原付「おーデッカイ馬車だなぁ、あれに乗ってでも外に行きたい・・・外に・・・うう」
「でかいなぁ・・・」
宿の前に止まっていたのはかなり大型の馬車だった。
たとえるなら2トントラック程度。
幌付きの木製馬車で二頭引き、幌の高さも中で俺が立っていられるほどデカイ。
これなら原付も乗せれそうだ。
前に回って馬の確認。
どちらもなかなか凛々しい顔立ちをしている・・・気がする。
左の馬がちょっと黒い茶色い毛並、右の馬はちょっと明るい茶色。
まぁどっちも茶色には違いないけど。
特に意味は無いが左をミケ、右をポチとなずけておこうかな。
三毛猫と柴犬繋がりで。
一通り見て周ったがただの馬車であるだけに、サスペンションとかは無さそうだ。
結構長旅になると思うけど振動は大丈夫かな。
ケツがかなり心配だ・・・。
まぁ慣れればなんとかなるか。
そんな風に馬車の観察を済ませるとトカゲが近づいてきた。
「シュル。主殿この大きさで良かったのか?かなり無駄になると思うのだが」
「これでいいよ、ちょっとデカイ荷物も載せるからね。それで幾ら掛かった」
「シュルルル・・・。武器と食料品も合わせて金貨89枚になった。我ら奴隷はあまり歓迎されないらしい。値札はあったのだが・・・」
なるほど。
奴隷だけで買い物に行くとぼったくられるのか。
ありえたことだろうに・・・失敗したな。
奴隷に関して千差万別。
サラや、ディスさん、エアロさんみたいに誰も彼もが奴隷に対して好意的、もしくは奴隷だからって差別しない人だけじゃないんだよね。
ノルト嬢のように奴隷嫌い、または、奴隷だからぼったくる人もいると。
これがこの世界なんだし、俺も奴隷でウハハなこと考えてるからなんともいえんが・・・俺の奴隷からぼったくるとは。
うん、とても腹が立つね。
いい度胸ジャン。
今度〆てやろうっと!
「値段に関してはいいさ。それで、品質とかは問題ないだろうな?」
「シュルル・・・」
何時もの唸りを上げるトカゲ・・・。
っておい、何か言えよ、そこで黙るな!
めちゃくちゃ不安になるだろうが!
そう思って俺が睨むと再度口を開くトカゲ。
「シュルル、それは」
「それは私がみたから大丈夫よ」
言葉を引き継いで馬車から降りてきたのはサラだった。
そうか、宿屋の娘が見てくれたら安心だな。
トカゲも安心したように息を吐いてる・・・ってこいつの様子から察するに場合によってはやばかったんじゃないのか?
「わざわざ腐った品を準備するほど商人たちは暇じゃないと思うわ。それよりも早く馬車代頂戴。いつまでもこんなところに置かれると邪魔なのよ」
それでも、痛みかけのとかあると思うんだが・・・。
今後気をつけよう。
「ありがとう、それで、駐車料金は幾ら?」
「このタイプの大型馬車に、馬二頭だから、一晩金貨1枚ね」
高いなぁ、人間の宿代よりかかってるよ。
俺はスカンピンなので、トカゲから残りの金を返してもらいそれで払う。
ああ、金ばかり出て行く・・・。
「でも、なんで今日借りたの?明日出かけるならその時にかりればよかったんじゃない?」
・・・え?
そういえばそうだよね。
なんで今日借りた?
「本当だ・・・何考えてたんだろ。」
サラの指摘に愕然とする・・・。無駄金。無駄金がすぎる。
俺ががっくりとしているとサラは少し苦笑いを浮かべていた。
「あはは、私は儲かるからいいけどね。それじゃ明日からはご飯いらないわね?」
「ああ、一週間くらい出てくるよ。部屋はそのままで頼む」
「宿代が残ってる間は大丈夫よ。でも残りの宿代が過ぎて数日帰ってこなかったら死んだものとして扱うからそのつもりでね」
あっさり死んだものって・・・そっか、ここだと死は身近なんだろうね。
「死にはしないよ。俺は生き汚いからね」
「生き汚いって初めて聞いたわ。それじゃご飯ね。すぐに準備するわ」
「うん、頼むよ。それと後で全員分お湯頼む。旅に出たらそう頻繁に体流せそうにないからね」
「わかったわ、食べ終わった後にでも持っていくわ」
そう言うとサラは忙しいのか、さっさと馬車を裏に連れて行ってくれた。
さて、あとは白猫なんだが・・・。
「大丈夫でしたかお嬢様!?何もされませんでしたか!?私はもう、心配で心配で・・・」
「大丈夫よ、ミィ。ほら、本も買ってもらえたのよ?」
「そうなのですか?・・・ですが、このように遅い時間まで・・・。あやつではなくても他のものに何かされたのじゃないかと思うと・・・」
「心配しすぎよ、ミィ・・・」
ふーん。
黒猫はさっきのことは無かったこするつもりか?
いや、大丈夫と言っただけだから、何も無かったとは言ってないか。
意識して言ったのかただ単に会話の流れだったのか、うむ、どうにも裏を読みすぎだな。
てか本も別に黒猫のために買ったわけじゃないんだが・・・。
いやいやそんなことより。
「へぇー・・・よっーーーーぽど白猫は俺のことが信用なら無いらしいな・・・」
背後から近づいてわざわざ低い声を出して囁いてみる。
ビクッ!っと尻尾が立つ白猫。
フフフ、おっかなさ満点ってとこかな。
お嬢様に集中していたようで俺が背後に来たことも気が付かなかったようだ。
まだまだだな・・・。
ぎりぎりと壊れかけの機械のように振り返る白猫。
「い、いや、主殿?そのだな?」
「かなしいなぁ・・・。俺って結構紳士的に振舞ってると思ってたんだけどねぇ」
「えっと・・・ちが、主殿のことも心配していたわけで・・・」
「じゃぁ、あやつってだれのことかねぇ?」
「えええっと、それはその・・・・・・」
にやにやと追い詰める俺。
うん、性格いいねぇほんと。
ま、これもお仕置きと思えばかるいものなわけで。
「ミィ、いけないわ。ちゃんと謝らないと」
「お嬢様?」
そんな中に口を挟む黒猫。
先ほどの有言実行なのかたしなめる内容に白猫が若干驚いたように首を傾げる。
「さっき言った通り、何も無かったわ、疑って掛かるのは良くないことよ」
「お、お嬢様?」
「ほら、ミィ?」
「は、はい、お嬢様・・・。主殿、申し訳ありません」
白猫は戸惑った様子ながら、俺にすんなりと向かって頭を下げる。
自分に非のあることだから、謝るのに躊躇いはないんだろうけど・・・。
この戸惑った様子、どう見ても黒猫と俺の間に何かあったのを勘ぐってるんだろうね。
事実あったわけだけど、隠す気があるのかないのか・・・、黒猫のことも良くわからんし。
まぁいいか、面倒だ。
「うん。それで、武器は・・・買えたようだな」
思いっきり話題転換。
さっきから眼に入っていた白猫の両手両足に視線を向ける。
「さすがに王都だけに品揃えはよかった。かなりの良品だ」
黒猫に対して何か言いたげだった白猫だが、俺の話に乗って拳を構える。
白猫が装着しているのは白い鋼の篭手、所謂ガントレットと同色同素材のブーツ一体型のすねあてだ。
ガントレットは肘程まであり、かなり無骨な作りで無駄な装飾とかは無くごつごつとしているが、動かしている様子をみると邪魔にはならないようだ。
結構重さもありそうだけど白猫からしたらたいしたことはないらしい。
フルプレート鎧の胸と腰部分を剥いだような姿だが、慣れているというのか中々にカッコイイ。
「その装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
しっかりと頷いて軽くシャドーボクシングのよう腕を振るって見せてくれるが・・・。
なんだろう、さっきの会話が死亡フラグに聞こえた。
そ、そんなことないよね。
うん、大丈夫だって言ってるし、ここは武芸者を信じよう。
「魔物と戦う時は白猫かく乱、トカゲが一撃を決めるってところか」
この前のケンカやクソ貴族に絡まれた時を思えばどちらでもいけそうだけど、魔物相手どんな戦いになるか。
ゲームだと前衛、白猫、中衛、トカゲ、後衛、俺ってところかな?。
うーん、トカゲが中衛は無いな。確実近接だし。
ツートップ作戦といったところか。
「マニ殿と話し合ったが、そうなるはずだ。どのような魔物がきたところで問題ない」
「シュルル。弱い魔物なら我らが必ず打ち倒す。強敵であろうと主殿を守り術を完成させる時間は必ず稼いでみせる」
ほう、中々にカッコイイじゃないか。
頼もしいねぇ。
なるべく俺が楽できるようがんばってもらいましょうか。
「任せたよ。それじゃぁ飯にしようか。そのあとは体を流して明日の準備だ」
「「はい」」「シュルル」
三匹が頷いたのを確認して俺はテーブルへと向かった。
さて、今日の飯はなんだろうなぁ。
短い・・・。
本当にすみません。
さて連絡が幾つか。
一つ目、これにて第二章終了・・・。
はい、章の分割変更することにします。
ここまでを第二章原付「俺様の退屈で暇な一日」
そしてこれからを第三章原付「我が世の春が来たぁぁぁ!!」とします。
どう考えても街中パートが長すぎで、タイトル詐欺です。
単純に買い物で奴隷ゲット!メイド服ゲット!さぁ冒険だ!
とするはずだったのに、どうしてこうなった?
二つ目、前話について。
感想ととある相談の結果、修正すべきと判断しました。
どう変えるかここ数日悩みましたが・・・
修正はしばらくお待ち頂けたら幸いです。
三つ目、いつも感想ありがとうございます。
誤字脱字報告、本当にありがとうございます。
どしどしとお待ちしていますが、返信はしばらくお待ち頂けたら幸いです。