表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/57

ピンハネと役割分担

「帳簿と現金と現物がピタリと揃っており、上様は大変喜んでおりましてござる」


「フウゥ、ワシの配下にピンハネする出納は居なかった

と言う事か、ずっと気になっておったのよ」

「それについては上様も首を傾げておられてござる」

「ウム、某も気になるな。頭の良い奴ならどさくさ紛れに、お主の責にしてピンハネしそうなものだがな」


「ああ、それな、同じ事させても、2倍仕事が速い奴も

いるじゃろ?

そんな奴を暇させてたら良からんことを考えよう?

空いた時間、ただサボるなら良いが、そうはならん。

2倍速いなら2倍の給与を受け取って当然とピンハネしよるわ」

「おぉ!、そうかもな」


「じゃからな、ワシは出納には計算が並の速さの奴しか置いとらんのよ。

なぁに、同じ仕事を続けさせておれば徐々にでも速くなって、2倍の奴との差もなくなるでな、速くなったらその分褒美を渡せば良いのよ。

さすればピンハネなど危険な事をせずとも、加増を待とうと思うであろう?」

「全くじゃの!よう考えたの」


「もしも出納がピンハネしてみい、兵の飯が悪くなろう? すると士気はダダ下がりで指揮するどころか戦にも使えずで、乱暴狼藉でもされてみぃ、ワシの首がハネ飛ぶわ」

「上様は兵の規律には厳しいからの」


「そこはワシも上様に同意じゃがの、乱取りなど大名が兵にまともに払わんで、自分の懐は痛まんし兵も喜ぶで

一時的には良いがの。

勝ち取った後に領民に恨みが残って、まともな領地経営などできん下策よ。結局ケチるから後腐れが残るのよ」



[この時代、乱取り(人をさらって奴隷にする)は武田や上杉家などで普通に行われ、信長のように乱取り禁止している方が少ない。

九州の大名などは乱取りして南蛮人に売っていたようである]



「さすが退き佐久間よの、戦にも一言あるの」

「フン、ワシも語り過ぎたの」

「某の見舞いにとか互いに愚痴を言い合おうとか、初めに聞いた気がするがな。

お主、大分溜まっておったようだのう?」


「アオゥ、寺で半年もおって暇でな、軍機に関わるで、

迂闊うかつに自分の話も出来んし。

家督相続の敗者達の専ら聞き役であったのよ」

「フム、聞くだけなら面白そうじゃがの」


「いやそれがな、出来が悪くて暴れん坊なら当然で済むがな。優秀な次男三男ゆえに、お家騒動になる前に早々に寺に押し込まれた者もおってな。

勿体無いというか、不憫なものよ」

「お家騒動は恨みを残すからの……」


「林殿は信行殿推しであったの。所でさっきワシの首根っこ掴んだ時、えらい力が強かったが、なんで右筆を選んだ? 武人の道でも行けたろう?」

「某と同じく信行殿を推した柴田勝家殿がおろう? 上様より許されたが、2人とも軍勢を率いるのは収まり悪いじゃろ。上様が気を揉むわ。

10歳も下で軍才のある勝家殿が、軍を率いた方が良かろうよ。で某は右筆となったのよ」


「やはり、そんな思案があったとはな。しかし居合姿が様になっておったぞ」

「フフフ、であろう! 某はお側使えだからな。いざ襲撃があった時に上様を逃がすための時間稼ぎをして名誉挽回の機会を待っておったのだがな。

幸か不幸かついに来なんだわ」


「今回別の手段だが来たではないか!お主は公家衆との伝手も多かろう?」

「お主こそ御茶会をよく開いて公家衆や豪商たちと月見の会などやって居ったろう!」


「いやいや、ワシは豪商相手が主よ。せいぜい月見止まりじゃ。

林殿は上様と同席して公式の場の話し合いに多数出て、公家に知られて居ろうし佐渡守であろう。

貴人方の対応はお主が向いておろうよ」

「某に面倒な方を押し付けおって!」


「したが、貴人との付き合いは明智殿より他に人無し、と言われるのも悔しかろう?」

「ムム、確かに、幕臣としての伝手を活かしての功績で所領を増やし、明智殿は今や織田家の重臣の一角となっておるからな」


「そこを林殿が肩代わりするのよ。

一部重臣に力が集まりすぎるのも釣り合いが悪かろう? ほれ、1年前のワシの様にの」

「明智殿がお主の二の舞いを踏まぬ様にせよってか!」


「陰ながらにお主が諸方を説いて根回しをし、行けると踏んだら若様より奏上頂けばよかろう、さすれば功は若様となろう?」

「フム、面白そうじゃの、某がその役引き受けよう!」


「おおっ、さすが林殿、決断が速いの!」

若様好きな林殿に面倒事を押し込めた。駆け引きで初めて勝った様な気がする……


「で、帆船の方じゃがの?」

「遣りたいのであろう?そもそも某には伝手も無いでな、お主が適任よ」


「有り難い、その役ワシが受けようぞ」

「ウム、で次に戦の終わらせ方じゃが、お主の考えは?」


「織田家の強みは農民からの徴集でなく常時雇用の兵と圧倒的な火力と、それらを支える銭の力であろう?」

「そうじゃな」


「このまま各方面軍を推し進めて行けば負けることは少なく、火力集中して各個撃破で後5年もせぬうちに天下は収まろうな」

ウムと頷く林殿。


「じゃがな、それでは重臣の功が重くなり加増するもせぬも問題があろう。そして倒して回っても勝てるであろうが、恨みが残って後々の統治が面倒じゃ。

そして火力は火薬で莫大な銭がかかろう?」

「そうじゃな」


「ワシはな、日本という国全体がピンハネ

されて居るように思えてならんのよ」


夜もけて来ている。

ピンハネって、一説として

ポルトガル語で1割の上前の意味の「pinta」

のピンをはねる(搾取する)から来てるとか

なので作中でも使ってみた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ