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プロローグ

最初から最後まで、紅原蓮(こうはられん)の人生は最悪なものだった。


ろくに学校に行かせてもらえず、知識の殆どは捨てられていた本を読み漁って得た知識である。

両親は借金を残して死んでいった。総額【6000万】の借金。何故、こんな借金を背負うことになったのか蓮には検討もつかなかった。そんな多額な借金を返済できるわけも無く、借金取りと鬼ごっこ。もう何ヶ月も着替えていない服には所々穴が開き、黒ずんでいる。全くご飯も食べてないために体は痩せ細り、蓮の腕や足には青黒い痣がいくつも浮かび上がっていた。

しかし、そんな地獄のような逃亡生活も今日で終わるのだ。


紅原蓮は今、フェンスを乗り越えて無人マンションの屋上の端に立っている


この世に絶望したような目で辺りを見ると、今まで育ってきたクソのような町が蓮を嘲笑うかのように綺麗に映し出された。

「こんなに綺麗なところで俺は汚い溝鼠のように生きてきたのか。」蓮がそう考えると、口から自嘲するように、「ハハッ……」という乾いた笑い声が漏れた。


深夜2時。ふわりと暖かくなびく風は彼の色の抜けた髪を揺らし、死の世界に誘うようにやさしく頬をなでた。

その風に体を委ね、背中から後ろ向きに宙に投げ出す。


すると、とたんに何百もの流れ星が蓮の空の上に流れ、体が地面につくと同時に辺りの世界に変わった。


歯車だらけの、ブリキ玩具の中のような空間が目に飛び込む。

歩くことも喋ることも、目を瞑ることもできず、ただただ見るだけ。たくさんの大きな歯車の奥には玉座のような真っ赤な椅子と王冠。そして二つの人影。両方とも背は然程大きくない。片方は長い黒髪、もう片方はセミロングほどの長さの白髪だ。

両方とも、何かを話すと別々の方向へ歩いていく。そしてその二人が見えなくなった瞬間に蓮の意識が朦朧としてきた。


少し経って、蓮がはっと目を開けると目の前には黒髪の、【あの少女】が立っていた。




「貴方、何者?」




鋭い目と、槍を突きつけて。

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