第一話 辛い今、苦しいこれから
「何、考えてんだろ……僕」
悪天候の中、一人ズブ濡れになりながらの帰宅……。
考えるのも嫌になって、これからの事も何もかも捨てたい。
僕、無燈 進はそう思いつつ、靴を脱ぎ、ビショビショになった服を脱ぎ散らかす。
凍えそうになりながら、変えの服を着て、準備バッチリ。
「……寝よう」
最近、高校から帰ってくるとこうやって、ご飯も食べずに寝る事が多い。
特別疲れてる……って訳でも無いんだ。
ただ……何も考えたくない。
将来の事とか、今の事とか、何が辛くて何が楽しいかとか……。
全部全部、どれもどれも面倒になっちゃって……。
幸い、両親はお金のある人で、僕を置いて国外やら何処へやら行っているけれど、僕は生活には困ってない。
……こうして何年経つんだろうなぁ……。
高校に入ってからだから……一年とちょっと経ったのかな。
ベッドの中に潜り込んでもう寝る体勢を取った。
これで今日も何も考えずに明日へ行ける。
明日が終わったら明後日へ。
明後日が終わったら明明後日へ。
何も変わらない、何も変えられない。
こんな世の中なんだから、僕一人考えを放棄したところで何も支障はない。
……面倒なんだよ。
友達とか、課題とか、授業とか……。
触覚とか、視覚とか、聴覚とか、嗅覚とか、味覚とか……。
有りと有らゆる事が面倒で、何も感じたくないし、何も考えたくない。
「明日も普通通り……」
いつもと変わらない、なんの変哲もない未来……。
僕は弄られて、僕は泣く。
先生は見て見ぬ振り、クラスの人達からは笑われる。
誰も助けに来ないし、来て欲しくもない。
大抵現れるのは偽善者で、自分の都合が悪くなれば消える。
「……」
……何も考えたくない。
何も考えたくない。
考えなければ、明日の不安とか、怒りとか、憎しみとか、嫌な事とか、感情とか、事態とかで怖がらずに済む。
……でも震える。
考えたくない。
でも考える。
「はぁ……! はぁ……!」
不安になる。
怖い……明日も怖い……。
死ぬかも知れない。
生きたい……のかすら分からない。
でも、死ぬのは怖い。
でも、明日も怖い。
「大丈夫……大丈夫……大丈夫……大丈夫」
……こうやって、僕はいつも毎日に怯えている。
17歳で人生ってものに絶望をしている。
僕はとてつもなく運が悪くて、それでもって、不幸がいつも降り注ぐ。
……金があっても、人生が楽しくなるとか、そんなものはない。
娯楽に逃げても、絶対に悪夢が追い掛けてくる。
だから、いつも通りに……そう、夢なんかみないくらい、悪夢なんかみないくらいに深く眠って……。
そう思うけど、思う様にはいかなくて……。
本当は僕、疲れてるんじゃないのかな……。
「やっぱり……わかんない」
今日もまた一日……眠れそうにない。
……そう思ってた。
でも、それもあらぬ形で的中していた。
突然、視界が真っ白い光で埋め尽くされる!
それと同時にキーンッ! という轟音も僕の耳の中に侵入してくる。
「……うッ!?」
光は段々と強くなっていき、本気で目を潰そうとしているのかと思うくらいだった。
目を必死に閉じても尚、光が瞼の裏に入り込んでくる。
「まぶ……!? ぁあッ!!」
眩しい上に、突然の浮遊感に襲われる。
ベッドがまるごと無くなったかのように、体には何も密着していない。
まるでずっと落下しているみたいな、下には何も無いような感じがして気持ちが悪い。
「何がぁああッ!?」
色んな事が起きすぎて、訳が分からなくなって、僕は叫ぶ。
音も光も、変な浮遊感も……全部が段々と強まって行って……。
僕は異世界に飛ばされる。
これは僕が、生きる意味を見つけるための物語……。
増えてく、書きたいもの……!