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EARTH‐MASTER ―篁 葉月編―  作者: 早藤 尚
11/15

PRE:02 約束

 雨の日は、まるで自分のいる世界が変わったように思えて嫌いじゃない。

 ……春の雨は、細い細い糸。手繰り寄せて登ってみたい。

「まーたボケッと窓の外眺めてんの? 篁、おまえも飽きねーな毎日毎日さ」

 もはや定位置となりつつある、僕の前の席にどかっと腰をおろして、そいつは投げやりに言ってきた。ちなみにそいつは、その席の住人じゃない。

「……東海林も。毎日毎日、懲りないね」

 片肘ついて窓の外を眺めたまま、僕も言葉を返す。

「まーね。俺ってば打たれて伸びる子だから。おまえがどんなに愛想なかろうと問題ナッシン」

 ――意味不明だ。

 この前の始業式の日から、どういうわけなのか東海林は、なにかの義務のように毎日僕に話しかけてくる。その大半はどうでもいいような世間話。……本当に、なにがしたいのか判らない。

「なぁなぁ、俺ら随分仲良くなったんじゃね?」

「……知らない」

「友好の証として名前で呼ばねぇ?」

「嫌だ」

 思わず東海林の顔を見て即答してしまった。名前なんて勘弁してほしい。

 東海林はくつくつと笑っていて、それがまた気に障る。……このストーカーめ。

「じゃあさ、じゃあさ。次に会ったら俺のこと名前で呼んでくれ」

「………………」

 僕は物凄く嫌そうな表情をしてみせるけど、東海林にはまったく通じてないみたいだった。――このバカ。

「約束しろよー。まじで名前で呼べよ?」

 ……観念して渋々口を開く。決して了承したわけじゃない。

「次って、いつ」

 そう訊くと、やけに大人びた表情で東海林は笑った。

「”次”は”次”だよ」



 ――その言葉の意味が、今なら判る。

 ”次”に、東海林と会うとき。

 少し腹立たしいけれど、僕は約束を守ろうと思う。そのときが、いつになるかは判らないけど。

 ……せいぜい驚くといいよ。

 東海林。



fin…


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