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第222話「氷中の焔」【挿絵あり】

氷上で続く氷と炎の攻防。足元を凍らされたホムラに勝機はあるのか!?

Episode 15: A Blaze in Ice/氷中の焔


「足だけ固めたって、俺は止められないぜ?」


「よく見てみろ。その氷はゆっくりとお前の身体を侵食している。氷が上半身に到達するのも時間の問題だ」


 ホムラの両足を固めている氷は、ゆっくりと彼の身体を包んでいく。それはリリ、ロコ、カルロが黒魔術(グリモア)を使っても破ることの出来なかった頑丈な氷。足だけでなく手まで凍ってしまえば、いよいよホムラに勝ち目はない。


「おっと……燃やしてダメなら叩いてみなってか」


「ハハハハハ!その程度の衝撃で壊れるわけがないだろう!燃やしても叩いても無駄だ!」


 ホムラは1度小太刀で氷を叩いてみるが、当然びくともしない。ホムラを包もうとしている氷には、ヒビひとつ入らない。


 あざ笑うイゴールを前に、ホムラはもう1度小太刀を氷に叩きつける。その瞬間、小太刀は一瞬光に包まれた。再び振るわれた小太刀は、いとも簡単に魔法の氷を崩壊させた。これにより、ホムラは下半身の自由を取り戻す。


「どうだ?驚いただろ」


「ふん、その程度は想定内だ」


 余裕たっぷりなホムラの表情を見て、イゴールの顔には少し焦りの色が見え始めていた。


 イゴールが再びロッドで地面を突くと、今度は先の鋭く尖った無数の氷塊が発生した。無数の鋭利な氷塊は、まるで波のようにホムラに押し寄せる。


 さっきと同じ要領で、ホムラは押し寄せる氷塊を破壊しようと試みるが、今度はそう簡単にはいかなかった。小太刀が氷塊に触れると、刀身はたちまち凍り付いた。イゴールの氷が厄介なのは、触れたものまで凍らせるところだ。


「あー!めんどくせー‼︎」


 ホムラが大きな溜め息をつくと、小太刀の刀身が虹色に輝いた。虹色の輝きに包まれると、刀身を覆っていた氷は綺麗さっぱり無くなった。


「何⁉︎」


 ホムラが虹色に輝く小太刀を振るうと、押し寄せる氷の波はいとも簡単に崩れ去った。

 その光景を信じられなかったイゴールは、何度か同じ攻撃を繰り返すが、ホムラは同じように氷の波を崩壊させるだけ。何度やっても結果は同じだ。


「めんどくせーな。俺に本気を出させないでくれるか?」


「何を⁉︎下劣な海賊風情が、舐めるな‼︎」


 飄々としたホムラの態度が、ついにイゴールに火をつける。熱しにくいイゴールの堪忍袋の緒が切れた。ようやくイゴールは本腰を入れて、ホムラとの戦闘に臨むのだ。


「私を本気にさせたことを後悔させてやる!」


 これまでで最も強い力で、イゴールは氷の大地を突いた。


 すると、轟音とともに巨大な氷柱が立て続けに発生し始めた。氷柱1つひとつは、人1人容易く乗れるほど太い。そんな氷柱が際限なく生え続け、ホムラの視界を覆う。


 イゴールは氷柱の1つに飛び乗った。イゴールを乗せたものも含め、無数の氷柱はぐんぐん背を伸ばしていく。


「ひょえ〜!何する気だ?」


 ホムラが立っている場所からは、すでにイゴールの姿は見えなくなっていた。


 今もなお発生し続ける氷柱のひとつに、ホムラはすぐに飛び乗った。氷の足場を飛び移りながら、ホムラはイゴールの後を追う。


 ホムラの身のこなしは軽く、すぐにイゴールの姿が見えるほどの距離まで追いついた。イゴールは高い場所から、迫って来るホムラを見下ろしている。


「……死ね」


 冷たくそう言い放つと、イゴール・フェブラリーは氷のロッドを頭上に掲げた。


 その瞬間、彼の周りを囲う幾つもの氷柱が粉々に砕けた。粉砕された氷柱は小さな氷の刃へと姿を変えた。その数は、少なく見積もっても数万はある。


 幾万の氷の刃は、雨のようにホムラに降り注ぐ。ホムラの武器はたった1本の小太刀。雨の中傘を差していても足元が濡れることがあるように、氷の雨を無傷でやり過ごすのは不可能に近い。


「そんなんじゃ死なないよ」


「何だと⁉︎」


 ホムラが小太刀を頭上でひと振りすると、彼の頭上を虹色の輝きが覆った。思わず息を呑むほど美しいその輝きは、まるで傘のようにホムラの頭上に留まっている。


 虹色の輝きに突入した氷の雨は、1つ残らず水滴と化し、ただの雨となった。水滴はその後すぐに蒸発し、ホムラの身体を濡らすことはなかった。


「いい加減諦めたらどうだ?」


「ふざけるな‼︎私の黒魔術(グリモア)はまだまだこんなものではない!」


挿絵(By みてみん)


 焦りを隠せなくなってきたイゴールは、氷のロッドを振り回した。一見すると、がむしゃらに振り回しているだけのようにも見えるが、何か考えがあるのだろう。氷の雨に利用されたもの以外にも、大量の氷柱がイゴールの周囲に残っている。


 ロッドが白く輝くと、それに共鳴して周囲の氷柱が一斉に輝き出した。


 すると、氷柱が一瞬にして巨大な氷の龍へと姿を変えた。どう猛な牙を携えた氷龍の口が、ホムラを狙う。3匹の龍はホムラを狙って、次々と襲い掛かった。


「おっと!よっと!」


 立て続けに襲い掛かる氷龍を、ホムラは軽々と避ける。その身のこなしは、海賊ならではのもの。財宝を求めて数え切れないほどの土地に上陸して来たからこそ得られた、強靭な足腰あってこその身のこなし。


「調子に乗るな小僧!」


 軽々と氷龍の猛攻を避け続けるホムラを見て、イゴールは氷龍の数をどんどん増やしていった。

 そのうち、ホムラを狙う氷龍の数は30匹まで増えていた。休む間も与えず、氷龍は立て続けにホムラを襲う。最初は軽々とその猛攻をかわしていたホムラも、次第に息が上がり始めていた。


「今度こそ終わりだ」


「⁉︎」


 これまでのように氷龍の襲撃をかわそうとしたホムラは、氷で足を滑らせて、身体のバランスを崩してしまった。多少なりとも、彼の中で油断があったのだろう。逃げ遅れたホムラは、ついに氷龍の餌食となってしまった。


「まだまだ終わらねーよ、バーカ」


 ホムラは咄嗟に小太刀とその鞘をつっかえ棒代わりにして、何とか氷龍の口元に留まっていた。氷龍の口の中に足を踏み入れてしまってはいるが、まだ呑み込まれたわけではない。

 ホムラは精一杯力を入れて氷龍から食われまいとしているが、小太刀と鞘はすでに氷漬けになり、彼の手まで到達していた。


「いいや、終わりだ」


 それから数秒と経たずに、氷龍は口を閉じた。凍ってしまったことにより、ホムラは両手に力を入れられなくなったのだ。

 これまで簡単にイゴールの氷を打ち破ってきたホムラが氷龍に呑み込まれた。氷龍の黒魔術(グリモア)は、イゴールの奥義なのだろうか……

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


ホムラはイゴールの黒魔術に敗れたのか……?


次回も波乱の予感!?

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