出会い02
暖炉の傍に座らされた子どもは、いくぶんか落ち着きを取り戻したようだった。
目は室内を物珍しげに見回している。
魔法使いはため息混じりにカップを差し出した。
「飲め」
「あ、ありがとう……」
子どもがおそるおそる口をつけたそれは、甘い果実の絞り汁だった。
のどが渇いていたのか、子どもは一気に飲み干してしまった。
「それで?どうしてここまで来たんだ」
「ええと」
魔法使いの問いに、現状を思い出したのか子どもはまた涙ぐんだ。
しかし、今度はそれをぐっと堪え、
――捨てられたの、と呟いた。
「どういう事だ。村は口減らしをする程飢えてはいないだろう」
「おかあさんがしんじゃったの。そしたら、おとうさんがおまえはいらないから……森にいけって」
「魔物避けの香はどうして持っていた」
それがなければここまで無事だった筈がない。
「のこりすくないのはすてられるから、きれいだから、ひろってたの」
なる程、子どもならではの理由が命を救ったらしい。
しかし、と魔法使いは思案する。
このまま村へと帰すつもりだったが、帰したところで帰る場所というのがこの子どもには無い、と。
自分には関係ない、と戻したところでこの子の未来は無いだろう。
そう理解する魔法使いは、ひとりで生きていけるまでくらいなら、と。
「行く宛が無いなら、暫くここに居るか?」
渋々、問いかけたのだった。