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異世界の生活は原付と共に  作者: 夢見月
第一章 原付「俺様の戦いはこれからだぁ!!」
3/32

原付「あ、蝶だ。久しぶりに見た」

大変酷い表現がありますのでことさら注意してください。

追加注意。

R15以内に抑えたつもりですが、主人公の性格の一端を知っていただくため極度の性的暴力表現があります。大変不快な気持ち、感想をもつ場合があるため、そういったことが受け付けない方は四話『原付「初めて家の中に入りました」』前書きに簡単なあらすじをのせますので、この話を飛ばすことを推奨します。

原付に跨ったまま一息つくほど三十分。



休憩と言うには長い時間を終えて村へと入った。

中は死屍累々の地獄絵図。

家の三分の一は焼け落ちてさらに三分の一は半壊。

道には人間だったもの、人間の一部、良く観察すれば人間だったのだろうと分かるものが多数転がり、道を赤く斑に染めていた。

あたり一面に焼け焦げた匂いと腐臭、汚臭、例える事が出来ない匂いが立ち込めていた。

っても俺自身の感想としては何も浮かぶものなし。


「人の死体見たのって死んだばあちゃんの葬式以来だけど・・・」


こうなってると『物』以外のなにものでもないんだよね。

多少グロくはあるけど、ネットの世界をフラフラ彷徨っているとグロ映像に耐性が着いちゃうし、パニック映画の特殊メイクの方が数倍怖い。

さすがハリウッドだね。なんともないぜ。

感情にしても知らない人のことで悲しいとは思わない。

せいぜいがご愁傷様くらいかな。

必要があればハンカチを目頭に当てて泣きマネでもすることにする。

そして今必要なことは家捜しして情報集め。

幸いに村長の家らしきものと教会っぽいものは原型を留めている。

きっといいものが手に入るはず。

さっそく教会に向かった。っと、厄介事が残ってた。

面倒なのは生きている人間。これに尽きることは間違いない。

教会の前に転がされてるのが6人。いずれも女性。

服は服としての体勢をなしてはおらずかろうじて腕や足に巻きついている程度。

つまり全員が半裸以上の状態。

デコレーションとしてゴブリンの精液だろう薄い緑の液体で彩られている。

いつの間にやらここに生き残りの犯された女性達が集められていたらしい。

さて、困った。こうなると見て見ぬ振りができない。

事なかれ主義の俺としては放置してしまいたいけど、

泥棒働いたあとに、この人たちに通報?されたらそっちの方が面倒だ。

この世界の警吏がどうなってるか分からんがいきなり敵に回すわけにはいかない。

というわけで近づいて声をかけようとした。


が、様子がおかしかった。


「あは、ははは・・・」


「もっと~・・・お願い・・・もっと・・・・」


「わたし~わたし~・・・」


こんな感じ。

頬が赤く染まり。うわごとのように淫乱な言葉を使って誘っている。

というか、壊れてる。

ただ犯されたにしては様子がおかしい。

悲嘆にくれるか、心を閉ざすか、男性に反発するか、気丈な人なら警察駆け込む、が犯された女性の反応だと考えるけど(よほど特殊な一部ならこんな反応もあるんだろうけど)

明らかにおかしい。

さて、どうしたものか、水でもぶっ掛けたら正気にもどるかな?とか考えていると。

そのうちの一人、40手前くらいの恰幅のいいおばさんが顔をこちらに向けて理性が残った眼で話しかけてきた。


「旅人・・・かい、うう、お願い。・・・殺して」いきなりだな。


一応心配な様子を繕って女性の横に跪いて話しかけた。


「大丈夫ですか、何がありました?」

「ゴブリンに・・・襲われて・・・私、私達も襲われて・・・」


おばさんは言葉を出そうとするが、汚された体は朱にそまり腕はふらふらと彷徨っている。


「ゴブリンに・・・ゴブリンの、液には・・・狂わせる・・・心がおかしくなる力が・・・」


なるほどね、媚薬効果ありな訳だ。


「薬は無いのですか?」

「駄目・・・。一度犯されると、もう駄目。十日もしないで、ゴブリンの・・・生まれる。薬はとても高価で、でも、もう意味が無い。はぁ、ああ~・・・」


悩ましげな声を出しながら、媚薬の力に抗おうとしているが、

手は振るえ、眼から理性が消えようとしていた。


「諦めないでください。なんとか薬を手に入れますから、それまで待っていてください」


心にも無いことを言っておく。

貴重な情報に口元に笑みが浮かびそうになった。

ゴブリンに犯されると十日で出産か。早いねぇ。

これもファンタジーの力のわけだ。そして心が壊れてまともでいられない。

これなら放っておいても俺が何しても誰かに話される心配なし。

安心して立ち上がろうとすると、おばさんに腕を掴まれた。


「お願い。今はまだ私で、いられる。お願い。殺して。私は・・・あぅ・・あん。あんな死に方したくない。リリィみたいに・・・リリィみたいに、腹を割かれて化物を。化物を生むなんて」


精液に汚れた手が気持ち悪い。

反射的に振り払おうとしたが、必死に眼を向けて腕に力を込めてくる女性に、少し動揺した。


「腹を裂いて、化物が出てくる・・・。あんなのは嫌だ・・・。

     頼むよ。一思いに殺して。人として死なせておくれ!」


必死に頼まれてしまった。


困った。


激しく困った。


さすがにこれは困った。


放置してもここにいる人達は確実に死ぬらしい。

母体をまったく考慮せずにゴブリンの子供は腹を引き裂いて出てくるようだ、

しかし正直な所そうなろうが俺には関係がない。

知ったことではでない。

俺を巻き込むなと言いたい。

だが、さすがに・・・さすがに良心がとがめる。

この女性達をほって異世界を楽しむのは流石に・・・。


本当に嫌なことを頼まれた・・・。


頼まれた・・・?


頼まれたか。


そうか、そうだな。


頼まれたんならこれは仕事だ。


お仕事を頼まれたんだ。


そうしよう。


となればこの人から報酬を貰わないと。


「わかりました。あなたを殺します。ですがその為にも三つ教えてください」


女性の手が少し緩み、安心した顔が浮かぶ


「なんだい?」

「私が奪うことになる強い心をお持ちのこの村の母たるあなたの名前、

 そしてあなたと同じ用に命を奪うことになるこの女性達の名前。

 最後にゴブリンに負けなかったこの村の名前。教えてください」


俺がそう言うと嬉しそうに笑った。


「そんな、大層なもんじゃないよ。はは、私は。ああぅ・・・。

 私はユメイさ。ユメイ=ノウマル・・・酒造りが自慢のユメイさ」


ユメイが名前ね。ちゃんと姓もあると。ふむふむ。

ユメイさんは顔を横に向けると他の女性達を確認していった。

「ああ・・元気なシンシア、お転婆なメルトも・・・。いけ好かなかったザイエンも一緒かい。テトルにっあんっ・・・、く、・・・ケイト、まだ結婚したばっかりだってのに・・・」


少し悲しそうに眼を瞑ったがすぐに笑みを戻した。


「麦とビールが自慢のこの村は・・・トトさ。王様だって・・・唸るビールを造るトト村さ・・・」


言い終わって空を仰いだ。頬の赤みが増し。腕が完全に落ちた。


「ありがとうございます。それでは安らかにお眠りください」


俺はそう言って呪文を唱え始めた。


「ありがとうよ・・・」


呟くようにユメイさんが言うと同時に呪文が完成。



「スリーピング・・・」



囁いた言葉と共に甘い香りを放ち周囲を包んだ。

さっきまでうわごとを言い続けていた他の女性たちもメルトさんも穏やかな寝息を立て始めた。


「これなら苦しまず綺麗に殺せるかな?」


次の呪文を唱えながら少し離れて発動。


「フリーズ・ブリット」


ユメイさんから少しずらした手から氷弾が発射され、地面に命中。

氷結していく地面に巻き込まれて六人の女性も一瞬で横たわる氷像と化した。

全員が穏やかな表情のままでいることを確認して俺は氷の端に近づき指先で弾いた。

涼やかな音が静かな村に響いて全てが砕ける。




「ふうぅ。少し、重たいかな・・・」



名前を聞くんじゃなかった。

ほんの少し後悔。

でも知らないといけなかった。

軽く眼を瞑って商売相手に黙祷を捧げる。


「情報に感謝を」


俺にしては長い四秒の黙祷のあと家宅捜索を開始した。

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