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出航前準備

「次に会えるのは来年かの?」

「そうですネ。またすぐ会えますヨ」


「そうだな。ではこちらで雇う船員は大広間に寄越してくれ」

「ハイ、よろしくお願いしマス」

船団長の部屋を皆で退出し広間へ向かう。


「上様はビクトルとは何度か会ったことが有るのですか?」

「そうだな。余の元で水軍の大将をせぬかと誘ったのだが、柵や契約が有るとかで実現はせなんだがの」


「左様でしたか。上様の方で船の手当は考えてたのですな」

「そこは信盛に先を越されたの」


「石山包囲で5年堺の側で海の監視もしておりましたし」


(信盛は石山包囲網を突破しようとする毛利方の水軍と織田水軍が瀬戸内海の覇権を争う様を直に目撃している。

特に1576年の第一次木津川口海戦で毛利水軍の焙烙火矢に大敗した際は、詳細に報告書を信長に上げている。

1577年の第二次木津川口海戦は前回の敗因を踏まえ、大船に鉄板を張り燃えにくくし大砲を搭載して織田家が火力で押し勝った。

5年の長きに渡って堺の周りの陸と海を監視していた経験は、堺の代官である有閑殿を除けば織田家中で最も信盛に帆船へ興味を持たせるに至った)


「そうであったの」



広間に戻ると船長と航海士他追加の7人も含めて船員達が揃っていた。


「人数も増えたで改めて言おう。信盛の元で日本の為に働いてくれ。短期で稼いで帰るのも止めぬが、永く留まってくれる者には嫁も金も用意しよう。日本の水軍衆に船の扱い方を伝え一緒に働いてくれ」

「ハハッ!」


「ではワシの方から後から入った者に、今月残り分の給与を払っておこうかの」


追加の船員に金と業務報告書も渡す。何か役に立つ物があれば明日買い取るとも伝える。


さて船長と航海士だが、カルロスに聞いていた相場の1.5倍を提示し、充分かを確認する。満足のようだ。

2人にはマニラへ乗客として向かい、購入する船を操船して戻る様に伝えた。またマニラで船員の募集も頼む。


その内マニラに向かう者をまとめて上様から説明をするので2人もそちらに入るように伝える。


船団長と総督から現地で金を借り船を購入する。その金で船員を集め商品を買い、給料もそこから出るなど説明しているようだ。


上様がマニラ組に説明している間に、ワシはゴンサロを

探す。「ゴンサロ!」と呼ぶと小太りの男が目の前に立つ。


次通殿に通詞をしてもらう。どの程度会計について知っているか確認する。カルロスに付いてその手伝いをしていたそうだ。一通りの流れは分かると。


マニラにはカルロスが行き、ゴンサロには会計の基礎を

教えてもらおう。次通殿達にも覚えてもらおう。役割は分散させねば。


引き揚げにも陰ながら関わるし、船員達もワシが当面預かることになる。そこに会計もとなると手一杯かも知れぬ。地球儀の事もあるしな。まぁやりながら、手近に居る者に助けてもらうがよかろう。


上様はと見ると一通り説明した後は、マニラ組の者に任せている。宗薫殿がそれぞれの役割を割り振って行くだろう。


手隙の上様に確認する。いつまで堺に居られるのかと。

「船を引き揚げるまで居るぞ。そう言えば信盛への月々の手当は船員分も加わるのであったな。加増しておくで、以後は月末に有閑から受け取るように」


「了解しました。引き揚げは明日から始めますか?」

「そうだな。船団が出てからの方が周りを広く使えて良いじゃろう」


スルスルと助介が近寄ってくる。

「準備は完了にて、いつでも始められまする」

「良かろう、明日の午前の内に船団は出発する。その後に始めよう。その間に信盛は次通兄弟と船員達の方を上手く使ってくれ」


「分かりました。船員たちから買い上げた物を見ていかれますか?」

「うむ、見ようぞ」


次通殿達が買い取ったものを机に並べる。業務報告書や

名簿一覧の写しもある。名簿は上様に1通渡している。


「本が色々あるな。あーこれは安土で翻訳しているから

こちらでやる必要は無いな」

ワシはすかさず鉛筆を渡す。受け取った上様が被っている本にレ点を付けていく。半分ほどが被っているという所か。


「これなどは綱の結び方や帆の張り方が書いておるぞ」

見ると綱の結び順などが挿絵として入っている。

「次通殿、これを優先して翻訳して貰えんか?特に挿絵の周りを先にな。直接行の合間に日本語を書いていくが良い」


地図も見ていく。

「この中ではこれが一番新しい物じゃな。使うが良い。

古いのはこちらで引き取って追加分を書き加えておく」

受け取った地図を確かめていく。アルファベットで書かれていて読めない。地図を読むためにもアルファベットだけでも覚えるか。


「それにしても信盛、買い取ったは良いがまだ中は確かめて居らんかったようだな」

「買ったのが今朝で、その後は地球儀の発注に向かって居りました」


「地球儀か、良い物が出来そうか?」

「半球の金型を10個分の代金で1個作る様に伝えました」


「なるほど、出来ると良いな」

「ハッ、所で上様は引き揚げた後の日本人の船大工と船員は、どこを充てる予定ですか?」


「九鬼嘉隆が堺におるで奴を考えておる」

「塩飽水軍や水野水軍、津島衆や熱田衆も加えては如何

でしょう?各地の技術を集めるが良いかと」


「まとめるのが大変そうじゃの。まぁ考えておこう」

「出島に関しては如何でしょう?」


「堺の海側に使ってない土地があろう。そちらを有閑に任せて作ろうと考えておる」


「了解しました、船員達の宿舎も有りますしな」

「当面は借宿じゃな」


そんなこんなで夜は更けていく。

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