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7 見つかっちゃった

読んでいただきありがとうございます。

 衝撃の事実が発覚してから推定五分(ユニコーン時間)――私は固く心に決めていた。このイケメン(出逢い)を放すもんかっ!って。

 こんなに格好いいイケメンの童貞は、多分他にいない。いや、絶対にいないわ!

 よくその御年まで肉食女子に喰われなかったものね。何か訳アリなのかしら? 普通に性格も良さそうに見えるけれど……。


 はぁああ、それにしても癒やされる。前世で言うならトム・○ルーズの爽やかさとジェイソン・○テイサムのワイルドさとザック・エ○ロンのチャーミングさを掛け合わせた感じかしら。


 ひとつだけ心配なのが、明らかに誰かに襲われてた、ってことよね。もしかして悪い人……いいえっ! こんな爽やかイケメンが犯罪なんて犯すわけないっ!(※個人の意見です。)


 考え事をしつつも、お腹を空かせていそうなイケメンのため、近くにある食糧を探す。

 素晴らしい魔力水(エキス)を貰ったんだもの! お返ししなくちゃね。

 幸い私の嗅覚は冴え渡っていてよ!


『探してくるから待っててね!』

「お? もう行くのか?」

『ちょっと離れるけど此処にいてね!』

「気をつけてなー」


 微妙に会話は成り立っていない。イケメンは私が住処に帰ると思ったようだ。

 だが問題ない! イケメンがなんと言おうと、地の果てまでついて行くわ。


 果物のいい香りを探すのよ!

 目を瞑り鼻をひくひく。


(こっちだわ! いい匂いがするっ)


 目を瞑ったまま鼻息荒く匂いを辿ると、


「おわっ?! なんだ、戻ってきたのか?」

 

 イケメンがいた。

 駄目だ、完全にイケメンの爽やかな香りに引きずられてしまった。しかしイケメンが嬉しそうなのでヨシとする。


 もう一度よ!

 イケメンフレグランスを意識しないよう再度集中すると、少し離れた場所に以前味見したフルーツらしきものと同じ香りを捉えた。

 数十メートル先なんて、ユニコーンにとっては人間の三歩くらいのものよ。


 たったか走って目標のブツを見つけた時、壁にぶち当たった。私、ユニコーン、四足歩行。

 つまり、手が使えない。どうやって持ち帰ろう……。


 悩んだ末に結論を出した。

 これはもう、額の角にぶっ刺すしかないわ!


 ドシュッ! ブシュッ!


 狙い通り、自慢の角はいい感じにフルーツの真ん中にささった。前世だったらSNSでバズったに違いない光景ね。


 冷静に考えたら、自分がイケメンの立場ならユニコーンの角に刺さったフルーツなんて食べたくないけど、この時の恋に浮かれる私は情熱のままに突っ走り、やり遂げた感で一杯だった。


 一直線へイケメンの下へ走り、角に刺さったフルーツを献上する。


『どぞっ!』

「うわああああああああああ!」

『えっ』


 すんごい勢いで距離を取られた。イケメンの顔はさっきまでとは打って変わって青褪めている。


(なに?! なんだというの?! 私のなにがあなたを怯えさせたと言うの?!)


「すまん、驚いた。お前、ケガしてる……訳ではないんだな?」

『ん? 怪我?』


 不思議に思いふと湖面に目をやると、血だらけのユニコーンが映っている。


『きゃあああああ!』


 そう、なんと頭に突き刺した果実から真っ赤な果汁がだらだらと流れ、眉間から鼻先まで私の美しい毛並みを赤く染め上げていた。まるで人を喰ったような様相だ。


 いっけない。そういえばあの果実、皮も果肉も真っ赤だったわ。味は美味しいのに見た目のグロさがアンバランスでなんか異世界っぽい、と一人はしゃいだっけ。


「もしかして……俺の為に取ってきてくれたのか?」


 おずおずと、しかしきちんと私の目を見ながら聞いてくれるイケメン。


『そうでございます! そうでございます!』

 

 ああ、軽めの求愛ステップでビートを刻むのが止められない!


 そんな私に苦笑しながらも、ありがとな、と言ってイケメンは角から果実を引っこ抜き、(若干引きながらも)きちんと食べてくれた。

 豪快にかぶりつくその麗しい姿、あな尊し。


『美味しい? ねぇ美味しい?』

「くくっ! その顔、テイマースキルがなくても、なんて言ってるのか分かるよ。美味いよ、ありがとう」


(くぅ~っ! 好感度の上昇が天井知らずよ! あ、あんなところに食べ残し(ごちそう)がっ)


 本能の赴くまま、イケメンの口端をべろりと舐める。


「おわっ! なんだ、お前も食べたいのか?」

『いえ、違います違います。私が食べたいのはあなたなので――!』

「俺だけ食べて悪かったな。ほら」


 勿論魔力を糧としているらしい私は果実なぞには興味はないのだが、イケメンが手ずからあ~ん♡してくれるとなれば話は別よッ!


 しかし、残念ながらその果実が私の口に入ることは無かった。


「マルス様ーーーー! お待ちくだされぇえ今お助けをーーーーー!!!」


 何故なら、イケメンがユニコーン(わたし)に喰われると勘違いした十数人もの中年男性(※非童貞率 百%)が武器を片手に猛スピードでこちらへ襲いかかって来たからである。




こそっと宣伝。

現在もう一本小説更新中です。


『悪魔と呼ばないで ~元逆ハーヒロインの娘は修道院生まれ孤児院育ち~』


というタイトルでやってます。こちらの作品とはテイストが違うのですが、読んでやってもいいよ、っと気が向いた方は、検索か作者ページからポチッと見てくださると嬉しいです。

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