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第25話「仕掛けられた罠」【挿絵あり】

ゴーファー邸探索はまだまだ始まったばかり……


改稿(2020/06/25)

 ベルは、またも何もない部屋にたどり着いていた。


「ガラクタが溢れてるのは玄関だけなのか……?」


 ベルは奇妙な感覚に襲われていた。実は、すでにベルは今いる部屋のように何もない部屋を、いくつか通って来ていた。


 11年間使われていない屋敷と言えど、使われていない部屋が多すぎる。ジェイクの話によれば、レイヴン・ゴーファーという人物は、いかがわしい品々の収集を趣味としていたはず。収集した品が、エントランスにある分だけならば彼は大したコレクターではない。


 ベルはこの状況を不可解だと思いつつ、次の扉を開いた。


 その先に現れたのは、ベルの予想を裏切るものだった。また同じような部屋があるのではなく、ベルの目の前には、下り階段が現れた。石壁に囲まれた、石畳の階段だ。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 同じ頃、セドナとリリはまだ先ほどの部屋で事件の手がかりを探していた。アレンは探していると言うより、2人の真似事をしていると言った方がしっくり来る。


「レイヴン・ゴーファーが宝石商と何か特別な関係を持っていたと言う証拠、彼が爆弾を作っていた証拠、それに黒魔術(グリモア)と彼を結びつける証拠を見つければいいんでしたっけ……」


「大体そんなところね……とにかく、関係してそうな文字が書いてあったり、それっぽいものがあったら教えてちょうだい」


 セドナは彼女の顔を見ることなく返事した。証拠探しに夢中になっていたからだ。リリと違ってオーブが見える彼女は、オーブの痕跡を頼りに調査を進めていた。


「何だろこれ?」


 アレンは、いくつもの突起物がある、壺のようなものを手に取っていた。


 試しに壺の突起物を押してみる。

 すると、その突起物はまるでスイッチのように沈んだ。アレンが触っているこの壺は、本当に何かのスイッチなのだろうか。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 ベルは、日差しが届かず、真っ暗になっている階段を降りようとしていた。一寸先は闇。慎重に下りる必要がある。


「…………」


 固唾を呑んで、ベルは1歩踏み出した。


 次の瞬間、大きな振動と共に、暗闇だった階段の空間に明かりが灯った。階段の壁には等間隔でランプが設置してあり、その火が灯ったのだ。


「………何か嫌な予感がする」


 ベルは突然起こった変化に戸惑いを隠せない。入った瞬間に明かりが灯ったと言うことは、彼の侵入が、誰かに知られていると言うことなのだろうか。


 それでも先に進むことにしたベルは、ゆっくりと階段を下っていた。そっとベルが右足を踏み出す。ベルが踏んだ段は、なぜかガクンと沈んだ。


 すると、階段の先に見える扉に変化が起きる。木製の扉の前に、新たに石壁が出現したのだ。行く手を阻む石壁はかなり分厚そうに見える。


「こんな仕掛けがあるってことは、この先に何かあるんじゃないか…?」


 ベルは進むその先に何かがあることを確信して、もう1度足を踏み出す。


 ベルの踏んだ段は、再びガクンと沈んだ。嫌な予感しかしない。また行く手を阻む仕掛けが発動するのだろうか。その嫌な予感は的中する。


 石壁で閉ざされた扉を、新たな石壁が閉ざす。それは前回と少し違っていた。今回出現した石壁には、鋭くとがったトゲのようなものが無数に並んでいたのだ。それだけでは終わらない。


 トゲのついた石壁が、轟音と共にこちらへ向かってくるではないか。それもかなりのスピードだ。


「マジかよ、ウソだろ!」


挿絵(By みてみん)


 一瞬にして、危機的状況に立たされたことを理解したベルは、急いで階段を駆け上がる。迫り来る壁にあるトゲは刃物のように鋭く、追いつかれれば身体を貫かれてしまうだろう。


 夢中で逃げ続けるベルは、更なる仕掛けを起動させてしまっていた。階段を下っていた時と同じように、ガクンと沈む段を踏んでいたのだ。逃げるのに必死なベルは、それに気づいていなかった。ここはただの階段ではなかった。階段自体がトラップの起動スイッチとなっているのだ。


 気づけば、階段を囲む石壁の幅が狭まっていた。ただ狭くなっただけではなく、徐々に狭くなり続けている。このままでは、身体を貫かれる前に壁に潰されてしまう。


 石壁のトゲに追いつかれて身体を貫かれることはなくとも、左右の壁と壁の幅は、すでにかなり狭くなっていた。階段を駆け上がるために両手を勢いよく振ると、ザラザラとした石壁で両袖が削られる。あと少しで潰されてしまいそうだ。


 ガチャ


 間一髪のところで、ベルは階段を下る前の部屋に逃げ込んだ。


「ふ〜、危ない危ない」


 ひとまず危機は回避された。ベルは安堵の息をついていた。ゴーファー邸は、とんでもないカラクリ屋敷だ。


 安心したのも束の間、今度はベルの目の前に何かが現れた。


 目の前の床に視線を落とせば、そこには魔法陣がある。最初来た時そんなものはなかったはずだ。


 ちょうどその時、アレンが壺の突起物を押していた。どうやらアレンが触っている壺も、トラップ起動のスイッチになっているらしい。


「グルルルルル……」


 ベルの目の前に現れたのは、見たこともない獣だった。4本足で身構えているその怪物は、飢えた目でベルを睨みつけている。怪物の顔には無数の目があり、口は耳まで裂けて、身体中に細かいトゲが生えている。


「これもゴーファーのコレクションの一部なのか?」


 レイヴン・ゴーファーが収集していたのは、物品だけではなかった。怪物までもが、彼のコレクションの一部なのだ。


 飢えた怪物はよだれを垂らし、うなり声を上げながらジリジリと近づいて来る。これはかなり危機的な状況だが、ベルは普通の人間ではない。階段を駆け上がっていた時とは対照的に、ベルは落ち着き払っている。


「大人しくしてろ」


 ベルが両手を床につくと、魔法陣が展開され、そこから炎が燃え上がる。それはロック・ハワードから奪った炎だった。炎はあっという間に、目前に迫る怪物の身体を包んだ。魔法陣を使った黒魔術(グリモア)。これだけは、ベルがいつでも自由に使うことの出来るものだった。


 しかし、ベルの展開する魔法陣では、たった2つのことしか出来ない。魔法陣の展開された範囲にある炎を吸収すること。そして吸収しておいた炎を放出すること。たったこれだけ。


 怪物の身体を包む炎は徐々に弱まり、それに比例して怪物も動かなくなって行った。


 その直後、アレンが再び別のスイッチを押した。アレンは新しいオモチャを手に入れて楽しんでいるだけだが、それがベルを苦しめることになる。


 アレンの押したスイッチによって、新たなトラップが発動した。そのスイッチにより、ベルの頭上から、赤い棒状のものが降って来た。落ちて来た物の正体が分からなかったベルだが、炭鉱長から聞いた話を思い出し、それが何なのかを理解した。


 爆弾だ。


 さらなる危機に見舞われたベルは、急いで扉を開き階段へと足を踏み入れる。逃げる場所はそこしかなかった。


 幸いなことに、さっきまで幅が狭まり、鋭いトゲが迫っていた階段は、普通の階段に戻っていた。さっき降って来た爆弾はまだ導火線に火がついておらず、すぐに爆発することはなかった。


 ところが、ベルは自分で自分の首を絞めることになる。怪物の身体を燃やす炎がまだ鎮火しておらず、それが導火線に火をつけたのだ。扉をしっかりと閉じて安心しきっていたベルだったが、すぐに彼はそれを後悔することとなる。


 ドッカーン‼︎


 火の点いた爆弾は間もなく爆発し、ベルの背後にあった木製の扉を吹き飛ばした。


「うわぁっ‼︎」


 爆発によって吹き飛ばされた扉が、ベルの身体を吹き飛ばす。


 そしてそのまま階段を転がり落ち、階段の先にある扉にぶつかった。ベルの身体はそこで止まることなく、その先の部屋に転がり込んだ。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 爆発音は、ゴーファー邸全体に響き渡っていた。


「一体何が起こったんだ⁉︎」


 ジェイクは驚いて、手にしていたものを放す。彼の手に握られていた紙切れは、ひらひらと床に落ちた。そこには、"アマンド宝石商"という文字。


 ジェイクはレッド・ウォール爆発事件に関する何かを発見していたようだ。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「怖いよー!」


 アレンは、自分が持っていた壺を放り投げてリリに抱きつく。


「一体何なの⁉︎まさか爆発?」


 セドナの耳にも、爆発の音は届いていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


爆発に巻き込まれたベルを待ち受けるものとは!?

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