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親と子03
「え?」
「私の名を使うことを禁じる、と言ったんだ」
夕食を食べ終わった頃、魔法使いは魔物との約束通り、名を使う事を禁じると少女に伝えた。
「どうして?」
「森で分別なく使ったりしてはいないか?」
「だって魔物が怖いから」
「私の創った物達だ。怖くともお前を襲ったりはしないさ」
誤解はあるのかも知れないが、森で名を使っているのは確からしいと、少女の言葉から判断した魔法使いはいいね、使ってはいけないよと念を押した。
少女は不安そうだったが、それでも育ての親の言葉に頷いた。
「いい子だ。大丈夫、魔物には私とお前を襲わないように命じてある」
「うん……」
――どうして使うのか、どんなふうに魔物が怖いのか、それをきちんと問うていれば、或いは後の悲劇は防げたかも知れない。
けれど魔物も娘も信じる魔法使いには、そんな選択肢は浮かびさえしなかった。