別れ01
残酷なシーンがありますので、苦手な方はご回避ください。
『父さん助けて』
遠く届いた娘の声に、魔法使いは弾かれたように外へと駆けた。
娘の気配を追うが、しかしどこにも見つけられない。
まさか、まさか、と最悪の可能性を否定する。
現実だとわかっていても。理解する事を頭が拒否していた。
視界が開けた。いつもの薬草が生えている場所だった。
転がるかご。それは血に濡れていた。
間違いなく少女の物。
そして響いている耳障りな咀嚼音。
「ああ……」
もはや手遅れなのだと、じわりじわりと、現実が染み込む。
絶望と共に漏れた声に、何かを食べる魔物は何かをくわえたまま振り返った。
『おや、主さま。失礼しました、食事中だったもので』
「私の子を喰ったのか」
獣の姿を持つ魔物は、大きな目をきょとんと丸めた。
『はい。主さまの決めた取り決めです。弱い者は喰われても仕方ないと』
「私の子を守れと、命じていたな?」
『はい。今まではそう、主さまの加護がありましたが、今日の餌は何も言いませんでした。これはお捨てになったのでしょう?』
「どういう意味だ」
『我らは主さまの命に従います。ですので、魔法使いの娘だとこれが言えば、我らはこれを守っておりました』
「……なにをいっているんだ」
次回最終回です。別れのところまで、で終わらせようと思います。もし最後のシーンがお気になられるようでしたら、ノベルゲームをプレイしてみてくださいませ。*ノベルゲームコレクションさんで、インストール無しでもプレイ可能です。