原付「野良猫か?にゃぁにゃぁとうるせー!!ケンカならよそでやれーー!!」
あらためて注意。
この作品には以下略。
※追記
感想ととある相談の結果修正することにしました。
ただどのように修正すべきか悩んでいる最中なので現状はそのままの掲載を継続します。
ほとんど駆け足と変わらないくらいの速さでギルド本部出る。
どこでもいい。
目に付いた路地に入り左へ。
通りを抜けてさらに左へ曲がる。
どこでもいい。
奴隷ごとき・・・。
さらに路地を右。
軽々しく発言・・・。
さらにさらに細い道を右。
戯れが・・・。
立ち止まって上を向いてさらに上を向いて、下をみて下をみて、左を確認右を確認、左、右。
品位・・・ねぇ・・・。
夕刻前の時間。
まだ明るいと言っていいはずなのに少し暗く狭い路地。
ここには誰もいない。
「はぁ、はぁ、ご、ご主人様?」
振り返る。
そう長い距離ではなかったが、急に動いたせいで息が上がり頬がほんのりと染まった黒猫そこにはいた。
真正面から眺める。
一対の黒い三角猫耳、長く艶のある黒髪。
雲よりも白い肌に黒曜石を削りだしたかのように丸い瞳、柔らかで真紅の唇。
整った造型は人形のように、それを飾るは無骨で曇った首輪とシーツのように曇りない真っ白のワンピース。
細い、折れるんじゃないかと思うほど繊細な腕。
抱えられた図鑑。
「ご主人さ・・ま?」
俺の無遠慮な視線に戸惑いの声を上げる。
「何?」
「ど、どうしたんですか」
どうした・・・か。
「黒猫は可愛いよね」
「・・・え・・・ええ!?い、いきなり、どうし・・・!?」
言葉をさえぎるように、わかっている質問に答えず、黒猫の左斜め前に四歩。
黒猫の横へ、ステップ踏むかのように半回転。
壁を背に、そして自然体で見下ろす。
「どうし、え・・・?」
黒猫が一歩下がる。
それにあわせて一歩。
さらに下がる黒猫。
あわせて数歩。
狭い路地だ。
すぐに黒猫の背が壁にトンっと当る。
それに気が付いた黒猫の表情が変わる。
戸惑いから怯えへ。
図鑑が握られた手が白く、俺の目にも明らかに震え始める。
「何を・・・」
「君は俺の奴隷・・・だよね」
右手を伸ばして撫でるように首輪に触れる。
冷たい感触を感じながら首の後ろまで手を回し掴む。
「!?」
今更ながら逃げようとする黒猫、その動きとは逆の方向に掴んだ首輪を引っ張り持ち上げる。
「あっ!」
さっきのでわかったけど力じゃこの子にもかなわないんだろうね。
でも、こうやってうまく引っ張ると動けない。
ま、カード使ってもいいんだけど・・・今はこうやって!
力を込めて首輪を引っ張り壁に押し当てる。
「きゃぁ!」
短い悲鳴を上げる黒猫、首も絞まって息苦しかったのだろう、
少し咳き込み顔を上げとその眼には涙が浮かんでいた。
「君は俺の奴隷。俺の所有物。どう扱ったっていいんじゃないかな?」
涙目になりながらも眼がわずかに開く。
俺が何を言いたいのか察したらしい。
「・・・さっきの、あ、あの人の話ですか?」
「そう。そうさ・・・」
今度は左手を伸ばす、触れる先は頬。
両手を伸ばした状態とはいえ、抱きしめているかのように近い頬に手のひらをぴったりと当てる。
「んっ・・!」
柔らかい・・・赤く色づいた柔らかな肌、暖かくてそれでいて流れた涙で濡れた頬を撫でる。
「可愛い子に可愛い服を着せる。俺がそうしたいからさ。気安く話しかけさせる。俺がそうしたいからさ。一緒の飯を食べる。そうしたいから。したいから」
右手を首輪から離してそのまま上に、指の一本一本に柔らかな髪を絡めながら頭を撫でて感触を楽しむ。
「っ!・・・あっ・・・」
「他人にどう思われようと関係ないさ。いや、そもそも他人ごときどうでもいい。関係ない。何を言われても関係が無いんだ。俺と俺の物・・・それ以外と・・・」
頬を撫でていた手を下ろし、黒猫が持っている本を引っ張り地面に放る。
簡単に離れた本はドサリと音を立てる。
これで邪魔者が無くなった。
「この世界に来た時にそうすると決めた。こうやって好きなことをすると。ただそれだけのために俺はここにいる。今までの・・・。だから・・・」
「せ・・・かい?」
両方の手を背に回す。
そのまま抱き寄せる。
「あ・・・」
僅かな震えが止まる。
頬に髪が当る。
甘い匂い。
暖かい。
温かい。
あたたかい。
柔らかく。
小さい。
全身にただただ感じる・・・。
「ご・・・主人・・・さま?」
耳に聞こえるのは吐息のような、囁きのような声。
彼女の腕がピクリと動く。
「動くな」
抱きしめたままとまる。
そのまま、ずっと。
ずっと・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
って!!!
おおおおおおおおおおおおおおお
れええええええええええええええ
わああああああああああああああ
なああああああああああああああ
にいいいいいいいいいいいいいい
おおおおおおおおおおおおおおお
しいいいいいいいいいいいいいい
てええええええええええええええ
るうううううううううううううう
のおおおおおおおおおおおおおお
かあああああああああああ!!!
何動揺しちゃってんの!?
何抱きしめちゃってんの!?
何語っちゃってんの!?
これのあれのそれの!
これは何!?
なにやっての!!
ねぇ俺!!何やっての!?!?
馬鹿なの死ぬの?いっそ死ぬ!!
恥ずか死ぬ!!
死因は恥死だ!致死量の恥死だ!!
てかどうするよこの状態!?
絶対今顔真赤だって!
若さゆえの過ちだって!
通常の三倍暴走だって!!
「ご・・・ご主人様?」
「ひゃい!?」
ビックリした!変な声出た!!
思わず体を離して後ずさり、そのままドン!と壁に背中をぶつける。
「だ、大丈夫ですか?」
心配そうに黒猫が顔を・・・顔を・・・。
「大丈夫!全然大丈夫!!元気ハツラツーーーV!!」
見れない!
「大丈夫じゃなさ「大丈夫だって、さぁ帰ろうすぐ帰ろう!!蛙が泣かなくても帰ろう!!」
会話するのも無理!!
今はすぐにでも落ち着かないとマジで色々とヤバイ!!
「ま、待って下さい!」
「本!忘れんなよ!!歯!磨けよ!!」
「あ、本!って歯を磨けってなんですか!?」
「しるか!!」
そそくさと黒猫を置いて歩き出す。
道なんか知らない。
とりあえず歩き出す。
でも、もう、ほんと恥かしい。
何やってんだろ。
気が付いたら陽が沈むまで抱き合ってたけど・・・そう!抱き合ってたよ!!
ワケワカラン!!
何恥かしげも無くあんなことやってんのさ!!
抱きしめてんのさ!
そりゃさ、色々言われることもあるんだろうなぁ~とか思ってたけどさ。
最初からわかってたじゃん。
ああもハッキリ言われて傷つく・・・。なんで傷つく?
なにが?
いやそれほどダメージがあったわけじゃないけどさ・・・。
いや、傷ついたからああなったわけで!
でもごときは無いんじゃない?
俺の!そう俺の奴隷をごときって!!
あんなに可愛いんだよ?
猫耳だよ?
黒だよ?
柔らかいんだよ・・・?
暖かいんだよ・・・。
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
思い出しただけでも恥ずかしい!!
ちくしょう!!
それより何よりもなんで黒猫は平然としてんのさ!!!!
いきなり抱きつかれたんだよ!?
眼に涙浮かべてたじゃん!!
なのに平然と大丈夫とか聞いてくるのさ!!
そりゃいきなり離れて叫び出したら大丈夫って聞くもんだけど!!
もう!!!!!!!!!!
俺は何がしたいんだ!!
そうエロがしたいんだ!!
いつかあれよりもっと先の・・・。
・・・。
うきゃあああああああああああああああ!!!
出来るの!?
今でもこんなのなのに出来るの!?
無!理!
無理無理無理無理無理!!!
これが今の精一杯!悪い魔術師にできるのはこれが精一杯だって。
あれだって精神状態が異常値を示したからで。
なんか語っちゃうほどおかしかったんだって!!
忘れろ!!
黒歴史を忘却しろ!!
記憶の彼方に封印!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふぅ。
OK、まだ慌てるような時間じゃない。
そうそう、あれが普通。
ノーマル。
抱きついて何が悪い。
ノーマルノーマル。
俺主、彼女奴隷!!
俺主、彼女奴隷!!
よし。たいぶ落ち着いた・・・。
「ご主人様、待って下さい!」
やっと耳に黒猫の声が届く。
全力歩きだったのをゆっくりと普段の歩調に戻す。
「おっと悪いね」
「はぁはぁ・・・早いですよ・・・はぁはぁ」
若干髪が乱れた黒猫はちゃんと本を抱えていた。
「忘れずに持ってきたなエライエライ」
「言われましたから、それで・・・その・・・さっきの」
蒸し返すな!
せっかく落ち着いたんだから!!
とか思ったけど彼女からしたら当然か。
普段の調子を思い出すように少しゆっくりめに言葉を話す。
「気にするな・・・ってのは無理か。言ったとおりだよ。俺の奴隷なんだから俺が好きにやる。ああやっていきなり、だ、抱きついたりとかもね」
抱きつくと言ったところで俺の顔が熱くなるのがわかるが・・・暗い道ながらチラリと見た彼女の顔も少し赤くなっていたのがわかった。
別に何も思っていたわけじゃないのか・・・。
「・・・さっきは、その、突然だったのでびっくりしました」
「だろうね」
「でも・・・かまいません。あれくらい。・・・私はご主人様に感謝していますから」
・・・感・・・謝?
感謝だと?
耳を疑う。
こんな場所で、いや、どこであろうと奴隷の彼女から聞くはずの無い単語が耳を過ぎる。
彼女に視線を向けると、垂れた猫耳があった。
「ほんの少し外を見たかっただけなんです。ほんの少しだけで・・・。でも、そのわがままのせいで・・・捕まって・・・。それから酷いあつかいを・・・うけました。とっても、酷かったです。ミィがいなければ私は、きっと耐えられませんでした。知っていたのに。お父様からも言われて、本でも奴隷というものがどうなるか書いてあったのに・・・。あの人が言ったことは、当然だと思います。それが普通だと思います」
ゆっくりと歩く中、月明かりが影を跨いでは彼女を照らす。
「でも、ご主人様は違いました。ミィと一緒にいさせてくれます。普通のご飯をくれます。普通の服をくれます。怒ることもあります・・・でも何も無いのに酷いことはしませんでした。だから、あれくらいなんでもありません」
この街に来てから奴隷のあつかいが酷いのは見てきた。
彼女が受けた扱いというのも想像はつく。
でも・・・。
「はははは、笑えるな。買いかぶりすぎだっての。会ってまだ二日だぜ?それで感謝だ?笑わせるな。あれぐらいなんでもない?馬鹿じゃないのか?明日にはもっと酷いことをするかもしれない。いや、当然する。俺は男だからな。そのために買ったんだ。飯を上げるのだって痩せてちゃつまらないからだ。服だってそうだ。勘違いしてんじゃねぇよ」
思ったままに言葉が出た。
そうだ、これがすべて。
なに動揺なんかしてんだ。
なにが無理だ。
この世界での奴隷の扱いとちょっと違ったところで俺の考えてることはそれだけだ。
奴隷でハーレム。
それだけだ。
でも彼女は。俺を見上げて微笑むと・・・抱きついてきた。
「!?」
「構いません。売られた時から覚悟はしていました。そうなるとわかっていましたから。でも、きっとご主人様は酷いことはしません。あの人たちのような酷いことも言いません、しません。まだ二日ですけどわかります!」
今度は俺が壁に押しつけらる。
彼女の顔が驚くほどに近くに。
必死な。顔が。
「だから、お願いがあります。私は幾らでも・・・抱いていただいて構いません。誠心誠意お使えします。でもミィは、ミィには手を出さないで下さい。ミィは私のせいで奴隷になってしまったんです。だからおねがいです・・・」
一瞬で・・・心の沸騰が収まる・・・彼女の言葉で一気に冷える。
結局はそうなんだろうな・・・。
自分を犠牲にして、白猫を助ける。
自己犠牲。
それが・・・。
---て------やーーーーー
思い出すな
た--------------
思い出すな!
いいよ------だから
思い出すな!!
ーりがとーーーーーーーー
思い出すな!!!
ばかじゃーーー、またーーーーーー
思い出すな!!!!
ばかじゃないの彼ーーーーーー
ああ、だからか。
それが・・・わかってしまうから。
それが・・・腹正しく感じる。
でも、まぁ、都合がいいのも事実か。
いちいち反抗的な奴隷よりはね。
「さてね。どうしようかな・・・」
笑顔を貼り付けた俺はわざとらしく躊躇う。
俺の言葉に抱きついた腕の力が強まる。
ちょっと、いやかなり痛い・・・でも我慢。
頭を冷やす冷却材には丁度いい。
おかげで落ち着いて胸の感触を楽しむことができるしねぇ。
「お願いします。お願いします。お願いします・・・」
呪文のように繰り返す声にほんのりと涙が混ざりだす。
ちくりと罪悪感が芽生える・・・とかありえないし。
ふぅ、でも、ま、しかたないか。
なにより俺様よいご主人様だしね。
「これからの君の態度次第だね。そうしたら考えてあげる」
「は、はい!ありがとうございます!!ありがとうございます!!」
ま、まぁ嬉しそうでなによりだけど・・・考えるだけなんだけどなぁ。
フフフフグゥ!
俺の返答に抱きしめる力がさらにしまってつ、つぶれる!
「は、はなして!苦しい!!」
「きゃぁ!すいません!!」
し、死ぬかと思った・・・。
ゴホゴホと咳き込む俺をオロオロと見つめる黒猫。
まぁ、そんなのも可愛いんだけどね。
息が整ったところで背筋を伸ばして歩き出す。
「ふぅ、それじゃ帰るか」
「はい、ご主人様!」
またしても見る彼女の笑顔。
・・・やっぱり心臓が痛くなった。
半歩進んで二歩下がる。
いえ、この二歩はきっと別方向に向いてしまいました。
そんな主人公の複雑な心模様。
次回3月20日。
街中パート終了予定。