声の正体
ー目覚めよ。
声が聞こえる。威厳のある声が。
ー目覚めよ。
俺はゆっくりと目を開けた。
ここは、西洋風の城の中に酷似している。
「ここは何処だ…?」
必死に記憶を辿る。
「そうだ、俺は異世界転移して…」
撃たれた。と考え、自分の足を見やるが外傷はない。
俺は周囲の確認をする。
俺の周りを兵士が取り囲んでいる。ざっと500人は居そうだ。
20代前半と思わしき容姿端麗な人物が目の前に立っていた。
「貴様、ヴァリス帝国の手先か?」と聞いてきた。
年齢の割に声に威厳がある。コイツが重要役職に就いているのは間違いないと言って良いだろう。
と言うか、ヴァリス帝国って何だ?
ーヴァリス帝国とは、400年の歴史を持つ国王カラメクトを中心とした絶対王政の国。カラメクトは龍との契約を結んでいる。
ん?何処からの声だ?
そもそも俺はその事を口にしていない。
「とぼけるなよ。あの地帯は我が部隊が指定している一般人侵入禁止区域だ。我々の勢力の人間は兵士以外はこの区域に入ると、天との契約により天罰を受ける。よって、貴様はヴァリス帝国の手先であると考えるのが妥当だ。」
ー訳が分からない。
が、ヴァリス帝国の説明をしたのはコイツではない。
この国はどんな国だ?
ーもし俺の考えが正しいならコレで説明があるはずだ。
ーー国ではなくセクメタ勢力と呼ばれる集団。現在、ヴァリス帝国に対して独立戦争を仕掛けている。
ーやはり。
この声の正体、ーお前は誰だ?
ーークワレ・ディス・ウィッション。霧島和希の能力です。
「おい、貴様。何とか言ったらどうなんだ!?」
なあ、この世界に異世界人に対する伝承はあるか?
俺は異世界人がこの世界で、伝承により、良い待遇をされる事を期待した。
ーーこの世界において、異世界人は革命を起こすとされています。
その革命がどんな革命かによるが、目の前の男の様子を見るにもう時間を稼げそうにない。賭けるしかない。
「…俺の名前は霧島和希。信じられないかもしれないが、異世界から来た。」