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別れ02
酷い頭痛がしていた。
娘の無残な姿があちこちに散らばっている。
魔法使いは混乱する頭で魔物の言葉を整理し、ようやく理解した。
「つまり、お前たちは、私の娘をたべたかったんだ、な?」
少女が魔物を恐れていたのは。
羽の魔物が名を禁じて欲しいと言って来たのは。
『はい。ご安心下さい残したりはしませんよ』
獣の魔物がそう答えた瞬間、その身が爆ぜた。
詠唱はなかった。魔法使いはただ消えろと呟いただけだった。
散る血飛沫の中を躊躇いなく進み、魔法使いは愛おしげに娘だった肉塊を抱き締めた。
「信じてやれずすまなかった」
実の親に捨てられ、
育ての親である魔法使いに信じて貰えず、
たったひとりで恐怖と痛みの中死んでいった哀れな、ちいさないのち。
魔法使いはひとかけらも残さずに肉片骨片を集め、持ち帰った。
そして大事に大事に再生させた
そうして出来た魂の無い空の器に、彼女の人格を模した核を入れた。
目を覚ました少女だったモノと魔法使いは今も、森の奥で幸せに暮らしている。
END
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