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ラッパ吹きの休日  作者: 雪 よしの
ドイツへ留学する
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犬も食わない夫婦喧嘩

カイトは、フランクフルトを少し観光した後、ミュンヘンの家に帰りましたが・・・

 俺は、フランクフルトでの演奏会で、また、友達、知り合いのメアド登録を増やした。


 共演しピアニストのクラリスや、ソロバオイリニスト・マルグレテ、オケのニコラス(事務局)、俺をソリストに呼んでくれた審査員のおばちゃん・ゾフィーさん、指揮者のマエストロ・バウマンといろいろ親しくなれたのは、嬉しかった。


 あと、滞在先のアドルフ一家。アドルフの家を出るときには、末っ子が俺にまとわりついて、”又、遊びに来て”と何度も約束させられた。ドイツ家庭料理もおいしかったし(自分の料理比)、家族のようにしてくれたので、余計な気を使わず、使わせずで、居心地がよかった。

ミュンヘンに帰ったら、お礼の手紙を書こう。家族全員が読めるようにだ。簡単な文章でいいから。確か、何かの役に立つかと思って、北海道の絵葉書を持って来てる。それで送ろう。



 帰りは、午後の列車にしたので、午前中は、市電ですぐのレーマー広場まで行った。15世紀に裕福な貴族の屋敷を3棟買い取り、そこを市庁舎にしたそうだが、こうして来てみると、よく聞く”異世界転生”のような気分だ。広場とマイン川の間は、ちょうどマインフェストというものだったらしく、日本の屋台+子供用遊園地 があり、親子連れが楽しそうに歩いてる。


 フェリックスも連れてきたら喜ぶだろう。おっと確か、ミュンヘンでも同じようなのがあったはず。ちょうど彼の事を思い出したので、そこでレゴブロックをお土産として買った。


*** *** *** *** *** *** *** *** ***


 今日は日曜日なので、買い物はナシ。家につくと、ああ、また香澄さんとクラウスが言い合いをしてる。アドルフ一家の雰囲気を味わってしまったせいか、げんなりする。よく言い合いのタネがつきないと思う。ちなみに、今は”夕食のメニューについて”だ。


 こっちにきてからは、土曜日に1週間分の買い物をするようになった。日曜が殆どの店が休みだから。昨日、買い物を忘れたらしい。


「私は香澄がいるのだから、買い物に行ってくれてると思ったよ。」

「車がないもの、1週間分は無理だわ。あなた、フランクフルトへ車で出かけたじゃない。せめて行く前に一言ほしかった。」


 すっごい、くだらねぇ。イモ・タマネギ・ニンジンの類は、まだ在庫があるはず。パスタ類は山ほど。缶詰類もある。もしかして牛乳が切れてるかも。


「香澄さん、どうしたんっすか?食べるものなら、あるじゃないですか?」

「だって、生鮮野菜がないのよ。それにフェリックスに飲ませる牛乳も。それに私は今日は、”ご飯”が食べたかったのよ。昨日、買いに行くつもりだったのに」


 なんだ香澄さん。それくらいの事で大騒ぎするなんて、子供みたいだ。ようするに、クラウスが買い物の事を忘れたのが、腹立たしいだけなんだ。自分の思い通りにならないからといって、ヒスをおこした。


 そういえば、こういうタイプ、大学オケにいたな。”練習日に集まりが悪いと、いつまでも愚痴ってるパートリーダー””希望してた音楽セミナーに行けなくて逆ギレして事務局に電話する奴”


 クラウス先生は、俺の演奏会を聞きに来てくれたんだ。わからないようにこっそりと。俺のドイツでの初舞台(プロデビュー?)だからだろう。先生の姿を見つけた時は嬉しかった。とても。客席からパワーをもらってる感じだった。


 それでも買い物を忘れちゃいけないよな...ドイツって休む事が義務なんで、面倒ちい。


「香澄さん、一日くらい、”ご飯”は我慢してください。夕食は、俺が作りますから」


 年下の俺にそう言われて、さすがに顔が赤くなった。少し冷静になったかな。


*** *** *** *** *** *** *** ***

 夜に音楽室で、先生が録音したので、演奏会の反省会になった。


「カイトは1楽章は”音を置き”にいったね。4楽章のようにハジケてもいいのだろうけど。あれか?ピアニストの関係でか?」


 俺は練習の経緯やらリハでの出来事やらを、いろいろ話した。クラウス先生は、それを聞いて、大笑いした。はあ、笑いごとっすか?俺はムっときたが、やはりバイエルンオケで首席トランペットやってるだけあって、言い方が厳しい。


「いいだよ。彼女の味方してあげるとよかったけどね。まあ、カイトはコンマスじゃないし。ソリストといっても、ピアノメインだから。バウマンは苦労したんだろうと思う。ソリストじゃなく、バックの弦楽団に。ピアニストの旋律が、即興で揺れ動いても、あの弦楽はついていくのが、ギリギリだったかもしれない。聞いてると、4楽章は、スケルツォのはずなのに、すごい緊張感だ。団員の余裕がなかったんだな」


 弦楽の力か。確かイスラエルオケの弦楽の力が世界一とか。そえぞれのオケに特色があるのだろうけど。後半のチャイコを聞いたけど、管楽器もいまいちだった気がする。つまりは、今回一緒に演奏したオケは、そういうオケだったということだ。


 二人で、本番について、その他いろいろ話した。1楽章は俺は緊張してた(らしい。自覚はなけど。)そういえば、2楽章の前、ミュートを付けようとした時、クラウス先生の姿を客席でみつけて、すごくホっとしたっけ。そう、やっぱり1楽章は緊張してた。ま、いろいろあった所だから。先生の姿を見て、ホっとする、これって殆ど、生徒だな。やっぱ今回は、プロデビューというより、学生卒業試験に毛の生えたような演奏会だったんだ。


「カイト、夏休みはどうする?オケ事務局はお休み。オケも休みだ。出来れば4人でマヨルカ島で、バカンスでもどうかと思ったんだが・・・」


 いや、無理無理無理。クラウスと香澄さんのペアが、凶悪すぎ。


 

週一更新です。

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