出会い01
とある森に、人間嫌いの魔法使いが住んでいた。
魔法使いは森に自らが創り出した魔物を放ち、誰にも邪魔されず平和に過ごしていた。
そんなある日、小屋の外から子どもの泣き声が届いた。
「魔物避けの香を持っているな……?」
窓から外を覗けば、幼い子どもがそこを泣きながら歩いている。手には欠片となった魔物避け。
魔法使いが近くの村に提供している物だった。定期的に日用品と交換している物だったが、その遣いにしては幼すぎる人間だった。
「……仕方ないな」
全ての魔物に襲うなと命じるのは面倒で、魔法使いは渋々外に出た。
子どもは魔法使いを目にとめると、驚いたように目を見開いた。
「た、食べないで」
「何を言っているんだ」
保護が必要かと外に出てみればこれだ、と魔法使いは苦く呟いた。
彼の人間嫌いは何度も裏切りに遭って来たからであったが、今は人間自体に嫌悪感がある。
村人であっても、利用してやろうという輩は何度も言い寄って来ていた。
今回は目にしたのが子どもであった為、例外的な行為だ。
「迷子なのか?まさか、村の遣いではないだろう?」
「まいごだけど……おうちには、かえっちゃだめだから」
しゃくりあげて泣く子どもに舌打ちし、魔法使いはとりあえず小屋へと招き入れたのだった。