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矛盾してますやん

「ヒナッち援護して!・・・っ全然間に合ってない!!」

「しょうがないよ!相手が早すぎる!」


雲のひとつない透き通る空、それに負けずと主張する澄んだ空気、頬を撫でる乾いた小風。

たとえ昼寝などする気のない時にでも、まどろんでしまいそうな天気。

しかし、黒いローブに刀という暗殺者みたいな少女とヒナッちと呼ばれた少年、近衛このえ 日向ひなたは額にびっちり汗を出して目前にいる敵と戦っていた。両手には最強の剣を二本持ち、目では追うことのできないすばやい動きで禍々しいオーラを発する敵に一撃を食らわせるべく、突撃をはかった。


なんていうお話の中の設定。

現実には蒸し暑さを和らげるために団扇うちわを仰いで埃っぽい理科の準備室という空き教室に男一人と女二人で長机を囲んでいた。

「いくぞ!・・・・・ぁ」

大きく振りかぶった手から放たれた二つの六角形は互いに音を発て合いながら、同じ目、一つ目を示した。


目の前の少女がお椀の中を覗き込む。長い髪のポニーテールがぴょこんとゆれて甘い香りがした。


「えーと・・・1と1。 ファンブルですか。」

続けて彼女は

「えーっと、しかし少年の振り下ろした二本の剣は空を斬りそのままの勢いで草原の中に偶然にもあった岩盤に当たりました。

そして運が悪いことに剣が両方折れ、そしてそして本当に運が悪いことに片方は少年の頭に、もう一方は少女の胸に刺さりました。」


「運が悪いとかそういう次元じゃないと思うわ。」


なんか・・・すげーださい。悪を倒してこれから平和な世界できゃっきゃうふふな生活を一緒に送る女の子、過失の事故で死んじゃったよ殺しちゃったよ。



「こう書いてあります。ダメージの判定は・・・ないのかな。えっと…こうして、世界は闇に飲まれ少年と少女は人知れずに短い人生に幕を閉じたのでした。」


「・・・めでたしめでたし?」


なんだろう、この・・・俺が悪いのか?とりあえず申し訳ない気持ちで・・・


「ぜんっぜん、めでたくなーい!!」 

隣では胸に最強の剣が刺さった少女、もとい沢西さわにし あおいは黒いボブカットの髪を揺らしながら頬を高潮させ叫ぶのであった。



「・・・疲れた、帰ろう」



時刻は夕暮、いつまでも付き合っていては本当に帰れなさそうなので一人で帰路についた。


校舎裏の少し黒ずんだスノコ、下駄箱から正門へと続く道、疲れきった頭脳をいたわるように大きく深呼吸しながら歩いていた。上を見上げると沈む太陽に横から照らされたうろこ雲が空一面を覆っており、小さい嘆息が漏れる。


「あー疲れたー。やっぱ慣れないことは苦手だな、酸欠で頭が痛い・・・」


「あーら?近衛くんは何時でも酸欠でしょ?打ち上げられた魚みたいなもんじゃない。」


いつのまにか追いついた沢西さんが声をかける。


「はいはいそうですね。僕は捕って食われる魚ですよ。沢西 くまさんに」

「そうそう、バシャってやってパクってね・・・ってダレが熊よ!」


ジェスチャー付きで見事なノリ突っ込みを見せてくださるあおいさま

かわいくて清楚、人当たりも良くクラスの花。今すぐにでもお付合いしてみたい!と一週間前、新しく始まる高校生活に夢をはせていた俺は彼女の素顔に気づくのが遅かった。






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