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金平糖と和解

襖が開いて小皿を受け取った助介が、3人の間にそっと置く。折りたたまれて小さくなった半紙を広げるとツブツブが幾つか並んでる。金平糖である。


「信盛、お前の言うてた金平糖は保存が効くとの話よ、10年ほど前のが残っておったでな、試してみたのじゃ。

昨晩小姓に1粒食べさせたらさっきも元気でな、腹も壊さんようだな。これが10年前の金平糖よ」


元服前の悪餓鬼の頃を思い出させる笑顔で差し出してくる。助介もコロコロと口の中で転がしている。

言い出しっぺでもあるし、食うてみる。

「フム、甘さも味もあまり変わっておりませんな。それにしても良く残して居られましたな。最初に献上された時は皆に全て分け与えたと覚えてますが」


「おう、気に入ったのでな、追加で注文出していたらな、余が甘い物好きと知れ渡ったようでな。南蛮人共、いやエウロパ人であったな、次々と甘い菓子を持って来て、これがまた旨くてな。

そうなると甘みの強すぎる金平糖はすっかり忘れておったのよ。で京の蔵にあったのを取り寄せたのじゃ」


夜の間に取り寄せるとは、よっぽど気になったらしい。

「何事も実際に見て聞いて試す、上様らしさにお変わりありませんな」


「おう、20・30・40・50年後まで試すためにも残してあるでな、信忠にも引き継ぐ話しよ」

「気の長いお話ですな、所でワシの放り投げた領地の引き継ぎは、順調でしょうか?」


「ピンハネも無かったし、お主の置いて行ったモノも査収済み、問題なしじゃ」

「左様ですか、確かめられてホッと安堵しております」


「済まなんだの、色々と疑ってしもうて」

「いえ、細かく報告上げなかったワシにも落ち度は有りますので」


「秀吉なら同じことをやったら、10倍大げさに報告しておる所よ。お主は領地に未練はないのか?」

「はい、もはや望みません」


「そうか、面倒な地を預けて悪かったの。引き継いだ者が言うておったぞ。

1国でも面倒なのに、全てに細かく対応してくれておったようじゃの。方々にだしたお前の調停の書状をみたぞ」

「後々大事になるのが嫌だっただけにて」


「であるか、天下統一後には大規模に分散した領地をまとめ、諸大名の減封げんぽうと領地替えも行う予定じゃ。その時2人の名誉挽回をするが、同時にそれ迄の礼をする。秀貞は何を望む?」

「某は息子に小さいながらも領地を頂きたく。温泉などがあると良いですのぅ」と言って自分の腰を叩く。


「温泉地か、考えておこう。で信盛はどうじゃ?」

「ワシは船を欲しいです」


「帆船か、良いがまず織田水軍に10隻揃ってからになるぞ、1隻でよいか?」

「はい」


「息子はどうする?」

「ワシの手伝いをさせた後、本人が望むなら若様に付けて頂きたく存じます」


「分かった。秀貞も同じでよいか?」

「有り難き幸せです」


「では先々の恩賞はそれで良いとして、まずは船じゃな」

「上様の方で入手出来そうですか?」


「1年後なら当てはあるが、急ぎたいぞ。方面軍を待たせすぎるのも良くないでな」

「そうですな。こちらが調略を仕掛けるなら、相手も当然行うと考えたほうが良いでしょう」


「現役でもないそなたらに各大名家が勧誘に来てる以上、他にも動いてそうだな」

「間違いないかと。所で上様との会見はまだ先と思っておりましたが、何かありましたか?」


「2人は泳がせておいて、大名共が食いついて来たら逆に引っ掛けようと思っておったが、2人ともすぐ断ってしまったろう?

それに昨晩の報告書を読んでな、どえらい事を考えていたからな。他の大名に身柄を確保されても大変だし、計画を実行するにも今から動かにゃならんじゃろ?

それならさっさと話を摺りあわせたが良いと思ったまでよ」

「分かりました、で帆船ですが、助介、沈める手立てはあるか?」

「幾つか思いつきましたが、ばれにくい手立てから試していく予定でござる」


「別の場所で和船で出来る事を確認してから実施すると良いぞ」

「承知にござる」


「では沈めた後どう動くかだな」

「はい、まずは船主にどうするかを尋ね、捨てて行くというなら買い取りましょう。それから引き揚げですが……」

ワシは必要な人数と資材を述べる。


「後は風待ちというのがもどかしい所です」

「運を天にまかせてじゃな、引き揚げとその後の解体と組み立ては余も準備する。他に今から動いたほうが良いことは有るか?」

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