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団子食べたい  作者: 社容尊悟
1本目
2/65

団子山壱の朝は、団子グッズに囲まれた部屋で訪れる


 団子山壱は無類の団子好きだ。

 一に団子、二に団子、三に団子に四に団子。

 特にみたらし団子を好んで食べる、自称中学生探偵。

 いや、正確に中学生探偵。


 彼の部屋には、オーダーメイドの団子グッズがたくさん置いてある。

 部屋に入れば、まず団子型のベッドと団子柄の布団が目に入る。

 次に団子枕と特大の団子抱き枕。団子クッション。団子椅子。団子柄のTシャツ。団子柄のズボン。団子柄のパジャマ。団子柄のクローゼット。団子型の机。

 苗字だけに、そこら中が団子の山だ。


 壱は家も団子型にしたいと両親に言ったが、すげなく却下された。

 朝ご飯も壱は団子を食べる。

 栄養を気にするようになったら、団子愛好家の名が泣く。

 団子シールが貼られているドアが開く。

 そっと隙間から覗くのは、壱の可愛い妹。

 五歳になったばかりの幼い妹だ。

 ボンボンゴムをつけてツーサイドアップにしている。

 歯磨き粉のついた団子歯ブラシと水の入った団子コップを持って、登場。


「にーにー。あさですよー」

 舌足らずな声で壱に話しかける。

 うーんと唸るだけで、夢見心地の壱は起きない。

 壱の妹、二子は団子ベッドで寝ている壱を起こしに、助走をつけてダイブした。

 ドスッという音。

 埃が舞い、壱がびっくりして目を覚ます。

 壱は上体を起こした。


「二子……。おはよー、早いなあ、相変わらず……って、あ! 団子歯ブラシに団子コップ! 兄ちゃんのもの、勝手に触っちゃダメだって言ったろ?」

「にーにがおきるのおそいので、もってきちゃいました!」

 ビシッと敬礼して、二子は笑った。団子が何よりも愛しい壱も、これには和んでいる。

 上に乗っかっている妹の頭を優しく撫でて、ぎゅっと抱き締めた。

「二子は可愛いなああ~。団子山家の良心だあ~」

「にーにだいすき~」


 二子も抱き締め返している。

 二人はとても仲のいい兄妹で、世間一般でいうブラコン・シスコンのけがある。

 十四の壱が未だに彼女の一人も作れないのは、これである。

 妹が可愛いので他の女子とは進展しない。

 興味がないわけではないのだが。

 二子は鼻をつまんで、団子コップと団子歯ブラシを差し出す。

「にーに、はみがき!」

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