特許期限と祭りとエウロパ事情
「硝石の話で出た製法の買い取りですが」
「上手く行くと良いと思っておるぞ」
「ハッ、ただ硝石以外でも良き製法や新しき考えを持つ者にも、特許を与えては如何でしょう?」
「特許の範囲はどれほどにする?」
「新製法の考案者には製造の独占権を。ただし子々孫々ではなく、軍事に関することは国が買い取るか50年ほどにし、生活に役に立つ物ほど短めに20年ほどで如何でしょう?」
(※古代ローマでも1年の特許はあった。イタリアのヴェネツィアで1421年に与えられたのが近代特許制度の始まりとされる。その後特許の自由開放されるまでの期間は延びていく)
「生産者の保護と、一定年数の後に製法の公開か。民の生活が楽になりそうじゃな」
「はい。それと仕組みは考えたものの、銭の無い者も居りましょう。そちらは織田家が買い取るか資金提供するというのはどうでしょう?」
「資金提供か、金利は如何程を考える?」
「年1割か、信用が置け有用な仕組みなら半分の5厘(5%)で如何でしょう?」
「実施は統一後になろう。20年とは良いのう。永代にすると後々厄介であるしな」
「領地がそうですな、最初に荒れ地から切り拓いた者には然るべき年月、権利の保護がなされるべきとは思いますが」
「寺領が厄介ということか」
「はい。ですが厳しくし過ぎますと反発が有りますので、政から切り離し領民が楽しめる祭を行う権利を渡しては如何でしょう?」
「祭の権利か、良かろう。だがその際は神社が有利となろうな。寺の坊主は来世やら地獄の恐怖で民を縛っておるからな」
「そこはエウロパのキリスト教も同じ様でございますな。現世の罪を贖う免罪符なる物を教会自ら売って非難が集まり、教会が割れたそうです。
反発した衆が集まって国を作りスペインから独立戦争を行っている最中とか」
(※この当時のオランダの状況は王族間の継承で、飛び地ながらネーデルラントがスペインの支配下に。
が免罪符を契機に反発する新教派がネーデルラントで増えて、旧教派のスペイン王に対し反乱を起こす。
1568-1648年 八十年戦争で独立は承認される。
1600年 オランダ船、日本に漂着。
1602年 オランダ東インド会社設立。
1602-1663年 ポルトガルとの戦争で勝利
1609年 スペインとの12年停戦協定 )
「それも船員から聞いたか?」
「はい。船員達に熱心な信者は少ないようにて。教会を恐れるが距離は有るように見えます」
「エウロパも一枚岩では無いという所か。そこら辺の事情をもそっと聞きたいの」
「可能であれば引き込みまする」
(※スペイン関連
1581年 スペイン王がポルトガル王を兼ねる同君連合成立
1588年夏 アルマダの海戦で連合はイギリス艦隊に敗北)
「うむ、頼むぞ、キリストが生まれて今年で西暦1580年であったか。千年以上も経てば、いかな金科玉条も腐り果てるは古今東西同じよな」
「諸行無常ですな」
「余の台詞を奪うでないぞ。が寺院側が己が不利と察せば祭りに反対するやもな」
「対策は考えておきまする」




