ギルド
俺がニアを守る為に取った手段、其れは『冒険者ギルド』に所属して冒険者としての身分を手に入れる事と、ニアを俺の使役動物として登録する事だ。
転生特典みたいなモノで俺は他種族の言葉の意味が何となく判る。
そして前世の記憶と今世でこの計画の為に日々の散歩の合間に、この世界の人族の共通文字を勉強したので読む事が出来るし、ペンを触手で動かせば文字だって書ける。
まぁ実際にやれば大騒動になるやも知れないが…家族を守る為なら知ったこっちゃない、俺の我を通させて貰うだけだ。
◇
その日、あの時の猫が私の元に再度訪れました――魔獣…ホーンラビットの子供を連れて。
「ナァー」
一声鳴くとジッと私を見つめます、私の隣のカウンターで先輩が息を飲んで見守っているのが判ります。
今日はこの間の様な緊急事態では無いことは判りますが一体どんな用件なのでしょうか?
この間の強盗事件以来、たまに魔法を使って様子を観ていたのですが…観ている限りでは特には変わった事の無い普通の猫に見えたんですけれど…。
「えっと…今日は何か御用ですか?」
こんな所を観られたら頭がオカシイ人に思われるかもしれないけれど、私は意を決して話し掛けてみました。
「ナァ」
あぁ…ハッキリと『そうだ』と言われた気がします。
猫はテシテシとカウンターを前足で叩き、ホーンラビットの子供の首の皮をくわえて在る場所へ移動します。
その場所は『冒険者登録窓口』………まさか猫が冒険者に成りに来たのでしょうか?
「ウナァァァァ―――」
ちょっと呆然としていると不機嫌そうな鳴き声で「早く此方に来い」とでも言う様に鳴き、カウンターをテシテシと叩きます。
えっ?まさか本当に冒険者に成りに来たのですか?
先輩も唖然としています…口が開きっぱなしです。
「…えっと、ひょっとして冒険者に成りにいらしたのですか?」
「ナァ」
「本当に?」
「ナァ」
どうやら本当に冒険者に成りに来た様です……えっと、あれっ?猫ですよね?冒険者に登録とか可能なんでしょうか?
って言うか登録処理担当したら私の責任になっちゃいますよねこの事態。