ! 団子歯ブラシに団子コップ! 兄ちゃんのもの、勝手に触っちゃダメだって言ったろ?」
「にーにがおきるのおそいので、もってきちゃいました!」
ビシッと敬礼して、二子は笑った。団子が何よりも愛しい壱も、これには和んでいる。
上に乗っかっている妹の頭を優しく撫でて、ぎゅっと抱き締めた。
「二子は可愛いなああ~。団子山家の良心だあ~」
「にーにだいすき~」
二子も抱き締め返している。
二人はとても仲のいい兄妹で、世間一般でいうブラコン・シスコンのけがある。
十四の壱が未だに彼女の一人も作れないのは、これである。
妹が可愛いので他の女子とは進展しない。
興味がないわけではないのだが。
二子は鼻を摘んで、団子コップと団子歯ブラシを差し出す。
「にーに、はみがき!」