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舞蝶物語  作者: 春蘭
3/5

甘罠夢



 捕まえない、逃がさない






『甘罠夢』


 ――それはあまりに衝撃的で、私を容易に狂わせる――



 私達はまるで、遊戯をしているようだ。


 惚れたら負け、すがったら負け、追い掛けたら負け、手を出したら、……負け。そして、それをさせたら勝ち。なんて滑稽な勝負。


 だけど、私達はそのくだらない遊戯に魅了され、本気になっている。これで恋人などというのだから、笑ってしまう。


 恋心なんて、きっと抱いてない。少女のような純粋さなんて、いつの間にか失った。なのに、離れられない。きっと彼に依存してしまったんだ、私は。


(もう止めて、違う男にいっちゃおうかな。……優しい人のところに。)


 前に貴方は、こう言った。


『彼のほうが良くなった?』


 それは半分当たっていた。だけどね、今更この遊戯を降りる訳にはいかない。


「……ねぇ。」


 目もあわせず、話しかける。


「なんだい?」


 彼も、私を見ずに答えた。


「愛してる?」


 ──なんて愚かな


「誰が?」


「あんたが。」


 ──なんて哀れな


「誰を?」


「……私を。」


 ──それでも、止まらない


「当たり前だろう?」


 彼は即答する。戸惑いなく言うから、少しだけ面食らった。


「……ふーん。」


 それさえも、計算の内? 表情変えずに愛の言葉、って程でもないけど、簡単に言ってしまうのね。


 彼の肩に手を伸ばす。一瞬間を置いて、深呼吸。そして、優しく儚げに、後ろから彼を抱き締めた。


「……どうしたんだい、珍しい。」


 表情は見えないけど、声色からして、機嫌良さそうだ。

 ――嬉しいの?

 思いこみかもしれないけど。


「……私は、あんたに恋心を抱いた事はない。でも、今更離れられない。あんたの存在に依存してしまったから」


 一呼吸でそう言うと、彼は振り返り、私の目を見た。

 視線が、絡み合う。


「降参?」


 しばらくして、彼が問いかけた。


「馬鹿言わないで。私はあんたと賭事なんかした覚えないわ。」


 強く言いきると、彼はフッ、と妖しい笑みをこぼした。


「やっぱいいね、君。言っておくけど、僕は君に惚れてるよ?」


 彼の右手が、頬に触れ


「──よく言うわ。」


 左手が、首筋を這う。


「酷いな、本当のことなのに。」


 すれすれのところで言い捨て、私の返事を聞く前に唇を重ねた。


 今までの想いを味わう様に、深くて長いキスをした。こみあげる感情は、一体なに?


 ――あぁ、そうか。

 浸る為に、私は瞳をゆっくりと伏せる。

 私は彼を、『愛してる』のね







 雫がこぼれる。周りは暗闇。光を頼りに、蝶はヒラヒラと舞う。いつしか、それさえも罠と気付いても、蝶は飛び続ける。濡れた蜘蛛、艶やかに光り、蝶を誘う。掬えない雫、濡れた代償、手に入れるもの。


 輝く蜘蛛の巣、魅いられた蝶は、罠と知りながら自ら近寄る。嗚呼、堕ちてゆく──。

第3話終了です。次回、最終回となります。まだ執筆中ですが、幸せな結末になりますので、読んで頂けると嬉しいです。

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