親と子01
少女と魔法使いが暮らし始めて数年が経った。
魔法使いは少女に文字や裁縫や料理を教え、最近は薬学を教えていた。
年月とは不思議なものだと、すっかり大きくなった少女を魔法使いはしみじみと眺めた。まさか自分が親の立場を味わえるとは、と。
「なあに、魔法使いさま」
「いいや。大きくなったものだと思ってな」
少女は不思議そうに首を傾げた。
「魔法使いさまは変わらないね」
「私はずいぶん昔に歳をとるのはやめてしまったからな」
そうなの、と特に疑いもせず、少女はかごを手に取った。
「それじゃあ、薬草集めて来るね」
「ああ」
「外は怖いんだけどなあ」
「頑張れ。薬草を見分ける練習になる」
それなら実際に採って来たやつでもいいじゃない、と、少女は小さな駄々をこねた。
魔法使いは苦笑する。
「私がずっと見分けてやるわけにはいくまい?何がどんなところに生えるのか覚えておかないとな」
いつまでもこんな森のなかに居てはいけないと、育った娘を愛おしく眺める。
一人立ちした時に、手に職があれば食うに困らないだろうとの親心から、さあ行きなさいと優しく送り出した。
行ってきます、と少女は出かけて行った。