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甲賀衆の方針と親子合流

翌朝、堺の屋敷より助介の配下が高野山へ向かった。カステラを1本持たせている。



屋敷の代官に銭は断られたので、カステラを1本渡す。上様から下されたと言うとスンナリと受け取ってもらえた。皆に分けてくれと伝える。

口止め料として役に立ってくれるだろう。



妙覚寺から甲賀衆の惣にカステラと密命を持って向かった者は、もう到着して上手く話を進めているであろうか?


助介も一度惣に戻って話してくると出て行った。甲賀衆の今後に関わる話ゆえ、慎重に進めたいのだろう。



数日待つ間に、ワシの旧屋敷からの荷物が届き始める。

布団や茶器もあって貴人の来客にも対応出来る。



更に数日して助介たちが戻ってきた。惣での会合だが国外での活動に否定的な意見も出たが、大凡おおよそは受け入れられた。

不利よりも、織田政権内での情報部門の中核に食い込める利を見込んだようだ。


エウロパ人との結婚は余りに多数は困るが、少しの希望者なら問題ないだろうと結論がでた。

希望者も10人ほど出たので、読み書き計算が出来るものから選抜されるだろう。


「村の方は順調のようだの」

「やはりカステラの威力は絶大でござる」


「一度甘みを覚えると次も欲しくなろうな」

「左様にござる」


「さて、船の方だが穴を開ける手立てはついたか?」

「大凡決まりましてござる」


小舟に衝角を付けてぶつける案も有ったが、見送られた。小舟では軽すぎて穴が開かず、穴が開けられるほどに大きくては発見されてしまう。


他に火薬やノミで穴を開けるなども試したが、それぞれ音の問題や水中では力が伝わらぬ等の懸念が残った。

地道だが少しずつ穴を拡げる方法を採用する。


「水中で動ける者10名で交代で行いまする」

「必要な物は揃っているか?」


「揃ってござる。後は台風待ちにて」

「ではそれまでは手順を実際に確認するのだ」

「ハッ」



さて曇ったり晴れたりいつ台風が来るか、とヤキモキしていると先に信栄たちがやって来た。

一室にて久しぶりの親子対面である。


「父上、ご無事で何よりで御座います」

「ウム、信栄にも苦労を掛けたな。これからは世間に口外出来ぬが、影より上様のお手伝いをすることになった。信栄にも助けて欲しいのじゃ」


「和解が成ったのは本当の事だったのですね」

「あぁ、本当じゃ。詳細はあとで話そう」


ここで追放からワシら親子に最後まで付き従ってくれた、ただ一人の従者・弥助に声を掛ける。


「弥助よ、これまでよく従ってくれた。感謝しておる。これからは影働きが多くなるが、付き合ってくれるか?」

「この命尽きるまで付き従いまする!」


弥助には佐久間家と縁者の連絡に動いてもらうことになろう。歳は信栄と同じ24である。

「何はともあれご苦労であった」


そこで助介に酒と鍋と湯に入るための薪を入手してもらうように銭を多めに渡す。囲炉裏で残りのカステラを串に挿して炙る。


助介の配下で村に戻らずこちらに居た者はきっと、カステラを食べていないだろう。


その者達にも少しづつではあるが配る。かび臭くもなかったし念の為炙ってあるから腹を壊す心配もなかろう。


助介が串を何本か隣の部屋に持って行く。こんな旨い物喰ったことがないなど聞こえて来る。

砂糖のためにも、まずは船取りに気持ちが向いてもらえれば安いものである。


ワシや信栄、弥助に助介もカステラ串焼きに舌鼓したづつみを打つ。



「して、高野山の管長は納得してくれたかの?」

「上様と父上の書状だけでは半信半疑でしたが、銭とカステラが効いたようです」


「坊主も甘いものには眼が無いという所かの」

「事情を知るべき上位の者達だけで平らげてました」


「身代わりの者には礼は渡したであろうな?」

「口止めも含めてたっぷりと」


坊っちゃん育ちだからだろうか、信栄は金離れが良い。

後腐れなく済まそうとするのはワシ譲りと言う所か。


その後沸かした湯に各々浸かり、旅のほこりを落とした4人で鍋をつついて酒を飲み交わした。


ワシからはこれまで有ったことを掻い摘んで説明し、これからなすことを2人に伝える。


とはいえワシ程には人相が変わってない信栄には外出は控えめで連絡取りまとめをやってもらう。


助介の配下も湯を使い、順番に鍋と酒を頂いたようだ。



夜も更けて、風が吹き湿気を帯びてきた。

・・・

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