出会い03
魔法使いの気まぐれは、正しく子どもの――少女の命を救ったのだった。
いつものように香や薬などと日用品を交換する日、訪れた村人に魔法使いは少女の父はどうしているのかと問うた。
返った答えは、人喰いの魔物に食い殺されたとのものだった。
子どもを喰らおうとしていたのにその子どもを捨てたと知れた日に正体を表し、代わりにと喰われたらしい――との事だった。
「実の子を捨てて女に走った結果がそれか」
吐き捨てる魔法使いの台詞に、訪れていた初老の男はどうしてその子どもを知っているのか、と問いかけた。
「私が拾った」
「それは……」
魔法使いに向けられたのは、まるで材料にする気なのかとでも言いたげな、非難を浮かべた目だった。
「お前たちは要らないんだろう。ならば私がどう扱おうが勝手だ」
なんなら連れて帰るかと、魔法使いが言うが男はそれは困るとの返答。
魔法使いは舌打ちし、さっさと帰れと男を追い払った。
魔法使いが小屋へと戻ると、少女は涙を浮かべていた。
この距離では聞こえていたかと、魔法使いにまた少々の苛立ち。
「お前は村に帰りたいのか」
「……」
少女は緩く首を振った。
本当は友もいる村へと帰りたいのだろうと想像はついた。
しかし、誰にも望まれていないのだと理解してしまっている、聡い子どもだった。
「……字は、かけるか」
「ううん」
「では教えてやる。ここに居るなら私の役に立て」
少女がここに来て早数日。
暇を持て余していた少女は、やる事が出来た事に素直に喜び頷いたのだった。