呪術師に未来は見えませんのですけど……みんなに俺の職業が伝わらん
ーーバサリ
天幕が開く。
するとそこはひと度闇の会合と化す。
この部屋に明かりはない。
土の擦れる音が次第に大きくなる。
「……依頼は」
俺は小声で尋ねた。
「実は……幼馴染のメナちゃんが好きで、告白しようか迷い続けてかれこれ1年。もう僕も20歳だし、どうすればいいかな?」
「うん。お帰りください」
「そんなこと言わずにさあー占い師さ〜ん」
「だ・か・ら! 俺は占い師じゃねえ! 呪術師だ!」
「それでどうしようかなあ?」
「黙れや! お前のせいで俺の事占い師だと思ってる奴しか来なくなっちまったんだよ! どうしてくれるんだよ!」
「ふえ? 占い師さんでしょ? で、僕はどうすればいいかな?」
「さっさと告れやあ! この優柔不断の低脳アホ勘違い野郎が!」
「で、でもお……失敗したら……」
「だ・か・ら! 俺は占い師じゃねえって言ってんだろ!」
「……え、そうなの? じゃあ何屋さんなの?」
「俺は何屋でもねえ! 陰でこっそり人を呪い殺すカッコよさの至高! 呪術師だあ!」
「で、メナちゃんに告白しようかな?」
「だ・か・ら! 俺は占い師じゃねえ! 相談すんな!」
「相談しちゃダメな占い屋さんなの?」
「あああああああああ! 俺は呪術師だあああああああ! 後、相談しちゃダメな占い屋なんかねえ!」
「そ、そりゃあそうだよね。じゃあメナちゃんのことなんだけど……」
「分かる? 俺の言ってることわかる? 赤ちゃんなの? 猿なの? 大きいミジンコなの? 脳みそアリさんなの?」
「うん! 決めた! でも、その前に占い師さん……メナちゃんが僕のこと好きかどうか占ってよ」
「占う? 占ってもいいけど、俺が占ったら殺しちゃうよ?」
「もう、冗談言わないでよ占い師さん」
「うん。俺イコール呪術師。ここまで分かる? 呪術師怖いひと。故に冗談言わない。ほら、分かりまちたか?」
「メナちゃんが僕のこと好きでありますように」
「もうおまえ呪い殺すぞ?」
「ああ、言ったなあ! 僕も占い師さんのこと呪い殺しちゃうぞお!」
「ああはい。もう言わないからそのうざいノリやめような」
「で、その?」
「ああ、はいはい。好きだってさ。メナちゃんお前のこと好きだって」
「本当?」
「本当だからさっさと告れ」
「じゃあ行ってきまーす!」
本当なんだよなあ。
昨日メナちゃんここ来て件の超低脳優柔不断男のこと相談しに来たんだよなあ。
最初ネタかと思ったらメナちゃん頬真っ赤にして言うんだよなあ。
〜
「あ……あの……その……ひる君って私の事……その……好き?」
「あ、そうだね。間違いないねもう。あとうち占い屋さんのテント風だけど呪術師の家だからね。まず店でもないし」
「あ、そうですよね……ごめんなさい」
「い、嫌全然いいんだけどね。そんな硬くならずにまた相談しに来てよ! 俺、占い師の勉強もするから!」
「うん……じゃあまた来るね」
〜
あと、あのアホ野郎の名前、ひるねなんだよなあ。
昨日知ったけどマジでピッタリの名よなあ。
ってそうじゃねえ!
改めて思い返すと俺何言ってんだ?俺!
俺は占い師じゃねえし、なる気もねえ!
俺は呪術師だああああああああ!
読んでくれてどうもありがとうございます。
よかったら感想ください。
続編ももし書いたら読んでほしいです。