幻想的な
「…とりあえず家に行きます。ついてくるのならついてきて下さい」
「ついていきます行かせてください」
ルイスの辛辣な言葉に即答で返す蓮。早足のルイスはズカズカと道を進む。ルイスの方が幾らばかりか小さいが、どこか自分より大きく見える。
前を行くルイスを追って、木々がざわめく森を駆け足で走った。
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「……ここが家か?」
「そうですけど。何ですか。珍しいものでもありませんよ」
「いやいやいや……えぇ?」
目も前に在るのは確かに家である。何処からどう見ても。驚いたのは家ではない、環境だ。まるで本当の御伽噺のような、そんな空間を目の前に、蓮は呆然と突っ立っていた。
大森林の中に一部だけ、円状に広々と広がる芝生。前の世界では見たこともない美しい蝶と、風が吹くたびに桜と似たような植物や咲き乱れる花の花びらが舞う。森林の中とは違い、光が眩しいほどに差し込んでいる。この広い空間の中央に聳え立つ大きな大きな大木の下にある家。美しい、という言葉以外当てはまらないような空間。
この世界ではこんな空間が当たり前のようにあるのか。
それとも本当に此処だけが特別なのか。
ルイスの着ている服も、コスプレなどではなくその服を着なければならない理由があるのだろうか。
と様々な思考が巡る。蓮はもとより頭はいいほうであるが、ヒントが少なすぎるため自分に問いかけた質問に回答が出ない。
本当に右も左も分からない世界に来てしまったのだ、と改めて実感した。
「本当に何も知らないのですね。とりあえず、呆気に取られてそこに突っ立ってないで家に入って下さい。一からお話しますよ」
「あ、ああ。頼む」
立ち止まっていた場所からまた歩き出すと、段々と現実味をおびてきた。
この吹く風も、足元にあたる草も、全て今此処にあるものなのだ、と。
ドアを開け家の中に入ると、生活感のない部屋に驚く蓮。
「何でこんなに私物が少ないんだ?テレビとかの機械類が無いのはまぁ分かるが、それにしても少なすぎるだろ。スッカラカンだ」
「その、てれび、とやらが何か分かりませんが、私には特に必要ないのでいらないですよ」
「そう」
「とりあえず座ってください。お茶を持ってきます」
「ありがとな」
ルイスの言葉に甘え、リビングであろう場所にある椅子に座った。もう一度周りを見るが本当に間にも無い。家が木で作られているので、少しばかりかましなように見えるが、あるのは本や資料のようなものと棚ぐらい。他にも少しはあるが普通の家と比べてればとても少ないといえる。
ましてや17ほどの歳なら人形やら化粧道具やらがあってもいいはずだ。まったく見当たらない。
そして、この生活感のない家にもつ疑問がもう一つ。この家に来るまでもそうだったが
【何故ルイス以外の人に遭遇しない?】
「なぁルィ…」
「大丈夫ですよ。大方疑問に思っていることは分かります。それも含めて、この世界についてお話しましょう」
キッチンのほうへ振り返って、自問した疑問点をルイスに問おうとしたら、マグカップとお菓子を持ってきたルイス本人に遮られた。
・・・
「これから話すのは美しかった世界の歴史です」
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