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パティオ・煉瓦・漆喰・セメント

まぁまずは飯じゃの。

茶碗で渡されたのを見て吃驚びっくりする。米が黄色く染まっておる!

紅花を加えたから想像はしていたが、これはなんとも賑やかな色合いじゃ。


「お祭りの様な彩りですな!」と嘉隆殿。

「ワシも初めて食べるんじゃが、紅花が綺麗に米を染めて居るな」


「イカや海老も入って塩胡椒も効いていて、美味いですな」

嘉隆殿にも喜んで貰えたようで何よりである。料理をした者はあれが有ったらもっと美味いと言う。足りない物は書き付けて置くようにと伝える。


鍋に少し残ったパエリアは、蔵屋敷の者達に差し入れさせる。美味そうな匂いだけさせて全部食ってしまっては、後が怖いでな。


ゴンサロがワシの会計書に材料代を記入する。結構高いが、昼飯だけならなんとかなる。ワシはゴンサロに先に今月分の材料代を渡しておく。手元に金があれば材料も多めに買ってこよう。



さて美味いものも食ったし、シエスタじゃ。その前に宿舎について皆の意見を聞いておく。出身地が違う者達が自国の家の作り方を一通り話していく。


パティオと言う名がよく上がる。

どんなものかと聞くと、外側を家屋で囲い内側に庭を作りシエスタやくつろいだりするそうじゃ。


今回の立地が海の側だけに、潮風を和らげるに良さそうかの。パティオで良いか挙手で確認すると8割ぐらいの手が上がる。フム、パティオ(中庭)にするか。



分かれて部屋に戻って横になるが、先に建築の得意な船員2人を呼んでおく。

30人程が暮らせるパティオの間取りを描いてもらう。1階建ての広い面積を使う図面と、2階建ての狭めの図面。


堺が外の海賊にいきなり襲われる場合は、一番海側のワシらの宿舎になろう。その際は守る面は少ないほうが良い。

2階建てが良いかもな。囲む壁が高ければ潮風も防ぎやすかろう。だが2階建ての建築は珍しいだろう。嘉隆殿に確認する。


「2階建てなどは難しいかのう?」

「家では滅多に作りませんな。ただ船は船底と甲板の二段の床を作りますので、出来無い事は無いですぞ」


「台風や地震にも強く出来ようか?」

「船は波に揉まれますので、頑丈に作ります。多少木材を多めに使いますが、可能です」


それよりもと嘉隆殿は図面の壁の部分を指差す。格子状に刻まれている。


「壁の材料は何を使っているのか?」

「粘土や泥を練って焼き固めた直方体デス」

名前を聞くと馴染みの無い物だ。


「焼き固めて積み重ねる建築材とは瓦のようじゃの、練って焼き固めるし煉瓦れんがと名付けようか」

「煉瓦ですか、硬そうで良い響きですな」


形と各辺の長さを記入していく。木枠に泥を入れて形を整えて焼くそうだ。火には強そうじゃ。問題は地震か。


燃焼温度を確認する。

「鉄が溶ける温度でも大丈夫か?」

「ハイ、天日干しでも作れますが、熱を入れた方が硬いネ」


「ただ積み上げるだけか?」

「イエ、間にセメントを塗って固めマス」


「セメントとは何じゃ?」

「石灰石を砕いて粉にして焼いたものだったカト」


「堺かマニラで手に入るか?」

「マニラなら可能でショウ」

ワシはゴンサロに購入予定にセメントも追記させる。もはやワシの側使えとして働いてもらう。


「したがセメントは今回は間に合いそうに無いな、漆喰で代用できそうかの?」

「漆喰を壁に薄く塗るのと石の間に塗るのでは乾くまでの時間が違いましょうな」と嘉隆殿。


「そうじゃな、が漆喰も徐々に固くなっていこう?」

「試してみましょう」


「煉瓦は城壁代わりに使えそうじゃな。地震には城の石垣も崩れるし弱そうじゃが」

「そうですな、枠は木材で組んで薄めの板で取り敢えず

囲って、板の外側に煉瓦を積み上げるが良さそうに思えます」


「試してみるか」

「そうですな。まず形にせねば良し悪しも判りません」


「煉瓦を作ってくれるか?」

「硬くするなら窯が必要デス」


「窯も造れるなら材料代は出すぞ」

「ではシエスタの後にまた買いに行きますネ」

ワシはゴンサロも同行させることにする。

買い出し関連もゴンサロを絡ませるが良かろう。


「では細かい話はシエスタの後にしようぞ、嘉隆殿」

シエスタとは何か聞いてくるので由来を教える。

暫く(20分ほど)寝て、またパティオの図面を見る。木造とどう組み合わせるかも嘉隆殿と話し合う。


梁を壁から少し突き出して、そこで煉瓦と支え合う様に

組み合わせてはと提案される。


煉瓦壁自体は厚さ1尺(30cm)ほどで、壁の高さに比べ薄くなろうし、支えとなる物が必要だろうとの事だ。


「そうじゃな、煉瓦壁の上部に鉤爪でも掛けられて引き倒されるようでは、防壁の意味がないでな」

「台風・火・強盗に強いのは心強いですな」


「そのことよ、船を量産した後の事は聞いておるか?」

「各地に交易路を作っていくと」


「ウム、その際に最初に港側に倉庫と宿舎と政所を兼ねた建物が必要と思うておったのじゃ」

「強い建物があれば心強いですな」


「船が点を結ぶ線ならば、点となるが拠点であろう。線も点も頑丈であるべきと思うておる。その見本となるような物を作って頂きたい。嘉隆殿に依る所は大きいぞ」


「なんとも気持ちの大きくなる話ですな!」

「そうであろう。が嘉隆殿の配下の者にも同じ様に思って貰わねば話は進まんであろう。帰りに甘い菓子を持たせるで主だった配下に配るが良いぞ」


「それは有り難い。形が大事と言う事ですな」

「そうじゃな」

料理班に午後はビスケットを大量に焼くよう伝える。


嘉隆殿は渡された鉛筆で、2階立ての図面に柱や梁をどう建てるか描き込んで行く。


セメントの原料である石灰石は国内で唯一自給できる資源。スペイン語で cemento 。

漆喰も石灰石を使い、呼吸する様に徐々に固まる。

違いは漆喰が空気中の二酸化炭素と反応し、セメントは水と反応して固まる。セメントの方が固まるのは速い。

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