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ラッパ吹きの休日  作者: 雪 よしの
音大生 院生時代
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親子喧嘩に巻き込まれる

ホールの人目につかないところで、塚田親子が、無言でにらみ合っていた。

俺は、すぐ回れ右をして帰りかけたが、二人に見つかってしまった。


塚田君は、俺のところにかけてきて、父親のところに引っ張っていく。


「よかった。先生からも、言ってよ。親父、本当にわけわかんない事いってるし」


「あなたですか。うちの洋介に何を吹き込んだんです?

息子は、音大に行きたいと言ってます。私も妻もそれには大反対です。

おかげで、親子喧嘩がたえません」



説明なしで本題に入るところは、似てる。親子だからだな・・


さすがにここでは、まずいと、3人で外にでた。

セリナちゃんを、送っていくつもりだったのに。


「先生、俺、音大受験します。親父にそう言ったら、頭ごなしに反対されてさ。

”普通の大学にしろ。ランクは高いほうがいい”とか、普通の大学って何?って思うよね」


やれやれ、いきなり音大受験確定宣言か。そりゃ親も驚くべな。

父親も父親だ。音大が普通の大学じゃないってことか?

”何それっ” て俺でもムっとくるかも。

結局、どっちもどっちだ。


「塚田君、君が今から音大を受験するなら、浪人覚悟だよ。

まず、トランペットの個人指導してくれる先生と、楽典を教えてくれる先生を

探して、指導してもらう。必死にやっても、現役合格はまず無理っぽい。」


「あの。。楽典ってなんですか?」


はぁ?俺は塚田君の質問に脱力した。

受験したいなら、自分で下調べぐらいできるだろうに。


父親は、フフンって顔で息子を見てる。


「それと、塚田君のお父さん、初めまして。5月に一度だけ指導に行った

新藤海人です。あの時は、まだ部の体制が整ってなかったらしく、

俺の指導は、楽器の持ち方や姿勢から始まって、本当に基礎だけで終わりました。


塚田君の使っていた学校のトランペットは、大幅なメンテナンスが必要

であることを、顧問には伝えてあります。

正直な処、新しい楽器を買うほうが、長期的に見て安くあがるかもしれません」


俺が何か吹き込んだっていう誤解を解かないとな。

塚田さんは、ふmと考え合点がいったように


「だから、トランペットを買ってくれなんて、言ったんだな。

学校の楽器で使えるのがあるなら、それでいいじゃないか。

っていうより、お前、もう部活やめて、受験勉強に専念しなさい。

私はお前が、部活にかこつけて、勉強から逃げてるように見える。」


だめだ、この親子。話がかみあってない。

だから、”絶対無理”って返信したのに・・もう俺、帰るわ。


「待って、先生」「先生、少し待ってください」

と同時に引き留められた。見事なシンクロ。親子だな~

でも、これ以上話しても無駄。


「塚田君、楽典って言葉も知らないようじゃ、無理だね。これから死ぬ気で勉強

するんなら、まず顧問に相談すること。しかるべき先生を紹介してもらえばいい。

トランペットの個人指導を受ける必要があるよ。


塚田さん、息子さんの将来を心配するのもわかりますが、

普通の大学って言い方はなんすか?音大は普通に大学で、楽器や音楽全般の勉強を

死ぬほどしますけど、大学ならあたりまえですよね。


じゃ、俺はこれで。」


ちょっとキレた俺に、それでも塚田君は、腕にすがって

「俺、死ぬ気で頑張ります。絶対、音大に行きたいです。」


いや・・俺に言われても困るんだけど・・

「まず、顧問の智春先輩に相談すること。その前に、当然、個人指導はお金がかかる。

楽器の指導は、1か月に1回1時間で1万円が相場かな。ちゃんと”教えるプロ”に

習う事。で、スポンサーのお父さんは、了解してくれるのかな」


とたん、塚田君は、”青菜に塩状態”になった。

父親は、”へん、そんなものテコでもだすものか”って顔だ。

もう、しょうがない援護射撃するか。


「塚田さん、受験はともかく、個人指導を受け、若いうちに楽器を勉強しておくと

将来、それが本人の財産になりますよ。

お試しで、やらせてみたらいいんじゃないっすかね。

学校の勉強+部活+個人練習、きっとキツいでしょうけど。」


俺は自分の高校時代の成績(赤点ばかりとっていた)は、宇宙のかなたに棚上げした。

塚田父は、”学校の勉強”という単語に、ちょっと惹かれたのか、

ちょっと考えてるようだ。


今度こそ、このお騒がせ親子から離れた。

本当は卒業後の就職が大変なのだけど、それは智春先輩にバトンタッチ。

あとで、文句メールしてやろう。



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