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6 衝撃の真実

読んでいただきありがとうございます。

 前世も含めて初めての一目惚れをした私。

 やっと出逢えたマイラブ。


 それなのに、その人は今にも天に召されようとしている。

 そんなの、そんなの………


「ピイイイイイイイイイッ!(絶対にさせるもんですかっ!)」


 天に向かって咆哮した瞬間、身体中に力が漲ってくる。全身を温かい何かが駆け巡り、一カ所に集まっていく。

 ユニコーンの生態なんて知らない。ましてや能力なんて。

 でも、この時私の内なるユニコーンが私を導いてくれた。どうすべきか、本能的に分かった。


 考えるまでもなく、私は頭の角を目の前の男に押し当てた。角を通して何かが男に流れ込んでいくと同時に、男の身体が淡く光る。


 全ての力を注ぎ終えた時、男の身体の傷は完全に塞がっていた。

 まるで、最初から怪我などしていないように。


 けれど、ローブや袖に染み込んだ大量の血液が、確かに怪我を負っていたことを証明している。


「なんだ……?」


 男は最初、混乱した様子で茫然と地面に寝ころんでいたが、暫くして急にハッとしたかと思うと、慌てて起き上がり全身を検分し始めた。どうやらどこにも傷が無いと確認し終えると、狐につままれたような顔で私を見つめてくる。


「お、お前がやったのか……?」


 恐る恐る訪ねてくるイケメン。

 ちょっぴり不安な顔をするイケメン。

 立ち姿も素敵なイケメン。

 イケメンって凄い。


 思えば、麗子だった時はいつも下を俯き気味に歩いていたから、イケメンの顔をこんなに近くで見たことが無かった。

 しかし! 前世では死ぬ間際、命を救った男の子に化け物呼ばわりされた私だけど、今世の私は美ユニコーンなのよ! もう遠慮なんてしないわッ!

 


『そうです! 私がやりました! 私が命の恩人ですッ!』

「あ、スマン。俺にテイマースキルは無いから、お前の言葉はわかんないだ……」

『そんなっ! 諦めないでっ』


 言いながらにじり寄ってみつつ、考える。


 イケメンにはどうやら私の言葉が分からないらしい。私としては、前世と同じ感覚で話しているつもりだったけど、そもそも異世界なのだから日本語な訳ないのよね。

 何故だか私には彼が話している内容が分かるけれど……もしかして、これって転生特典だったりするのかしら?


 取り合えず、テイマースキルとやらがある人間なら会話が成立するのね。

 正直、スキルとかよく分からないけれど、覚えておきましょう!


 言葉が通じないと分かっていながら、それでもイケメンは話しかけてくる。


「えーと、とにかく助かったよ。目を開けて俺を覗き込んでいるお前を見た瞬間、死んだと思ったよ。まさかユニコーンにこんな力があって助けてくれるなんてな……」


 実は私も同じ感想よ! ユニコーンに癒しの力があるなんて知らなかった。

 そういえば、前世の神話なんかでは、ユニコーンの角には病気を治す力がある設定だったような……ファンタジーの物語は好きだったけど、生憎ユニコーンについては殆ど思い出せない。

 私のユニコーンの知識の九割はマイ〇トルポニーなんだもの。


 ポリポリと頬を掻いたイケメンは力が抜けたようで、再び木陰に腰を下ろした。勿論私も後を追うわよっ!

 イケメンににじり寄り、隣に腰を下ろしてみる。うふっ、好きな人の隣に座るなんて初めて!

 テンションが上がるままに、ぐりぐりと角を肩に押し付けてみると少し驚かれたけれど、そのまま頭を撫でてくれた。


 これが! 噂の! 頭ポンポン!※但しイケメンに限る、ってやつね!!!


 弧を描く薄い唇がセクシーでうっとりしてしまう。

 この人、前世だったらハリウッド映画なんかに出ていても違和感ないわ。


「お礼をしたいけど、ユニコーンが喜ぶことってあるかな……」

『お礼は現物払いでお願いします!』

「なんか期待した目をされていることしか分からん」

『連絡先を教えて下さい。なんならこのまま連れて行って』

「うーん……あ! そうだ!」


 何を思ったか、少し考えこんだ後イケメンが何やら呪文らしきものを唱えると、空中にバレーボール大の水球が出現した。

 今のが魔法? どうやったのかしらっ!

 初めて間近で見る魔法にドキドキしてしまう。中二病の既往歴がある身としては、「ウォーターボールッ!」とか叫びながら腕を突き出してド派手に繰り出して欲しいところだけど、いちいちそんなことしていられないわよね。


「ユニコーンて()()()()()()んだろ? 俺の魔力が、旨いかどうかはわからんが……この魔力水には今俺に出せるギリギリ最大量まで魔力を注ぎ込んだから、貰ってくれ」


 なんと! ユニコーンって魔力が餌なのね。知らなかった。だから何日も食べなくても平気だったんだ。普段は空気中から取り込んでいる、とかなのかしら。

 何にせよ、このイケメン、ユニコーンよりユニコーンに詳しいのね。益々好感度が上がっちゃった。


 そう言われてよく見ると、私の顔の前で浮いている水球はイケメンの瞳の色と同じにうっすら色付いて、キラキラと光の粒子が散っている。


「どうした? 俺の魔力じゃ食いたくないか」

『違いますっ! 食べますっあるだけいただきます!』


 水球を消される前に、慌ててかぶりつく。

 咄嗟に口に入れたそれは、とっても甘くて美味しくて……至上の味がした。


(これが………イケメンのエキス!!!)


 興奮のあまり例の求愛ステップを踏みそうになる私に、イケメンが破顔する。 


「ははっ! 気に入ってくれたみたいだな!」

『勿論です! 今日から私の大好物はコレです!!』


 ぐりぐりと角を押し付け感動を表すと、イケメンは優しく角を撫でた。


「お前、人懐こいなぁ。ユニコーンは人には懐かないって聞いていたけど、子どもだからか? それにこんな綺麗なユニコーン、見たことないよ」


(なんと! 美ユニコーン認定いただきました~!)


 流れるように賛美を口にするなんて、なんてイケメンなの。


「俺にテイマースキルがあれば、お前と仲良くなれたのにな」

『諦めないで! そんなスキルなんて無くても、仲良くなってみせるわッ! 大体ユニコーンがヒトに懐かないのは奴らが臭いからで――』

「お、どうした? 突然固まって」


(え? ちょっと待って。え? ええ?)


 そう、この時漸く私は気が付いたのだ。このイケメン、臭くない。まっったく、臭くないのだ。


 改めて観察してみる。

 ヒト族ヒト科、男性、推定二十代後半。

 黒髪、紫瞳、色白、とんでもなく整った造形に、漂う色気。


 このスペックで、こんなことある?

 それでも、ユニコーンとしての嗅覚が、それが間違いなく事実であることを教えてくれる。


(この人、ど、童貞だーーーーーー! まっさらな童貞(DT)ですーーーーー!)


 転生ユニコーン歴、三日。

 ユニコーンは処女厨だけでなく、童貞厨でもあることが確定した。



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