目覚めと出会い
目を開けると、突きつけられた槍。この状況に、普通の人間ならば恐怖するか、何かしらの反応を見せる。
しかし、蓮はこれまで過酷な生活を送ってきた為か、怖くもなんとも無かった。代わりに抱いた気持ちは、「は?」という一言と、ここが何処なのか。何故自分は槍を突きつけられているのか。という疑問。その二つだ。
一見、普通の森の様なところだが、見たこともない生き物がふよふよと浮いている。それに、蓮に向かって槍を突きつけている彼女の格好も、現実では考えられないような姿だ。
何かの撮影……?それにしてはカメラみたいなものは見えないし……と、蓮は考えを精一杯頭に巡らせた。
何より、彼女の必死そうな形相は演技のようには見えなかったのでドッキリ等ではないというのは明確だった。
自分は敵ではない。ということを証明するためにも何かを言わなければ、言葉を発さなければならない。
今、この状況で。女が、木を背にして座り込んだ蓮に槍を突きつけているこの状況で何を言うか、どんな行動を起こすか必死に考えた結果、蓮は素朴な疑問を彼女に尋ねることにした。
「あの、さ……ここ、何処?」
「はい……?」
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拍子が抜けたように、彼女が声を出す。
しばらく沈黙が続いた後、彼女は蓮に悪意や敵意が無いことを察して槍を下ろし、ため息を吐いた。
「ここは私の森。貴方、ここの木にもたれかかって寝ていたんです。どうやってこの森に入ったんですか……?」
「……この森に入った?」
「そうです。この森には私以外誰も入れないように結界が張ってあります。その結界はこの世界に住む誰にも敗れないほど強力なもの。なのに貴方は堂々とここで寝ている……怪しいにも程があります。どういうことですか」
「いや……なんというか……」
質問で返される。どうやって入ったかなど蓮にも当然分からず、返す言葉に手間取った。
自分自身、死んだと思ったら生きていて、気がついたら変な世界の謎の森にいて、目の前に女性に槍を突きつけられていたのだ。知らないものを答えることは到底できなかった。
「俺にも分かんなくて、気がついたらここに……」
「分からない?自分で入ったわけでは無いと?」
「そうですハイ」
「はぁ?」
蓮の目の前に立つ彼女はまたも「こいつなに言ってんだ?」というように顔をゆがませた。
すると、蓮のお腹からぐぅっという音が鳴り、目の前の彼女はまたため息をついた。
「とりあえず、話くらいは聞いてあげます。敵意は無さそうですし、お腹すいているんでしょう?それに見たとこのない身なりですし、私も気になります」
「面目ないデス……」
蓮は、どうぞ。と出された手をとり、立ち上がる。
パッパッと尻についた土をはらうと、さっさと歩いていく彼女の後を駆け足で追った。
長いツヤのある黒髪に、太陽の光で反射するピン。改めて見ると、後姿だけでも夢の世界で出てきた二人の人物の片方にピタリと重なった。
立ち止まり、この沈黙を打ち破るように口を開く。
「なぁ、名前教えてくれないか?」
すると、少し前を歩いた彼女も足を止めた。
そして、さっきと違い、透き通るような落ち着いた声でこう言った。
「ルイス……レファー」




