第六話 じ〜こ自己紹介〜♪
……気がついたらそこは雪国だった。
ごめん、嘘ついた。
気がついたら、先程のテントの中……そこで僕は眠っていた。
痛みは……全身が痛い。
泣き叫ぶ程の痛みでは無くなってるものの、それでも波のようにズキ……ズキと定期的に痛みが走る。
「……はぁ…………」
……本当に何が起きてるんだって……。
大きなため息をつきながら、立ちあがろうとしてみる。
……うん、今度は悶絶する程の傷みじゃない。
「あれ、起きてる?」
僕が立ち上がったと同時だろうか、一人の少女がテントの中に入ってきた。
身長は僕と同じかややちっちゃい。
顔つきは綺麗よりも可愛い系で、髪はピンクのセミロング……。
服装は鉄製の鎧を身にまとっていて、まるで中世ヨーロッパにいた兵士のような服装だ。
「……君は――――」
「寝てなきゃ駄目ッ! 傷が開いちゃうッ!!」
「ぎゃぁぁあああ!?」
まさか、そんな少女にアイアンクローされて、顔面を地面に叩きつけられるとは、誰が思うか。
新しい傷が増えた気がした。
「まったく……悪化したらどうするんだか……」
「今、まさに悪化したところですけど」
顔面を手で抑えつつ、顔だけを少女の方に向ける。
その顔つきは冗談でやっていないという事が分かった。
……冗談でやって欲しかった。
この人、何しでかすか分からない。
「それと、包帯全身に巻かないで。魔物かと思ったんだから」
「いや、それはメデカっていう人に聞いてくださいよ!」
「私には伝わってなかったから、あなたが悪い」
「どんな理屈だ!?」
まるで、全ては僕のせいと言わんばかりの言いよう……。
そんな事ないからな!?
てか、殆ど君の見間違いじゃないか!?
「……それで、傷の方は?」
「いや、さっき酷くなったって伝えましたよ」
「そっか……悪くなってなくて良かった」
「人の話聞こうか?」
この人、全然話を聞いてくれない……!
堪忍袋の緒が切れそうだよ……!
今、僕の歯ぎしりやばいもん、鳴ってるように見せてるだけで実際鳴らないからねこれ。
「ところでなんだけれど、あなたは誰? 何者? この国の人じゃないよね?」
「君が話を聞かない人って事が分かったよ……」
はぁ……とため息をついて、質問に答えることにする。
「僕は無燈 進。……ええと、よろしく」
「ムトーね」
「苗字はね。名前が進」
「ススムなの? ムトーなの?」
「ススムでお願いします」
……名前でこんなゴチャゴチャになるとは……。
「所で君の名前は……?」
「私? 私の事はいいから、ススム、あなたは何処からきたの?」
「……え、えぇ……」
こんな強引な人、初めて見た。
自分のことはいいからって……。
「あ、あの……」
「何?」
相手はキョトンとした表情でこっちを見てくる。
……とりあえず、名前だけでも聞きたい。
いつまでも名前が分からないのは不便だし。
「僕の故郷では、相手が名乗ったら自分も名乗らなきゃいけないんです」
……これは間違ってないハズだ。
そーいうエチケットだったハズ。
「……分かった。私の名前は、リリ・レートンだよ」
「レートンさん? 不思議な名前だね」
「それは家名。私の名前はリリだから」
初めて、相手……もとい、リリさんに苦笑いさせた。
うん、別にうれしくない。
「えっとリリさん……」
「で、ススムは何処からきたの?」
なんでこの人はがっついてくるんだ?
別に急ぎの用とかある訳じゃないだろうに。
僕は首を傾げて、眉をひそめた。
「怪訝な目で見ないでよー……私はね、ススムが何処からきたのか、知りたいだけなんだってば」
ニッコリと笑いながら、まるで警戒心を解こうとしてるつもりみたいだ。
……全然警戒して無かったけどさ!
「……僕は、異世界から来ました」
「………………へ?」
「ですから、異世界から来ました」
「…………へ?」
僕の言葉にリリさんは硬直した。
多分、理解できない言葉だったとか、意味不明な言葉が出たからだろう。
……初対面でこんな事言ったら、絶対に変人扱いされるよね。
「もう面倒なんで……オブラートに包むのも面倒なんで、率直に言いました。異世界から来ました」
「え、えーっと……大丈夫? 頭ぶつけた?」
「リリさんに顔面叩きつけられました」
「ご、ごめん! 軽くやったつもりだったんだけれど……!」
「あれで軽くなんだ!?」
本気でやったらどうなるんだろう……!
僕の顔面グチャグチャになるのかな!?
福笑いは勘弁してね……!
「……わ、分かった。質問変えるよ。あなたはなんで、この町にきたの?」
「なんか、召喚されました」
だから、隠すの面倒なんだって。
あ、僕の返答にリリさんが頭を抱え始めてる。
「……? でもあの場所なら……ありえるかも」
「え、なんの話?」
「……」
「あのー?」
僕を放ったらかしにして、リリさんが考え込んでしまった。
……え、どうすればいいの僕。
「うん、大体分かった。怪我が治ったら、連れていきたい場所があるんだ」
「……ど、どこ? ま、まさか……!」
お、男と女が二人でってことは……!
え?
本当に……!?
心の準備がまだなんだけれど……!
「お城に!」
「だよね。はい」
……フラグとか、そんなものナシで恋愛フラグはないね。
いや、知ってたから。
知らないとか馬鹿だから。
ざ、残念がってなんか居ないんだからね!
「そういう事だから、早く治してね」
「う、うん」
……それにしても、城……かぁ……。
城って……てかなんで城……?
「なんで城に行くんですか?」
僕は気になったことをリリさんに聞いてみる。
すると、リリさんはウィンクしながらこう言った。
「秘密だよ」
……ちょっとイラッとした。
な、なんでこうなってしまったんだ……。
こんなの……こんなの……!
楽しいじゃないかァァアアアッ!!
(書くのが)