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地球儀の複製依頼

信栄と久通殿と守人には船員たちと一緒に過ごさせて、顔なじみにさせておく。通詞2人には船員の業務報告書の翻訳を頼む。



カルロス達と別れ、ワシは一旦屋敷の部屋に戻る。助介が書状を認めている。


「助介、職人の所へ行くが誰か同行してくれんか?」

地球儀を取り出し風呂敷に包みながら聞く。

「それでしたら拙者が同行しまする」

書状を書き上げて配下に渡した助介が応える。

「そうか、では頼む」

助介ともう一人が同行する。



以前に複製を頼んだ職人宅へ向かう。屋敷からも近い。

「福助、また仕事を頼みに来た」

「へい、どちらさん?」

戸を開けて福助が顔を出す。


「以前に地球儀の複製を1個頼んだじゃろ?」

「へ?あの、顔や姿がだいぶ違うようですが」

やはり戸惑っている。


「半年ほど山で修行や断食しておっての。最近ゴタゴタも片付いて戻ってきたのよ」

ワシは持って来た包みから地球儀の一部を見せた。


「これが本物の地球儀よ、今度は貴人に贈るでな。全く同じに作って欲しいのじゃ」

「これが……まぁ立ち話もなんですから、中に入って下せぇ。ちと散らかっていて申し訳ないですが」


「なに、構わん。では上がらせてもらうぞ」

皆で入る。様々な種類の紙が色とりどりに棚に重なって

いる。4人で車座になり、真ん中に地球儀を置く。


「こちら触っても宜しいか?」

「勿論じゃ。必要なら分解しても良いぞ」

「では失礼して、これは本当に丸いですな!」


「そうであろう。で表面を軽く叩いてみよ。紙を重ね貼りしているように感じぬか?」

コン・コン・コン

「確かに中空で軽い。叩いても凹まぬほどの紙の厚さと

硬さが有りますな」


「ウム、前は取り敢えず竹ひごで球を作って、紙を貼って貰ったな。ただ少し紙が薄くて凹んだな」

「なるほど、このような形にしたかったのですな。竹ひごで球を作っても歪みが出ましょうな」


「ウム、そこで完全な球を紙だけで作るには、如何にすれば良いと思う?」

「そうですな、金型で真球を作りそこに紙を貼りあわせていく事になりますかな」


「そうか。で真球を作れる職人に伝手は有か?」

「腕の良いのが居りますじゃ。が値が張りそうで」


「ウム、それじゃがの、これを1年程で百個作って欲しい。まず十個分の金額がこちらになる。これで道具を揃えて1個だけ作ってみてくれんかの?」

ゴトリと銭を置く。一家が数年暮らせる銭。

ゴクリと福助の喉が鳴る。

「やらせて頂きますじゃ!」


「ウム、福助に家族は居るか?」

「嫁と息子が2人ですじゃ」


「金型は寸法だけ伝えれば作れそうかの?」

「出来るかと」


「手で触って凸凹が感じられぬ程に仕上げて欲しい」

「何度か修正が必要になりそうじゃ」


「ウム、そこは時間と金を掛けても構わん。金型ができ

れば、後は家族だけで出来そうか?」

コクコクと頷く福助。


「まず1個できたら次の金も渡そう。だが先ずは金型よな。金型が出来たら見に来よう。何日掛かる?」

「まずは15日ほどかと」


「ではその時こちらの者達が確かめに来よう。助介たちは地球儀の感触を確認しておけ」

「ハッ」と助介たちがソっと撫で回す。


「それと木枠じゃがな」

と言って助介から地球儀を受け取り、球を挟み込む木枠の上側を少し上に引っ張る。球は木枠から外れる。


「ほれ、球の両端に穴があろう?それを木枠の内側に小指の先程の爪がついていて、それで支えて居るのじゃ」

「なるほどですじゃ。中空の紙球で軽いから細い木枠で支えられるのですな」

そう言いつつ、福助は穴の断面を見ている。厚みを確認して居るのだろう。


「その木枠と台も複製して欲しい」

「伝手は有ります。簡単そうで問題無しじゃ」


「先に球の採寸をしてくれるか?木枠は置いて行くが球は高価でな、一度持ち帰る。盗まれたら大変じゃろ?」

コクコクと頷く福助。2本の差金を使って直径を入念に測る。球を縦や横にして何度も測り書き付ける。同じ数値が出ている。


「で金型と木枠が上手く出来たら、いよいよ地球儀の複製じゃ。以後地球儀の作成は福助に任せよう」

「有り難いことですじゃ」


「泥棒に眼を付けられたら大変じゃで、金はしっかと隠しておけよ」

慌てて広げられていた銭を布に包み直す福助。


「で以後は地球儀専門でやってもらえるか?」

「承知ですじゃ!」


「ではまず金型と木枠じゃな。今から頼みに行けるか?

結構な大金じゃで護衛も一人つけようぞ」


「いけます。護衛は助かりますじゃ」

「では動こうか。助介、しっかり守ってやってくれ」

「ハッ」と言いつつ助介は配下に目をやる。配下が頷く。

助介が地球儀を包んだ風呂敷を持ち、ワシらは屋敷へ戻る。


門番には顔を覚えられたようで、軽く頷き返され門を通される。


部屋へ入るともう昼を大分過ぎて夕刻近い。軽く食べられる物を頼むと助介が握り飯を持ってくる。


2人して頬張り平らげ、茶を飲みつつ助介に引き揚げ準備の事などを確認する。直ぐにでも動けるとのことに安堵していると、

「助介殿、居られますか? 」

「何かあったか?」

「政所に上様が来られました!信盛殿にも来るようにと」


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