表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ピエロ

作者: 活動停止


 さぁ、サーカスの始まりだよ。


 少女はその声で目覚めた。目の前には赤と青と緑の縞模様の衣装に身を包んだピエロが居た。大きな真っ赤な鼻に、顔面に施された白と赤の化粧。

 ピエロは大きな口をにぃっと歪めると、どこからとも無くボールを4つ取り出した。それを器用に投げては掴み、また投げては掴み。

「あ」

 ポンと1個のボールが少女の足元に転がった。サッカーボールくらいの大きさのそれは、目を剥き出しにした父親の顔だった。歪んだ口元からは血が滴り落ちている。

「あ、あは……あははははは」

 少女は笑った。少女は父親が嫌いだった。年中お酒を飲んでは暴力を振るう父親が。

 ピエロはその様子に満足したのか、今度は短剣を4本、また何処からとも無く取り出した。それを投げては掴み、投げては掴み。不意に少女と同じ背丈くらいの箱が登場した。ピエロはその箱に短剣をグサリ。もう1本もグサリ。更にもう1本もグサリ。

 箱の鍵が開けられ、中から血まみれになった少年が倒れて来た。少女はその少年の顔に見覚えがあった。学校でいつも虐めてくる、ガキ大将。

 ピエロは最後の短剣を少年の首筋にグサリ。鮮血が辺りに飛び散った。

「あはははははっ」

 少女はまた笑った。顔に付着した血を拭いもせずに。

「ねぇ、ピエロさん、お次はなぁに?」

 ピエロは方を竦めるとまた大きな赤い口をにぃっと歪ませた。

 今度は斧を取り出すと、カーテンの後ろから何かを引っ張り出した。それは猿轡を付けられた、全身縛られた担任の先生だった。

 ピエロは躊躇無く、その右足を切断した。猿轡を付けられた口から苦悶のうめき声が漏れる。

「あはっ、あはははっ!」

 次は左足。次は右腕、左腕。両手足を失った教師はまるで芋虫のようだった。傷口からはビュービューと鮮血が溢れ出している。

 ピエロは次に教師の首筋に斧を当てた。

「ねぇ、ピエロさん。私にやらせてよ」

 ピエロは肩を竦めると、少女に斧を手渡した。少女は重い斧を振りかぶると、何の躊躇もなく振り下ろした。ダンッ。ゴロリ。

 コロコロと転がる教師の頭部が面白くて、少女はまた笑った。笑って笑って、笑い過ぎて涙が零れてきた。

「ねぇ、ピエロさん。次は?」


 今日はもうお終い。


 そう言って、ピエロは少女にトランプを手渡した。ピエロの絵が描かれたジョーカーのトランプ。

 そこで少女の意識は途絶えた。



 それは悲惨な事件だった。発見したのは母親で、夫が寝室で首を切断されて死んでいた。それだけではない。少女の同級生の男子生徒が、何者かによって刺殺された。そしてその担任の教師は、両手両足、そして頭部を切断された状態で見付かった。

 このショッキングなニュースは直ぐにマスメディアで取り上げられ、大きな話題となった。


 少女は父親の葬儀に参列していた。すすり泣く母親の横で、少女は無表情に立ち尽くしていた。ポケットをそっと探る。そこにはピエロのジョーカーが微笑んでいた。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ピエロ、という題材繋がりからこちらに来ました。こんにちは! 面白かったです(残虐が、というわけでは無いのですが汗)。あんまり作品に対してのツッコミ評価は無いのですが、「〜た。」調が多いかな、…
[一言]  拝読させて頂きました。短いながらもまとまっていて、とても読みやすかったです。  ピエロって不思議ですよね。人の描き方、それは人それぞれが持ってるイメージなんでしょうけど、善にも悪にもなり…
[一言] 内容が良かったです。 できたら、もう少し長い文章で読みたいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ