第二話
自分の部屋のベッドでウトウトと眠り始める孝を見守るかのように傍でみていた裕貴はそっと孝の髪の毛を撫で、新妻を失った義兄をいたわるかのように寄り添うように横になっていました。
裕貴もまたこの何日間か眠れなかったのです。
そして気がつくと裕貴もまた孝と同じく眠ってしまいました。
それから何分くらい経ったのでしょうか。裕貴は眠ってしまったことに突然気付いたかのように飛び起きました。
起き上がると眼の前に孝がいました。それもすごく驚いた顔で。
孝の手には姉が部屋に残していったピンクの口紅がありました。
「僕寝ちゃっていたの・・?あれ!孝さん?それ・・・お姉ちゃんの・・・??」
裕貴がそう言いながら自分の唇に普段とは違う違和感を抱いていました。
「ごめん。ついつい美樹に似ているな〜!って思って。不謹慎だとは思ったけど、美樹に逢いたくなって・・・。ごめんな。」
裕貴は今自分に起きている事を孝の気持ちを理解した上で、受け止めるようにしようと思いました。そして
「孝さん・・・。その・・もし、気持ち悪いとか思わないのなら・・。今日だけお姉ちゃんの代わりにこのままお化粧したままでそばにいてあげてもいいよ。・・こんなこと言っちゃっていいのかな?・・・ていうかごめん。変だよね?僕」
と俯きながらも話し始めた裕貴に孝はニコっと笑って
「オレのことを想ってそんなこと言ってくれるなんて・・・。裕貴・・いや、美樹はいい子だな。」
そういいながら美樹になぞらえた裕貴をぎゅっと抱きしめた。
孝に抱かれるような形になって裕貴はもっと孝の悲しみを取り除いてあげたいと思うようになっていきました。
「あなた?元気出して!」
姉・美樹の真似をして高い声を出して、上目遣いに見つめる裕貴を孝は愛おしく想い、咄嗟にピンクに彩られた裕貴の唇を塞いでしまったのです。