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『現実恋愛』短編集

隣の席の早瀬さんが気になって仕方ない

作者: pan

連載作品のネタだし中に思い付いたものです……

書きなぐるように書いたので誤字等はお許しを……

「あ、早瀬さん、消しゴム落としたよ」


「……ん」 


 僕には気になっている人がいる。

 それは隣の席の早瀬(はやせ)さん。さっき消しゴムを落とした人。


 肩まで伸びた藍色の髪はサラサラで、適度に凹凸のある体を飾っている。引き込まれそうな黒い瞳はクールな顔立ちを引き立たせる。

 スタイルがいいからか同じ制服を着ているはずなのに、まわりとは違う印象を受ける。その容姿を持ち合わせながらも、浮ついた話も聞かないし誰かと話しているところもあまり見かけない。


 そんな早瀬さんは、よく窓の外を眺める。さすがに授業中に眺めてはいないけど、休み時間はだいたいそうしている。


 今も眠たそうな目をしながら、退屈そうに手に顎を乗せて外を眺めている。

 無表情のまま、ただただ窓の外を眺めている。


 僕はそんな早瀬さんのことが気になっている。

 ―ーこれはただの興味であって、決して恋愛的な感情ではない。



 ◇◇◇



 ある日の夜、僕はコンビニに向かった。そのコンビニは家から徒歩5分もかからない、手ごろな位置にある。


「……いらっしゃいませー」


 入店すると同時に聞こえてきた声は、耳をすませばやっと聞こえるほどの声量で、か弱い。


 僕はさっさと買い物を済まそうと商品を手に取り、レジに向かった。時間が21時近いこともあり、混んでいない。


「……レジ袋入りますか」


 バーコードを読み取っている音が鳴っている間に店員は聞いてきた。お願いしますとだけ返し、支払いを済ませるために財布を開いた。


「……ありがとうございました」


 僕は店員から渡された商品の入ったレジ袋とレシートを持ってコンビニを後にした。


(今日も話せなかった……)


 僕は家に戻る途中に勝手に落ち込んでいた。それもさっき接客対応していた店員が早瀬さんだったからだ。


 早瀬さんがここでバイトしていると知ったのは、ほんの一か月前。僕が早瀬さんのことが気になってすぐのことで、たまたま今と同じ時間ぐらいに来たのが始まりだった。


 毎日行くのも気持ち悪いので、初めて見かけた曜日だけ毎回通っている。その度に話そうとしているのだが、上手くいかない。レジ袋を毎回買うのも話すタイミングを作るためだ。


 僕は早瀬さんがどんな顔で、どんな表情で、どんな声で話すのか、気になっている。

 ――これはたたの興味だ。




 翌日、僕は体調を崩してしまい、学校を休んだ。自分でも不甲斐ないと思いつつも、なってしまったものはしょうがないと受け止めた。


 一人でいる時間は退屈で、何をするにも意欲がない。もちろん体調不良であることが原因であると思うけど、なにか他にもあえる気がする。とりあえず薬を飲んで一眠りといこう……。


「……誰だろう」


 どれくらい寝ていたかわからずほど熟睡していたはずなのに、突然鳴らされたインターホンの音に目が覚めた。まだ快復していない身体を起こし、のそのそと玄関に向かった。


 僕が扉を開けて訪問者を確認すると、目を疑った。


「あ、ども……」


 そこには早瀬さんが立っていた。どういう状況か理解できなかった僕は回らない頭を無理やり動かした。


「あの、これ」


 渡されたのは学校のプリントだった。今日は金曜日でだ日を跨ぐといけないと思った担任から頼まれたのだろう。

 そのまま僕は軽くお辞儀をして、風邪をうつすのも悪いので扉を閉めようとした。


「……あ、ちょっと待って、これも」


 早瀬さんが急に呼び止めてきて、手に持っていたレジ袋を渡してきた。僕は中身が気になり確認した。


「これ……いいの?」


 それは僕がいつもコンビニで買っていた飲み物とプリンだった。


「……毎回買ってくし、好きなのかな、って」


 早瀬さんは照れているのか僕と目を合わせずに、顔だけ横を向いていた。僕は持ってきてくれたことよりも覚えてたことの方が嬉しくなった。徐々に上がっていく口角を抑えながら、ありがとうとお礼だけ伝えた。


「……じゃ、また学校で」


「あ、またね! 本当にありがとう!」


 早瀬さんは不器用な人なのだろう。レジ袋には僕の好きなプリン以外にも入っていて、まるで僕のことを考えて買ってきてくれている。そんな気がした。


 学校は休んでしまったけど、早瀬さんに会うことが出来た。

 しかも今回は僕の知らない早瀬さんの一面を知ることが出来た。来週はお返しに何かあげよう。



 ◇◇◇



 月曜日、体調が快復した僕は登校した。しかし時間を見間違えていたのかいつもより早く登校してしまっていた。


 僕は人の気配を感じない廊下を渡りながら教室に向かった。


 誰もいないと思った教室には、すでに先客が――早瀬さんがいた。


「あ、早瀬さん。おはよう、早いね」


「……おはよう」


 なんだかいつもの様子と違う早瀬さんに僕は違和感を覚えた。しかし見た目は何も変わっていない。いつも通り窓の外を眺めている。


 僕は椅子に座り、早瀬さんと同じように窓の外を眺めようとした。しかし早瀬さんがいるから見えるはずもない。けど、僕はそれで満足だった。


「……体調、よくなったんだね」


 何を言ってきたのかと思えば、僕の体調のことだった。あの時から心配していたのだろうか。


「うん、おかげさまで」


 そう僕が言ったところで窓越しに早瀬さんと目が合った。すると早瀬さんは急に取り乱したのか、机に膝をぶつけてしまった。


「いったあ……」


「だ、大丈夫?」


 僕は心配になり、声をかけるとすぐにいつもの調子に戻った。


「……大丈夫だから」


「それならよかった、あ」


 僕はあの時のお返しの品をカバンの中から取り出した。今なら誰もいないし、今渡した方が都合がいい気がした。


「これあの時のお返しね」


 僕は早瀬さんの前に行き、手に持っていたものを机の上に置いた。早瀬さんは置かれたものが気になるのか、窓の外から目線を外した。


「これ()()()()()()()()ね、いつも買ってるやつ」


「……あ」


 早瀬さんは何か思い出したのか顔を赤らめながら、窓の方を向いた。


「……なんでこれを持ってきたのよ」


「何でって、ただのお礼だよ。なんかいっぱいプリン買ってたみたいだし、好きなやつ教えとこうかなって」


「……な」


 触れてほしくなかったのか、早瀬さんはさらに顔をあからめ、気づけば耳は真っ赤になっていた。


 どんどん僕の知らない早瀬さんが出てくる。妙な高揚感を覚えた僕は何とか気持ちを抑えようと自分の席に戻った。


 隣の席の早瀬さんは不器用で、実は人のことを良く見ている優しい人なのかな。

 そう思いながら僕もまた窓の外を眺める。


 ふと目に入った窓に反射する早瀬さんの顔は優しい笑顔だった。


 気になったのはただの興味で、恋愛的な感情では――いや、正直になるべきかな。



 僕は早瀬さんのことをもっと知りたくてしょうがないんだ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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