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1 改

加筆修正版です

自然豊かな山々に囲まれた昔ながらの日本家屋の中で1人苛立つ少年がいた。


「俺だけ残して皆で世界一周旅行にいくとか……。酷すぎだろ……」


高校生2年生の夏休み初日。いつもより遅く起きてみれば自分――山城遥斗を除いた一家――祖父の山城弘輝と祖母の山城春風、そして両親の山城嵐と山城優里が書き置き1つ残して世界一周旅行に旅立っていたことが判明した。


『世界一周旅行に行ってきます。夏休みが終わるまでには帰って来るので留守番お願いします。母より。PS,蚕の世話は頼んだ。byオヤジ』


「何が、byオヤジだ。クソ」


一家で蚕の養殖を営んでいるため誰かが家に残らなければいけなかったのは分かるが一言もなしに置いていかれた遥斗は苛立っていた。


「ハァ〜。言ってても悲しくなってくるだけだな」


世話しなく蝉が鳴き夏特有の暑い日差しの中で遥斗はガックリと肩を落として諦めの境地を開くと蚕の世話をするべく養殖小屋に向かった。


「あっちーなぁー……もう……」


額から流れ落ちる汗を拭い真夏の太陽に怨めしげな視線を送りつつ遥斗は3つある蚕小屋のうち日本種の蚕達がいる1番小屋の扉を開ける。


――ガチャ


「あっ!!ご飯、ご飯ちょうだい!!」


――バタン


「……暑さで頭をやられたのかな?」


小屋の中には蚕以外いるはずがないのだが、遥斗が扉を開けた際に小屋の中にいたのは蚕と長い黒髪が日本人形を彷彿とさせる純和風の可愛らしい4〜5歳の少女だった。


もっとも少女は何故か全裸で下着はもちろん服すら着て居なかったが……。


そんな非現実的な光景を目の当たりにした遥斗は思わず凄まじい速さで扉を閉めあまりの暑さに自分の頭がおかしくなったのかと真剣に考えた後、もう一度中を確認することにした。


――ガチャ


「何で閉めるの!?お腹空いたよぉ!!ご飯、ご飯!!」


――バタン


「夢じゃなかった……orz」


ゆっくりと静かに中を覗いた遥斗だったが無情にも現実は変わらなかった。


「お〜な〜か〜す〜い〜た〜!!」


「わ、分かった、分かったからちょっと待っててくれ、な?」


「むぅ〜分かった!!」


懇願するように頼む遥斗の言葉に少女は頬を膨らませ渋々ながら頷く。


よし、今のうちにっ!!


覚悟を決めた遥斗はとりあえず、空腹を訴え騒ぐ全裸の少女にバスタオルを巻いて小屋から連れ出し家の中に入れるとすぐさま親に連絡を取った。


――プルル、プルル


「早く出ろ!!早く出ろ!!」


――ガチャ


『もしもし?遥斗か?あぁ先に言っとく置いてきぼりを食らった怨み辛みなら聞かないぞ?』


「そんな話じゃねぇよ!!蚕の養殖小屋に女の子が居たんだよ!!どうなってるんだ!!」


『……もう一回言ってくれ』


「だから!!蚕の養殖小屋に全裸の女の子がいたんだよ!!」


遥斗は電話にでた父に開口一番に怒鳴りながら蚕の養殖小屋にいた少女の話をする。


『――そりゃめでたい!!良かったな遥斗!!』


「は、はぁ!?何がめでたいんだよ!!」


『あーそれは電話だと詳しく言えないから俺の部屋にあるタンスの二段目の引き出しを開けた中にお前の知りたい事が書いてある本があるからそれを見といてくれ。おっとこうしちゃいられない、じい様にも教えてやらなくちゃ。それじゃ』


――ブツッ。


「おい!?もしもし!?もしもし!?……切りやがった」


何故か少女が居たことを聞いた父が喜んでいたことに首を捻りながらも遥斗は父の部屋に向かい指示通りにタンスを開けた。


するとタンスの中には古びた巻物や時代を感じさせる年代物の本が置いてあった。


「……本当かよ。これ」


タンスから取り出した本を遥斗が読み進めていく内に驚きの事実が次々と判明した。


本に書かれていたことは主に3つ。


山城一族の生まれの者で蚕の神様――お白様に認められた、もしくは気に入られた男――神子の前には褒美として?(理由は不明)蚕が擬人化した容姿端麗の美少女――飼い子が現れるということ。


また神子と飼い子が契りを交わし夫婦となれば一族は安泰であること。


そして飼い子ついてのさまざまな注意事項だった。


――擬人化した蚕、飼い子について。


飼い子は蚕と人間のハーフであるためか、手の筋力が異常に弱いなどの身体的障害を背負っていることが多い。


また蚕と同様に人間――つまり伴侶――神子による手助けなしでは生育することができないため異常なまでに神子に依存する。


(ちなみに蚕とは――蚕は人間によって家畜化された昆虫で野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物。餌がなくなっても逃げ出さないなど人間による管理なしでは生きていくことが不可能な昆虫である)


また飼い子は神子以外の男の接触を嫌がる。


などなど他にもいくつもの飼い子についての注意事項や介護の仕方などが書かれていた。


「つまり……なんだ。あの女の子は擬人化した蚕――飼い子で……俺はお白様に認められたor気に入られた神子で……俺がこの子と結婚して身の回りの世話をしてやらないとこの子は生きていけない?……そんなバカな」


父の部屋で自分の理解の範疇を越えた事実を知り呆然としていた遥斗だったが居間の方からお腹空いた〜!!という少女の声が聞こえてきたため我に返り遥斗は急いで居間に向かった。
















――――――――――――




「うぇ〜ん!!お腹空いたよぉ〜!!」


「あぁー泣いてる……」


「うぇ〜ん!!お腹空いたぁ〜!!」


「……何か食べさせるか」


遥斗が戻って来るのが遅かったせいか、ついに泣き出してしまう少女。


とりあえず空腹を満たしてやれば泣き止むかな?と考えた遥斗は少女に何か食べさせることにした。


父の部屋から持ってきた本のページを捲り少女の食べ物がクワの葉などではなく人間と一緒の物でいいということを確認した遥斗は早速、台所に行き手早くお粥を作ると少女の所に戻った。


「グスッ……ご飯?」


遥斗が鍋を片手に戻ってきたのを見て少女がピタリと泣き止む。


「そうだよ。ほら口を開けて」


火傷をせぬようレンゲに掬ったお粥をよく冷ました後、遥斗はもう待てないとばかりに大きく開かれた少女の口にゆっくりとレンゲを滑り込ませた。しかし


「……」


「……」


「ご飯……」


「……」


口の中に入れてもらったお粥を少女は飲み込む事が出来なかった。


いやそれどころか少女の口からお粥がボタボタと全部溢れ出て来てしまう。


遥斗は訝しげな顔で少女は悲しげな顔で溢れ落ちたお粥を見つめていた。


……俺のやり方が下手だったのか?


そう思った遥斗が、畳に溢れたお粥を掃除したあと何度か挑戦してみるものの何度やっても少女の口に入ったお粥はすべて口から溢れ出てしまう。


……どうなってんだ?これは?


少女がふざけて口からお粥を吐き出しているのではないかと一瞬疑った遥斗だったが、畳に落ちたお粥を悲しげに眺めている少女の姿を見てふざけてはいないんだろうと考え直した。


「……」


「な、なんか書いてないかな?」


無言で捨てられた子犬のような眼差しを送ってくる少女に言い様のない居心地の悪さを覚えた遥斗はどうしたらお粥を食べさせることが出来るのかと悩み本に手を伸す。


そして遥斗は本の中に解決策を見つけた。


「……マジで?」


擬人化したばかりの飼い子はうまく食事を取ることが出来ません。そのため神子が口移しで食事を与えて下さい。


そんな1文を読んで遥斗はどうすりゃいいんだと悩み始める。


「……ヒック、ヒック。お腹空いた。ヒック」


こちらの良心をチクチクと刺激する少女の嗚咽にほとほと困り果て悩んでいた遥斗がついに覚悟を決めた。


遥斗は意を決して自分の口にお粥を含むと少女に口づけた。突然の遥斗の行動にびっくりして目を見開く少女だったが遥斗の口からお粥が流れ込んで来ると逆に遥斗の体にしがみつき口を吸いどろどろになったお粥をごくごくと飲み込み始める。


そして遥斗の口の中のお粥がなくなると少女はチロチロと小さい舌を蠢かせ遥斗の口内を舐め尽す。


「――っ、ちょっ、ちょっと待て、むうっ!!」


遥斗がお粥を口の中にいれるため少女を引き離そうとするものの少女はそんなことはお構いなしに遥斗の口に何度も接吻を繰り返していた。


20分後。


「……」


「すぅ〜すぅ〜」


遥斗の口からお腹いっぱいになるまでお粥を食べた少女は満足気な顔で遥斗の腕を枕にしてスヤスヤと寝ている。


「……疲れた」


口の周りを少女の涎とお粥によってベタベタに汚されそれを拭うことも出来ずに遥斗はただ少女の枕となって一緒に床にねっころがっていた。


「これから……どうすりゃいいんだ……」


そんな遥斗の小さな呟きは空中に溶けていった。














――――――――――――



「スゥ……スゥ……」


「よいしょっと」


少女が深い眠りに落ちているのを確認した遥斗は少女をソッと抱き上げた。


……俺の部屋でいいか。


抱き上げられたことにも気が付かず相も変わらずスヤスヤと眠っている少女を自分の部屋に連れていきベットの上に横たえた遥斗はまだやり終えていなかった蚕の餌やりに向かった。


「ほらほら飯だぞ〜」


現実逃避をするように蚕に餌をやりながら遥斗はこれからの事を考えていた。


これから先……なんか大変なことになりそうな気がするのは気のせいか?


何故かこれから先自分が大変な出来事に巻き込まれていくような嫌な予感がした遥斗はこれ以上何も起きませんようにと願うものの、こんな時の嫌な予感ほど当たるものはない。


「はい、1番小屋の餌やり終了っと」


1番小屋の餌やりを終えた遥斗は隣にあるヨーロッパ種の蚕がいる2番小屋に向かった。


「……」


2番小屋の扉を開けようとした遥斗は不意に動きを止める。


……まさかここにも居ないよな?


1番小屋にいたあの少女と同様の存在が2番小屋にも居るのでは?と邪推した遥斗は扉を開けるのを少し躊躇ったがそんな訳がないかと思い扉を開く。


――ガチャ


「うぅ……お腹空いた……あっ!!ちょっとアンタ!!」


2番小屋の中には蚕以外に金髪で白い肌の気の強そうな4〜5歳の少女(全裸)がいた。


――バタン


2番小屋の扉を光速の速さで閉めた遥斗は無言で熱帯種の蚕がいる3番小屋に向かい小屋の扉を開く。


――ガチャ


「……お腹……減った」


3番小屋の中には蚕以外に赤髪で褐色肌のボーっとした4〜5歳の少女(全裸)がいた。


――バタン


3番小屋の扉を閉めた遥斗は思わず膝を付き言葉を漏らした。


「嘘だと言ってよバーニィ……」


こうして遥斗のとてつもない受難の日々が幕を開けた。

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